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一般常識

天下りとは?天下りの問題点とメリット

天下りとは?天下りの問題点とメリット

監修者

株式会社ゼイカイ

株式会社ゼイカイ

弊社は税理士向けの新聞「税界タイムス」を発行する新聞社です。取材網の中心である税理士から、税金に関する様々な最新情報を入手しており、わかりやすく解説します。

天下りとは?天下りによる問題点とメリット

天下りの問題は、官僚の不祥事が続出した1990年代ごろから大きく取り上げられるようになりました。その後批判の高まりを受け、各省庁では天下り規制を厳格化してきましたが、2017年には再び文部科学省による大規模な再就職あっせんが明らかとなっています。官僚への不信感の原因となっている天下りですが、そもそもどういったものなのでしょうか。ここでは天下りについて、語源からメリット・デメリットまでを詳しく解説していきます。

天下りとは

天下りという語は元々神道由来の言葉で、天上の高天原に住む神々(天津神)が、地上に降臨してくることを言います。
現代ではそれから転じて中央省庁の官僚が退職後、関係する民間企業や政府関係機関に幹部職員として再就職することを指すようになりました。かつて公務員として高い地位にあった人物が、退職後監督していた民間企業などに職場を移す様が、天から降りてくる神のイメージと重ねられたことで天下りと言った言葉が使われています。

天下りの規制

天下りは本来、国家公務員法103条において「離職後2年間は、在職していた国の機関や独立行政法人に関連する企業等の職についてはならない」として禁じられていました。
これは、公務に関わる機密情報漏えいを防ぐ意図で定められたものです。

しかし実際のところ、本省の課長職以上の者は人事院が承諾すれば民間企業の役職にも就けるようになっていたり、また、特殊法人や公益法人への役職就任は各府省の承認でできるようになっていたりと、抜け道が存在していました。
そうしたことから、2007年には法律が改正され、関連企業への2年間の再就職禁止(天下り禁止)を撤廃した代わりに、再就職後に出身省庁へ口利きを図ることに対して罰則が設けられています。

天下りの原因

高級官僚が天下りするのは、省庁の昇進の仕組みに関係があると言われています。中央省庁の官僚のトップは事務次官ですが、このポストは1つしかありません。当然事務次官になれない官僚も多くいますが、こうした人たちは、同期の1人が事務次官に就任する前に退職するのが慣例となっています。

しかし、その時点ではまだ働き盛りなため、新たな就職先を求める人が大半です。そこで、再就職を求める元官僚のニーズと、関連省庁とのパイプを求める企業等のニーズが合致し、天下りというシステムが出来上がったと言われています。
以前は、再就職先の確保は各官庁の仕事とされていましたが、現在では批判が厳しくなったことから、前述のように法律で官庁による就職あっせんやOBの口利きなどは禁止されています。

天下りの問題点

天下りはさまざまな弊害があることから、以前から問題視されてきました。
天下りの問題点はいくつかありますが、その一つが企業等との癒着です。

例えば文部科学省の場合、大学や研究機関に対して補助金の交付を行っていますが、これは審査を経た上で行われます。補助金は国民の税金で賄われていますから、厳格な審査が求められるのは当然です。
しかし、補助金を求める大学や研究機関側の中には、文科省とのパイプ役として官僚OBを迎えるケースもあります。審査は人間が行うものですから、官庁とゆかりの深い人間がいることで、何らかの影響を与える可能性は十分あります。官僚OBを雇用する側としては、そうした出身官庁への有形・無形の影響力を期待して迎えることが多く、そこから不正や問題が発生するケースも多くなっています。

天下りのもう一つの問題が、税金の無駄遣いです。前述のように、天下りは行き場のない高級官僚たちのポスト創出のために行われる面があります。そのための受け皿として、新しい団体が創設される場合も少なくありません。しかし、実際に作られる団体や組織は形だけのもので、公益性が低いことから、税金の無駄遣いとして批判されることが多くなっています。

さらに、天下りOBたちはこうした組織のポストを次から次へと渡り歩き、その度に多額の退職金を得ることも珍しくありません。その際支払われる退職金は国民の税金から出たもので、この点に関しても無駄遣いだとして批判の対象となっています。

天下りのメリット

天下りは弊害が多いとして批判される一方で、メリットを主張する説も論じられています。

天下りのメリットとしては、各省庁の新陳代謝が図られるということがあります。
官僚組織は年功序列のため、年齢とともに自動的にポストも上がっていきますが、上がるにつれてポストの数は少なくなっていきます。
そのため、年齢が高い官僚が同じポストのまま居座り続ければ、下の世代はポストの空きがなくなり、出世や活躍の場を奪われてしまいます。そこで定年前の50代などで天下りしていくことで、下の世代も順調に上に上がることができ、より高い地位で能力を発揮することができます。
こうした点は、組織の若返りという面で少なくないメリットがあると言えます。

もう一つのメリットが、優秀な人材の活用です。日本の官僚の優秀さはいろいろなところで言われていますが、そうした人材が早期退職し、他に職のないままでいるのはもったいないという考え方があります。
それよりも、各企業等に再就職し、経験や人脈を生かして再び活躍してもらった方が、社会にとっても良いだろうという見方です。
また、比較的小さな企業でも官僚OBが入ることによりチャンスが生まれ、企業間の競争が活発になるという利点もあります。

天下りについてのまとめ

天下りは、世間からの批判の高まりを受け、法律が改正されるなどして規制される方向に進んできました。
その一方で、2017年には文部科学省による大規模な天下りあっせんが発覚するなど、現在も以前同様に行われていたことが明らかになっています。前述のように、天下りは企業との癒着を生み、不正や税金無駄遣いなどの温床になりやすいという弊害があります。その一方で、優秀な人材の活用や、省庁の組織若返りなどのメリットも指摘されているところです。
官僚OBの再就職自体は自然なことですから、あっせんの禁止とともに、いかに天下りに関する不正や無駄を無くすかが、大きな課題であると言えるでしょう。

天下りとは?天下りの問題点とメリット

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