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法務・法律

「暴行(暴行罪)」「傷害(傷害罪)」の意味と違い

「暴行(暴行罪)」「傷害(傷害罪)」の意味と違い

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

「暴行(暴行罪)」「傷害(傷害罪)」の意味と違いとは

「●●容疑者を暴行の疑いで逮捕しました」「傷害の罪に問われている~」など、「暴行」「傷害」という単語は、ニュースや新聞などでもよく見かけるかと思います。
どちらも「人を殴る」「人に怪我をさせる」という意味合いで認識されている方が多いとは思いますが、実はこの2つの単語、似てはいますが、意味は違います。特に法律上は、両者を明確に分けて使用します。

今回は、「暴行(暴行罪)」「傷害(傷害罪)」の意味と違いについて解説していきましょう。

「暴行(暴行罪)」とは

暴行

「暴行」という単語は、日常的には、「乱暴な行為」や「人に暴力を加えること」という意味合いで使われますが、法律上は、「人の身体に対し不法な有形力を行使すること」などと定義されています。

「不法な有形力の行使」というのが分かりにくいかと思いますが、例えば、人を殴る行為、蹴る行為等は、典型的な「暴行」です。ただ、このような直接的な暴力行為に限られるわけではなく、例えば裁判例では、「服を掴んで引っ張る行為」「人に塩を振りかける行為」等も暴行に当たると判断されています。更には、「人を驚かせる目的で、近くに石を投げる行為」も暴行に当たると判断されています。

「石を投げたケースで、実際に当たってなくても暴行になるの?」「塩を振りかけても怪我をしないのでは?」などと疑問を思った方もいるかと思います。
実は、まさにこの部分が「暴行罪」と「傷害罪」の違いなのです。
「暴行罪」は、相手方に怪我が発生したかという結果を問わず、その「行為」に対して科される刑罰です。他方、傷害罪は、傷害(怪我・病気)という「結果」に対して科される刑罰です。
詳しい違いは、傷害罪の項目で見ていきます。

「傷害(傷害罪)」とは

傷害

「傷害」という単語は、日常的には「傷つける」「人を怪我させる」という意味で使われますが、法律上は、「人の生理的機能に障害を与えること、又は人の健康状態を不良に変更すること」等と定義されています。

何ともわかりづらいですが、「人に怪我を負わせたり病気にさせること」を傷害と考えれば大丈夫です。これも具体例を挙げますと、「人を殴る・蹴るなどして怪我をさせる」のが典型的な傷害です。そのほか、裁判例では、「相手に嫌がらせ電話をかけ続け、精神疾患に陥らせた」「わざと騒音を出し続け、隣人を睡眠障害に陥らせた」といった行為や、「性病であることを隠して性交渉を行い、性病に感染させた」行為も、傷害罪に当たるとされています。

「暴行罪」との違いを正確に理解するためには、刑法の条文を見るのが一番良いです。

刑法208条(暴行)

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

この条文を見ると、「暴行」と「傷害」が延長線上にあることが分かると思います。
例えば、「人を殴った」という行為で見ますと、「人を殴ったけど相手が怪我をしなかった」場合には暴行罪が、「人を殴って相手が怪我をした」場合には傷害罪が、それぞれ成立します。

ちなみに、傷害罪(204条)の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と、暴行罪よりも大幅に重いです。これは、現に「怪我・病気」という結果が生じてしまっていることが理由です。

なお、暴行罪・傷害罪は、「わざと」相手に暴行を加えたり、怪我を負わせた場合の刑罰ですが、不注意で相手に怪我をさせてしまったような場合(歩いていてぶつかった等)には、傷害罪ではなく、「過失傷害罪」(209条)が成立することとなります。
先にみた傷害罪の法定刑が「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるのに対し、過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金又は科料」と、大幅に低く設定されています(暴行罪よりも大幅に軽いです)。

「暴行(暴行罪)」「傷害(傷害罪)」の意味と違い

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