法務・法律
「逮捕」「検挙」「摘発」の意味と違い
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「逮捕」「検挙」「摘発」の意味と違いとは
「●●容疑者が逮捕されました」というニュース・報道は日常的に耳にしますが、「検挙」「摘発」という単語も、犯罪に関するニュース・報道でよく使われます。ただ、これらの単語の意味や違いについては、正直なところよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。
今回は、「逮捕」「検挙」「摘発」の意味や違いについて、詳しく解説していきたいと思います。
「逮捕」とは
3つの単語の中で、最もよく使われるのは「逮捕」でしょう。
ただ、その正確な意味については、ほとんどの方が理解していないかと思います。
ざっくりとした説明になりますが、逮捕とは、犯罪行為を行ったと疑われる場合に、その被疑者が証拠隠滅や逃亡することを防ぐため、身体を拘束することを言います。
少し注意が必要なのは、「逮捕された」=「その人が犯罪者(犯人)」ではないということです。逮捕を行うには、あくまでも犯罪行為の「疑い」がなければなりませんが、逮捕段階では、犯罪行為を行ったことは確定していません(裁判を受けて初めて有罪となります)。
また、逮捕されたものの、犯罪を実際に行ったかが不明であるとして、釈放されることも少なくありません。「嫌疑不十分により釈放~」という報道を耳にすることがあるかもしれませんが、これは、被疑者を逮捕し捜査を行ったものの、その被疑者が犯罪を行ったことや、犯罪が成立することの十分な証拠が収集できなかったこと等を理由に、起訴することを断念した(それゆえ身体拘束も解放した)ということを意味します。
なお、「犯罪行為を行った場合、すべて逮捕される」という誤解もよく見られますが、これは大きな間違いです。あくまでも逮捕は、「証拠隠滅や逃亡」することを防ぐために行われるものであるため、犯罪の疑いがある場合であっても、また、たとえ本人が犯罪を認めた場合であっても、証拠隠滅・逃亡の危険性が乏しいとして、逮捕されないことは珍しくありません。
逮捕については、別の記事で詳細に解説を行っていますので、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
「通常逮捕」「緊急逮捕」「現行犯逮捕」の意味と違い
「逮捕」と「検挙」「摘発」との主な違いは、「法律により定義された単語か」という点にあります。「逮捕」は、刑事訴訟法という法律に定義された単語ですが、「検挙」「摘発」は、いわゆる法律用語ではありません。検挙については、次の項目で見てみましょう。
「検挙」とは
「検挙」(けんきょ)とは、一般的に、捜査機関(警察等)が犯罪の事実を認識し、その被疑者を特定することを意味します。
ただ、法律により定義された単語ではないため、場面によって意味あいが若干異なります。例えば、福岡県警のホームページでは、「事件検挙掲示板」というページにて、福岡県警が被疑者を検挙した事件情報を更新していますが、このページでは、「検挙=逮捕」という意味合いで使われているように見えます。
このように、警察の公式ホームページにも使われているなど、「検挙」という単語は、法律により定義された単語ではないものの、刑事事件や日常の報道などにおいて、広く使われている単語です。
また、逮捕より広い概念であり、被疑者を特定したものの逮捕しない場合も、「検挙」に含まれるという点で違いがあります。
中々理解が難しい部分かと思いますが、ここでは、①「法律で定義された単語ではない」ということと、②「逮捕に似ているものの、逮捕よりは広い意味を持つ」ということを理解いただければ十分かと思います。
「摘発」との違いは、次の項目で見てみましょう。
「摘発」とは
「摘発」(てきはつ)とは、「隠された悪事などをあばいて、世間に公表すること」という意味の言葉です。こちらも「検挙」と同様、法律により定義された単語ではありません。
例えば、検索サイトのニュース欄で摘発と検索すると、「大麻所持容疑で高校生ら8人摘発」「歌舞伎町で違法パチスロ店摘発 14人逮捕」などのニュースがヒットします。このように、「検挙」とほぼ同じ意味合いで使われている場面も多くあります。
ただ、法律上の定義ではないことから、「摘発」も検挙と同様、かなり広い場面で使われる単語です。上でみたニュースはいずれも捜査機関が「摘発」をしたケースですが、一般人が犯罪被害を公表するような場面でも、「摘発」という単語が使われることがあります。また、社内の不祥事等を外部に公表する際に「告発」という単語が使われることが多いですが、「告発」と同じ意味で、「摘発」という単語が使われていることもあります。
これらを踏まえて「検挙」との違いを見るに、「検挙」は、犯罪事実と被疑者を特定するという意味を持つのに対し、「摘発」は、その特定された犯罪・被疑者を外部に公表するという意味を持ちます(必ずしも被疑者名が公表されるわけではありません)。また、基本的には両者とも、捜査機関の行う行為を指しますが、「摘発」は、一般人が犯罪事実を公表するような場面でも使われることがあります。
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