法務・法律
「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」の違い
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「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」の違いとは
ニュースや新聞などで、「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」といった単語をよく耳にするかと思いますが、これらの単語の意味の違い、お分かりでしょうか?
なんとなく、「犯罪を犯した人」という意味で扱われているイメージがあると思いますが、詳しい違いについてはご存じでない方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「容疑者」「被疑者」「被告人」「犯人」という言葉の意味や違いについて、詳しく解説していきます。
容疑者とは
「容疑者」という単語は、実は法律上で定義された単語ではありません。
一般的な意味としては、犯罪の疑いをかけられている人物を指します。次で説明する、「被疑者」と意味合いは同じですが、両者は、法律上で定義された単語か否か、という違いがあります。
テレビ・新聞などの報道においては、「被疑者」という単語よりも、「容疑者」という単語が使われることが多い印象です。これは、「被害者」という単語と「被疑者」という単語が良く似ているため、両者を明確に区別する観点から、「被疑者」と同じ意味を持つ単語として、「容疑者」という単語を用いるようになった、などと言われています。「被疑者」を言い換えたマスコミ用語ともいえるでしょう。
被疑者とは
「被疑者」の意味は、容疑者とほぼ同義ですが、正確には、捜査機関より犯罪の嫌疑(疑い)をかけられ、捜査の対象となっている者で、起訴されていない者を意味します。
刑事手続を定める法として、「刑事訴訟法」という法がありますが、この法律の中では、「被疑者」という単語が頻繁に使われています(計195箇所で出てきます)。他方、「容疑者」という単語は一度も出てきません。
このように、「容疑者」と「被疑者」は、基本的には同じ意味と考えて問題ありませんが、いわゆる「マスコミ用語」か、「法律用語」かという点で違いがあります。
被告人とは
「被告人」とは、検察官より起訴された者を意味します。起訴されたということは、犯罪の嫌疑をかけられ、捜査されているのが前提であるため、犯罪の嫌疑をかけられた「被疑者」が、十分な捜査を経て、検察官に起訴されることにより、「被告人」と呼ばれるようになると理解するのが良いでしょう。
「被疑者」も「被告人」も、犯罪の嫌疑はかけられているものの、第三者である裁判所の審理を経て「有罪」とされた者ではありません。刑事裁判の原則の一つに、「無罪の推定」などと呼ばれるものがあります。これは、「刑事裁判で有罪が確定するまでは『罪を犯していない人』として扱わなければならない」とする原則であり、世界人権宣言、国際人権規約に定められているだけでなく、憲法によっても保障されているものです。したがって、「被疑者」の段階でも、「被告人」の段階でも、犯罪の嫌疑を受けているものの、「罪を犯していない人」として法律上は扱われることとなります。
なお、「被告人」と似た単語として、「被告」というものもあります。ニュースにおいては、「被告人」と同じ意味で、「〇〇被告」等と報道することもありますが、法律上は、「被告」とは民事訴訟等で訴えられた者(「原告」と対をなす単語です)を意味し、刑事訴訟においては「被告」という単語は使われないため、少し注意が必要です。
犯人とは
最後に、「犯人」とは、犯罪を犯した人物そのものを意味します。先に見た刑事訴訟法の中でも、「犯人」という単語は複数回出てきますし、刑法でも「犯人蔵匿罪」(犯人をかくまった人を処罰する罪)という犯罪が定められています。
「被疑者」「被告人」は、いずれも「犯人」である疑いをかけられている人ですが、有罪が確定するまでは、疑いにすぎないため、「犯人」と呼ぶのは不適切です。
よくよくニュースを聞いていると、「被疑者」「被告人」を意味する単語として「犯人」は使われておらず、「犯人は、凶器を持って~」「犯人は、170センチメートル程度の男性で~」というように、「実際に犯罪を犯した人は」という意味合いで、「犯人」という単語が使われていることが分かるでしょう。
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