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士業とは?全14種類の士業
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世の中にはさまざまな職業がある中で、「士業」と呼ばれる専門的な資格職業があることはよく知られています。例えば「弁護士」や「税理士」といったものが代表的ですが、そのほかにもさまざまな種類の「士業」が存在します。そうしたものの中には、実際のところあまり耳なじみのないものや、詳しい仕事内容が浮かばないようなものもあります。
ここでは比較的よく知られた職業から、それほど知られていない職業まで、主な「士業」について詳しく解説していきたいと思います。
士業の意味とは
「士業」とは、最後に「士」の字を有することが多い、高度な専門性を持つ資格職業の俗称です。簡単に言えば、「~士」と名の付く職業を意味する言葉になります。語尾に「士」がつくことから、「士業」という呼称が定着しました。読み方は「しぎょう」ですが、「さむらいぎょう」と呼ばれることもあります。これは、「士」に「さむらい」の意味があるためです。
「士業」の具体例としては、「弁護士」「公認会計士」「行政書士」「弁理士」などがあります。また、「医師」のように「師」の字が付く職業も含めて、「士師業」「師士業」と呼ばれることもあります。これらの職業に「士」の字が付く由来としては、日本が近代国家として草創期にあった時に、主として武士層がその職能資格を取得したためと言われています。
「士業」と呼ばれる職業の大半は、資格を持っていないと開業できず、都道府県もしくは監督官庁に登録する必要もあります。また、多くの場合で実務経験を証明する事業者の書面か、もしくは実務経験が必須の上位資格が必要となっています。
「士業」の資格には、「国家資格」と「民間資格」がありますが、そのうち「国家資格」に関しては、資格の認定が法的に担保されると同時に、独占性についても多くが法的に担保されます。一方「民間資格」については、独占性についての法令上の担保はなく、「一定の専門性」を持つことが認められるのみとなっています。
士業一覧
「士業」と呼ばれる職業はさまざまですが、特に多い分野としては、司法、会計、不動産、建築、土木、医療、福祉といったものがあります。例えば司法であれば「弁護士」や「司法書士」、会計であれば、「公認会計士」といった具合です。こうした「士業」のうち、住民票などの請求権が認められている主なものについては、「8士業」と呼んで区別されます。以下ではその「8士業」と、それ以外の「士業」について具体例を挙げ、解説していきましょう。
8士業
弁護士
最初にご紹介する「8士業」は、「弁護士」です。「弁護士」は、「弁護士法」によって規定される国家資格を有するものになります。
「弁護士」の職務は、訴訟手続きなど法律事務全般になります。当事者などの依頼、あるいは官公庁の委嘱によって、訴訟事件等に関して業務独占的に法律事務を行うようになっています。「弁護士」になるには、原則として司法試験に合格し、その後司法研修所で修習を受けてから、「日本弁護士連合会」の弁護士名簿に登録される必要があります。
「弁護士」の多くは法律事務所に所属していますが、その規模はさまざまで、数百人に及ぶところから1人のところまであります。また法律事務所に限らず、会社員として働く場合や、国や地方公共団体、国際機関といった場所で働く場合もあります。
弁理士
続いてご紹介する「士業」は、「弁理士」です。「弁理士」は、「弁理士法」に規定される資格を有するものです。
「弁理士」の職務は、特許等に関する手続き代理が主なものになります。特許、実用新案、意匠、商標または国際出願に関し、特許庁などの機関へ行うべき事項、また異議申し立てや裁定などの手続きについて、代理や鑑定などの事務を行うのが仕事です。例えば自身の発明について特許を取りたいという場合、「弁理士」に相談することで、特許庁への手続きややりとりを代行してもらうことができます。
「弁理士」になるためには、弁理士試験に合格し、なおかつ欠格条項に該当しないことが必要になります。こうした有資格者が弁理士会に申請したのち、登録を受けてその会員となることで、業務を行えるようになります。
司法書士
3つ目にご紹介する「士業」は、「司法書士」です。「司法書士」は、「司法書士法」で規定される有資格者になります。
「司法書士」の職務は、登記または供託手続きの代理や、裁判所・検察庁・法務局へ提出する書類作成などです。また、簡易裁判所における140万円以下の訴訟代理も行えるようになっています。
「司法書士」になるには、次のいずれかの条件を満たす必要があります。すなわち、「法務大臣の行う司法書士試験に合格すること」あるいは「10年以上裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官、検察事務官の職にあったか、もしくはこれらのものと同等の法律知識があり、法務大臣によって司法書士の業務を行う知識や能力があると認められること」のどちらかです。
行政書士
続いてご紹介する「8士業」の1つは、「行政書士」です。「行政書士」は、行政書士法が規定する国家資格になります。
「行政書士」の職務は、官公署に提出する書類の作成、また権利事務や事実証明に関する書類の作成などです。行政手続きを専門とする法律家であり、独占する業務に加え、他の資格で独占されていないものについても手掛けることができます。そのため、業務範囲が非常に幅広いのが特徴です。
「行政書士」になるには、都道府県知事が行う試験に合格するか、あるいは「弁護士」「弁理士」「公認会計士」「税理士」のいずれかの資格を持つものに関しても、その資格が得られるようになっています。また、実際の業務を行うにあたっては、「行政書士会」に備え付ける「行政書士名簿」に登録する必要があります。
税理士
5つ目の「8士業」は、「税理士」です。「税理士」は、「税理士法」に規定される資格を有するものになります。
「税理士」の職務は、税務代理などです。租税に関して、税務官公署に対する申告や申請、不服申し立てや過誤納税金の還付の請求などについての代理・代行を行うのが仕事になります。また、税務官公署に提出する書類の作成や、税務相談なども請け負っています。
「税理士」の資格を持つには、税理士試験に合格するか、または「弁護士」「公認会計士」等の資格を持つことが必要となります。また、税理士業務を行うにあたっては、「日本税理士連合会」が備える税理士名簿への登録が必要です。「公認会計士」との違いは、「税理士」は「税務」を専門業務として行い、「公認会計士」は「財務諸表監査」を主な業務とする点にあります。
社会保険労務士
「8士業」の6つ目は、「社会保険労務士」です。こちらは「社会保険労務士法」に規定される資格になります。略称として、「社労士」と呼ばれることもあります。
「社会保険労務士」の職務は、労働社会保険諸法令に基づく申請代理などです。社会保険に関する書類作成や申請代行、労務管理に関する実務とコンサルティング、また社会保険・労災の申請や、助成金の申請についても行います。
「社会保険労務士」になるには、社会保険諸法やこれに関する一般常識を科目とする国家試験に合格する必要があります。この試験に受かると「社会保険労務士」の資格が与えられ、その後「全国社会保険労務士会連合会」に登録申請して登録を受ければ、「社労士」として業務を行うことができます。
土地家屋調査士
続いての「8大士業」は、「土地家屋調査士」です。こちらは「土地家屋調査士法」に基づく国家資格になります。
「土地家屋調査士」の職務は、不動産の表示登記申請代理などです。依頼を受け、不動産の表示に関する登記について必要な土地家屋の調査・測量を行ったり、登記の申請手続きや審査請求の手続き、また筆界特定の手続きについての代理を行うなどします。
「土地家屋調査士」の資格を得るには、法務大臣の認定を受けるか、または法務省が実施する試験に合格しなくてはなりません。また、業務を行うためには事務所を設ける地域の「土地家屋調査士会」に入会し、「日本土地家屋調査士連合会」に備えられた土地家屋調査士名簿に登録する必要があります。
海事代理士
「8士業」の最後は、「海事代理士」です。こちらは、「海事代理士法」に規定される国家資格になります。
「海事代理士」の職務は、海事に関する行政機関への申請、届出などの手続き代理といったものです。主として海運や造船分野の法人企業、また船主などから依頼を受け、船舶の登記・登録・検査や、船舶免許の取得、更新の申請代行といったことを業務として行います。
「海事代理士」になるには、海事代理士試験に合格しなくてはなりません。その後地方運輸局に登録し、業務を行えるようになります。ただ、資格取得後すぐに十分な量の仕事を得られるケースは少ないため、一旦「司法書士」などを経た後、「海事代理士」の資格も得るケースが多くなっています。
8士業以外の士業一覧
公認会計士
ここからは、「8士業」以外の士業について見ていきましょう。まずは「公認会計士」です。
「公認会計士」は、証券取引法及び商法に基づいた会計検査を行える、国家資格保持者となっています。第三者の立場により、企業の財務諸表や会計書類などについてチェックを施し、信頼性を担保するのが役割になります。また、それにより投資者や債権者を保護する役割も持ちます。
「公認会計士」になるには、まずは短答式と論文式の2つから成る公認会計士試験に合格しなくてはなりません。その後2年以上の業務補助等を経て、修了考査に合格すれば、「公認会計士」の資格が与えられます。また開業にあたっては、公認会計士名簿に登録し、日本公認会計士協会に入会することが必須となっています。
技術士
続いて紹介する「士業」は、「技術士」です。こちらは、「技術士法」によって認められている国家資格になります。
「技術士」の資格は、科学技術についての高度な知識と応用能力が認められたものに対し、国から与えられます。その職務は、科学技術に関する高度な専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析等や、これらに関する指導などを行うこととなっています。
「技術士」になるには、文部科学省が定める部門ごとに実施される試験に合格しなくてはなりません。第一次試験合格(または指定された教育課程を修了)後、実務経験を経て第二次試験に臨み、合格すると「技術士」の資格が得られます。資格者が実際に「技術士」として認められるには、「公益社団法人日本技術士会」の登録簿に、必要事項の登録を受ける必要があります。
一級建築士
続いての「士業」は、「一級建築士」です。「一級建築士」は、国土交通大臣から認可された国家資格になります。
「一級建築士」の職務には、建物の設計のほか、工事の監理についても含まれます。このうち設計については、「構造設計」「設備設計」「意匠設計」の3つを担います。「構造設計」は建物の安全性を確保するための設計のことで、「設備設計」は室内環境に関する設備の設計になります。「意匠設計」は、建物のデザインに関する設計です。「二級建築士」との違いは、設計できる建物に制限がないという点になります。
「一級建築士」の資格を得るにあたっては、いくつかのケースがあります。もっとも多いのは、「二級建築士」や「木造建築士」の資格を取った後、実務経験を経て取得するケースです。
不動産鑑定士
「不動産鑑定士」もまた、「士業」の1つです。こちらは、「不動産鑑定評価法」に基づく国家資格になります。
「不動産鑑定士」は、文字通り不動産の鑑定評価を行うのが職務です。具体的には、土地や建物、またはこれらに関する所有権以外の権利(賃借権など)の経済価値の判定と、その結果の価額表示を行います。
「不動産鑑定士」の資格を得るには、短答式、論文式から成る不動産鑑定士試験に合格し、なおかつ実務修習を修了する必要があります。実務修習は、登録を受けた機関で3種類のコースに従い、実地演習などを受けます。資格取得後は、国土交通省が備える「不動産鑑定士名簿」に登録を受けてから、実際の業務を行えるようになります。
中小企業診断士
次に紹介する「士業」は、「中小企業診断士」です。こちらは「中小企業支援法」に基づいた国家資格になります。
「中小企業診断士」は、その名の通り、主に中小企業の経営に関して助言などを行うのが職務となっています。企業の成長戦略について専門知識に基づいたアドバイスを行ったり、経営計画立案に際し必要な、金融機関等へのパイプ役を務めるなどします。
「中小企業診断士」になるには、一次試験を経た後、二次試験に合格して3年以内に実務補修を受けるか、または15日以上の診断実務に従事する必要があります。また、中小企業大学校等が行う登録養成課程を修了することも、資格取得に有効です。有資格者は資格更新にあたって、有効期間中(5年)に経営診断等の実務を30日以上行うなどの要件を満たす必要があります。
ファイナンシャル・プランニング技能士
最後にご紹介する「士業」は、「ファイナンシャル・プランニング技能士」です。「FP技能士」とも呼ばれますが、こちらは「職業能力開発促進法」に基づく国家資格となっています。
「ファイナンシャル・プランニング技能士」の職務は、顧客の資産に応じた貯蓄や投資などについての、プランの立案や相談といったものです。顧客ごとに適した総合的な資産設計や、ライフプランのアドバイスを行うのが仕事になります。
「ファイナンシャル・プランニング技能士」の検定は、難易度に応じて1級から3級までの3種類に分かれます。このうち2級の受験資格は、「3級合格者」または「2年以上のFP業務経験者」などで、1級の場合は、「実務経験5年以上」または「2級合格後、実務経験が1年以上のもの」などとなっています。実際の資格取得にあたっては、まずは金融機関に就職し、ある程度のキャリアを積んでから挑戦するケースが多くなっています。
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