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監修記事

「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」「諭旨解雇」の違い

「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」「諭旨解雇」の違い

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

4種類の解雇の違い(普通解雇・懲戒解雇・整理解雇・諭旨解雇)

解雇とは、会社が労働者に対し、一方的に雇用契約を解消することを意味します。「明日から来なくて良い」「君はもうクビだ」といった社長の発言は、正に「解雇」の意思表示です。

一言で解雇と言っても、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇・諭旨解雇の4種類の解雇があります。そして、これらの解雇は、それぞれ持つ意味や、有効となるための要件に違いがあります。
そのため、解雇を検討している会社側としては、「今行おうとしている解雇がどのような解雇なのか」を事前に把握する必要がありますし、解雇を言い渡された労働者側としても、「自分がどのような理由で、どのような解雇をされたのか」を把握する必要があります。

ここでは、4つの解雇の特徴についてご紹介していきます。

普通解雇とは

普通解雇

普通解雇とは、労働者の勤務態度不良や、協調性の欠如、業務の遂行能力が不足していることなど、労働者の落ち度を理由とする解雇です。
「遅刻・無断欠勤が多い」「営業成績が悪い」「他の労働者とのトラブルが多い」といった理由が挙げられることが多い印象です。

では、このような事情があれば簡単に解雇ができるかというと、そうではありません。
たとえ労働者側に落ち度があるとしても、冒頭に記載した通り、解雇は、会社が「一方的に雇用契約を解消する」ものですので、無制限にこれを認めては、労働者が安心して会社で働くことができません。
そのため、法律上、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められており(労働契約法16条)、会社が行った解雇が有効とされるためのハードルは、中々高いのが実情です。

例えば、遅刻・無断欠勤や、営業成績が悪いといった事情があったとしても、会社としてはそれを改善させるために、根気よく注意・指導をしなければなりません。また、勤務態度がとても悪い従業員であっても、裁判になったときに証拠がない、という事態もよくありますので、会社側としては、解雇を行う前に、慎重な検討が必要になります。

なお、普通解雇を行う場合、30日前までに解雇の予告を行うか、予告が不足している日数分の給与相当額(解雇予告手当と呼ばれます)を支払う必要があります。例えば、一切予告をせずに当日解雇を言い渡した場合には、30日分の給与相当額を支払う必要があります。他方、10日前に解雇を言い渡された場合には、30日-10日=20日分の給与相当額を支払う必要があります。
なお、普通解雇とは違い、この後説明する懲戒解雇では、一定の要件を満たせば、この解雇予告を省略することができます。

整理解雇とは

整理解雇

整理解雇とは、会社側の経営上の都合を理由に行う解雇です。
「会社の経営が悪化し、やむを得ず労働者をクビにした」というようなケースは、整理解雇に当たります。「リストラ」と呼ばれることも多くあります。

先にみた普通解雇とは異なり、整理解雇は、会社側の経営上の都合を理由に行うものであり、基本的には労働者に落ち度はありません。そのため、裁判上は、普通解雇の有効性よりも、かなり厳しく判断される傾向にあります。この点が普通解雇との違いです。

例えば、裁判上は、①本当に人員削減を行わなければならない経営状況なのか、②解雇を回避するために、様々な努力は尽くしたのか(役員報酬の減額や、給与の減額、新規採用の中止、希望退職者の募集、配置転換の検討等)、③整理解雇の人選(対象となる人)は合理的か、④事前に労働者への説明は尽くされていたか、といった諸要素が考慮され、厳しく有効性が判断されることとなります。
そのため、会社の経営はそれほど傾いていないものの、整理解雇という体で、問題従業員を解雇することはできませんし、かなり経営が厳しい状況であっても、種々のコストカットの方法を検討しない状況で整理解雇を行うと、裁判上、無効とされてしまう可能性が高いのが実情です。

懲戒解雇とは

懲戒解雇

懲戒解雇とは、労働者が起こした不祥事等を理由に、ペナルティ―として会社が行う解雇です。「解雇」と聞くと、この懲戒解雇をイメージされる方も多いと思います。
例えば、「労働者が会社のお金を横領した」「社内・社外で暴力事件を起こした」「ハラスメントの問題を起こした」といった理由が挙げられることが多い印象です。
懲戒解雇の場合、多くの会社において、退職金を(全部又は一部)支給しないと定めており、また、転職活動上も大きな支障となるため、労働者にとっても非常に不利益の大きい解雇といえます。

懲戒解雇は、労働者の不祥事等を理由に行う解雇ではありますが、減給処分や出勤停止処分といった懲戒処分の中でも、最も重い処分です。そのため、簡単に懲戒解雇ができるかというとそうではなく、一定の要件を満たす必要があります。
例えば、①そもそも懲戒処分(懲戒解雇に限られません)を行うためには、就業規則を定めている必要がありますし、②懲戒解雇という処分が、労働者の行った行為の大きさに見合うものであること(相当性)が必要とされます。③更に、処分を課す前に、労働者の言い分を聞く機会を設ける必要もあります(弁明の機会と呼ばれます)。

なお、普通解雇で述べた解雇予告についてですが、懲戒解雇の場合、一定の手続(労働基準監督署で認定をしてもらう必要があります)を行えば、解雇予告を行う必要はありません。この点が普通解雇との違いです。

また、普通解雇の理由と、懲戒解雇の理由は、被ることがあります。例えば、「遅刻・無断欠勤が多い」という理由は、普通解雇の理由になり得ますし、就業規則の定めがあれば、懲戒解雇の理由にもなり得ます(どちらの解雇を行うかは、会社が選ぶこととなります)。

諭旨解雇とは

諭旨解雇

最後に、あまり馴染みのない言葉かと思いますが、諭旨解雇について説明します。
凄く簡単に説明すると、「懲戒解雇よりやや軽い解雇」です。労働者の行った行為自体は重く、本来であれば懲戒解雇を選択するところ、労働者本人の反省態度が見られたため、やや処分を軽くする、という場面で使われることがあります。

実際には、諭旨「解雇」ではなく、諭旨「退職」という処分が広く用いられています。これは、本当は懲戒解雇だけれど、労働者自ら退職届を提出するなら、会社としてはそれを受け入れる(退職届を出さなければ懲戒解雇する)というもので、懲戒処分の一種です。
退職届を提出し、会社がこれを受け入れてくれれば、労働者の「自己都合」による退職として扱われることとなるため、懲戒解雇とは異なり、転職活動上の支障はあまり大きくありません。会社からの「諭旨」とはいえ、労働者が自ら退職届を提出するものであることや、退職理由に違いがあることが、懲戒解雇との違いです。

諭旨解雇・諭旨退職も懲戒処分の一種であるため、懲戒解雇で見た①~③の要件を満たす必要があります。