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会社経営

「商号」「屋号」「社名」の意味と違い

「商号」「屋号」「社名」の意味と違い

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

「うちの社名は…」などというように、「会社名」「社名」という単語は日常的にもよく使われます。また、これに近い単語として、「商号」「屋号」という単語があります。契約書等でこれらの単語を目にしたことはあっても、正確な意味や違いを理解されている方は少ないのではないでしょうか。

今回は、「商号」「屋号」という単語の意味や違いについて、また単なる「会社名」「社名」との違いについても、解説していきます。

「商号」とは

商号

「商号」の意味・「屋号」との違い

「商号(しょうごう)」とは、非常にシンプルに言うと、「会社の名前」です。
例えば、「よつば株式会社」や「有限会社よつば」といったものが、「商号」にあたります。「商号」の「号」の字は、この場合「名称」や「呼び名」などの意味を表しています。

会社を設立する際には、必ずこの「商号」を定めて、法務局にて登記を行う必要があります。
定めることができる商号は1つに限られており、かつ使える文字にも一定の制限があります。例えば、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、数字だけでなく、「&」「・」「‐」といった記号を使うこともできますが、「!」「?」「@」等の文字・記号や、「Ⅰ Ⅱ Ⅲ」などのローマ数字は、商号として使用することができません。

なお、後で見るように、「法人が利用する名称か、個人が利用する名称か」という点で、「屋号」とは意味が異なります。

商号に関する法律上のルール

「商号」は会社の顔であり、顧客等もその商号を信頼して取引を行うこととなります。そのため、何らの制限を受けずに自由に商号を設定・利用することができるわけではなく、以下のように、会社法上、商号の設定・利用については、一定のルールが課されています。

会社法第6条(商号)

1 会社は、その名称を商号とする。

2 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。

3 会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

→商号内に必ず自社の会社の種類(株式会社等)を記載しなければなりません。

第7条(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)

会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

→例えば個人事業主として事業を営んでいる人が、「株式会社●●」というような名称を利用して営業することはできません。

第8条

1 何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。

2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

→不正の目的、例えば、有名な「よつば株式会社」と勘違いをさせる(=それにより自社の売上を上げる)ような目的で、「株式会社よつば」という商号を用いることはできませんし、一定の場合には、そのような商号利用の停止等を請求することができます。なお、会社法だけでなく不正競争防止法にも、類似の規定があります。

第9条(自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任)

自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

→他人・他社に商号の利用を許諾した場合の責任も定められています。

「屋号」とは

屋号

「屋号(やごう)」とは、これも非常にシンプルに言うと、「個人事業主がビジネス上で使用する名前」です。
例えば、個人名が記載された法律事務所も多く存在しますが、法人ではなく個人で法律事務所を営んでいるような場合には、この「●●法律事務所」という名前は屋号になります。
また、個人経営の飲食店の店舗名等(例:居酒屋●●/スナック●●)も屋号です。そのほか、個人でリフォーム業を営んでいる方で、名刺等に「●●工務店」といった名称が記載されていることもよくありますが、これも屋号です。

屋号は、「商号」とは異なり、必ずつけなければいけないわけではありません。そのため、個人名のままで営業を行うことも可能です。ただし、屋号をつけることで、サービス内容や業種等が顧客に分かりやすい、というメリットがあります。

なお、「商号」の箇所で見たように、「屋号」にも、法人と誤認させるような屋号を利用してはならない(=株式会社等の名称は利用できない)、他社と誤認させるような屋号を利用してはならない、といった一定のルールがあります。

「社名」とは

社名

「社名(しゃめい)」とは、その名の通り、「会社の名前」を意味する単語であり、「会社名」の略語です。
社名と商号には意味の違いはほぼありませんが、「商号」が法律用語であるのに対し、「社名」は単なるビジネス用語という違いがあります。例えば、会社法において、「社名」という単語は一切出てきませんが、先に見た通り、「商号」という単語は、その意味やルールについても定められています。

「商号」「屋号」「社名」の意味と違い

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