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一般常識

「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の意味と違い

「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の意味と違い

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の意味と違いとは

「有名人の●●が逮捕された」等、日々のニュースや報道などで「逮捕」という単語が使われています。ただ、「逮捕」の正確な意味を理解していない方も多いのではないでしょうか。また、「逮捕」には「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」という3種類(なお、「準現行犯逮捕」というものもあります)があり、それぞれ持つ意味や要件が異なりますが、この違いを理解している方は非常に少ないでしょう。

そこで今回は、「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の意味や違いなどについて解説していきたいと思います。

そもそも「逮捕」とは?

ざっくりと説明しますと、逮捕とは、犯罪行為を行ったと疑われる場合に、証拠隠滅や逃亡を防止するために、被疑者の身体を拘束することを意味します。

よくある誤解として、「犯罪行為をした場合、全て逮捕される」というものがありますが、これは大きな間違いです。
そもそもこの「逮捕」の段階では、犯罪行為を行ったかは確定していませんし、そのような疑いがある場合(本人が認めている場合も含む)であっても、逮捕されないことも良くありますので、少し注意が必要です。

「通常逮捕」とは

通常逮捕

「通常逮捕」とは、裁判官が事前に発布した逮捕状に基づいて、被疑者を逮捕するものです。名前の通り、これが最もスタンダードな逮捕の手法です。

被疑者の人権保障や、捜査機関の恣意的な逮捕を防止するという観点等から、捜査機関から独立した機関(裁判官)の、事前の逮捕状の発布が必要とされています。
具体的な流れとしては、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときには、捜査機関は、裁判所に対し、逮捕状の発布を請求します。これを受けた裁判官は、捜査機関の請求の内容を検討し、逮捕状を発布するかを検討することになります。件数は多くないですが、捜査機関が逮捕状を請求したものの、請求が却下されることもあります。

逮捕状の請求数と発付数等(地簡裁総数)

裁判所HP(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/01_taihoR2.pdf)より抜粋

なお、「緊急逮捕」との大きな違いは、「事前に逮捕状が発布されているか」という点に「あります。詳しい違いについては、次の項目で説明します。

「緊急逮捕」とは

緊急逮捕

「緊急逮捕」とは、一定の重い罪を犯したと疑われる場合で、逮捕状を請求する時間的余裕がないときに、緊急に行われる逮捕です。

緊急逮捕を行うことができるのは、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」に限定されています。例えば、「暴行罪」については、「二年以下の懲役もしくは三十万円以下の罰金」が法律上で定められた刑罰であるため、緊急逮捕を行うことはできません。また、事前に裁判官より逮捕状が発布されることが原則であるため、逮捕状を求める時間的な余裕がないことも要件の一つです。

なお、緊急逮捕は、事前の逮捕状の発令は不要ですが、逮捕後ただちに、裁判官に逮捕状を請求しなければなりません(逮捕状が発布されないときには、直ちに被疑者を釈放しなければなりません)。そのため、「緊急逮捕は逮捕状が不要!」というのは、正確な理解ではありませんので、少し注意が必要です。

「通常逮捕」も「緊急逮捕」も、事前・事後の違いはあれど、いずれも「逮捕状が発布されること」が必要な手続であるという点で共通しています。
もっとも、これらの逮捕と異なり、「現行犯逮捕」では、逮捕状は不要となります。次の項目で詳しく見てみましょう。

「現行犯逮捕」とは

現行犯逮捕

「現行犯逮捕」とは、現に犯罪を行っている最中か、犯罪を行った直後の者を、その場で逮捕するものです。
この現行犯逮捕の特徴は、①裁判官の逮捕状が必要ないこと、②捜査機関だけでなく、「何人も」逮捕を行えること、が挙げられます。

➀については、先に述べた通常逮捕、緊急逮捕とは異なり、現行犯逮捕を行う場合、裁判官の逮捕状は事前・事後のいずれであっても不要となっています。これは、まさに目の前で犯罪行為が行われている(あるいは行われた直後である)ため、人違いなどの危険性もほぼないことから、逮捕状は不要とされています。なお、現行犯逮捕に準ずる状況として、「準現行犯逮捕」というものもあります。

②については、先に述べた通常逮捕、緊急逮捕は、あくまでも捜査機関が逮捕するものですが、現行犯逮捕は、「何人も」、つまり、この記事を読んでいる方もみな、逮捕を行うことができます。例えば、電車内で痴漢行為を目撃した場合に、その場で周りの人が取り押さえるような場合には、現行犯逮捕に当たります。また、万引きGメンが万引き行為を発見し、取り押されるような場合も、これに当たります。

このように、同じ「逮捕」とは言え、通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕では、それぞれ持つ意味が大きく異なりますので、ニュースや報道などで、逮捕という単語を耳にした際は、上記のような違いを意識すると良いかもしれません。

「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の意味と違い

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