法務・法律
「法律」「法令」「規則」「条例」「条令」「条約」の意味の違い
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法律・法令・規則・条例・条令・条約の意味の違い
この記事を読まれている方も、「法律」という単語の意味はなんとなく分かると思います。では、「法律」と「法令」という単語が、実は異なる意味を持っていることをご存じでしょうか。また、「規則」「条例」「条令」「条約」といった単語も、実は「法律」と密接に関連することをご存じでしょうか。
今回は、「法律」「法令」「規則」「条例」「条令」「条約」の意味や違いについて詳しく解説していきます。
法律とは
「法律」とは、「社会秩序を保つために設けられたルール」を意味します。例えば、「人の物を盗んではいけない」というのは、「刑法」という法律で定められているルールです。違反した場合の罰則も定められております。このルールがなければ、人の物を勝手に奪うことができることとなってしまい、社会秩序を保つことはできません。このように、法律は、私たちの日々の生活や、社会秩序を保つための役割を有しています。
上記はあくまでも広い意味での法律ですが、法律用語としての「法律」は、「国会の議決によって制定される国家規範」を意味します。憲法は、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と規定しており(憲法41条)、法律が国会の議決によって制定されるものであることを定めています。ニュース等で、「●●法が制定されました」「●●法が施行されました」といった報道を耳にしたことがあると思いますが、これは、法律用語としての「法律」を指していることが大半です。
なお、我が国においては、1900以上の法律が存在するようですが、弁護士でも知らない法律が大半です。
「法令」との違いは、次の項目で見ていきましょう。
法令とは
「法令」とは、一般的には、国会が定めた「法律」と、法律を受けて行政機関が定める「命令」を総称した単語です。「法律」「命令」に加え、地方公共団体の条例や規則も含む概念として使われることもあります。
あまり馴染みのない法律かと思いますが、行政機関の手続や処分のルールを定めた「行政手続法」という法律がありますが、この法律では、「法令」を、「法律、法律に基づく命令、条令及び地方公共団体の執行機関の規則をいう。」と定めています(行政手続法第2条1項)。
「命令」が少しややこしいかもしれませんので、簡単に説明します。
先に見た通り、「法律」を定めるのは国会ですが、「法律」ですべての細かいルールを決めることは現実的ではありません。そこで、「法律」では基本となるルールを設定し、細かい事項については、行政機関の「命令」で定めることができるように委任する、という運用が取られています。
命令には、内閣が制定する「政令」、各省の大臣が制定する「省令」、内閣総理大臣が制定する「内閣府令」がありますが、ここでは、「法律」は基本となるルールを設定し、細かい事項は「命令」で定める、ということを覚えておけばよいでしょう。
「法律」と「法令」の違いは、「法令」の一部に「法律」が含まれるという点、すなわち、法律よりも法令の方が広い概念である、という点にあると言えます。
規則とは
「規則」とは、広い意味では、「物事のきまり」や、「人々が従うべきルール・秩序」を意味します。広い意味での法律に近い概念ですね。身近な例で言うと、ホテル等に宿泊する際や、ネットで注文をする際に、「●●規則」や「●●規約」というものを目にしたことがあるかと思います。
他方、法律用語としての「規則」は、「法律の委任を受けて行政機関等が制定する法規範」を意味します。これもややこしいですね。「規則」と一言で言っても様々な種類があり、例えば、衆議院・参議院が議会の手続・内部ルール等を定める「議員規則」、最高裁判所が裁判手続上のルール等を定める「最高裁判所規則」、各省の大臣が定める「施行規則」(これが最も馴染みがあるかもしれません)等が挙げられます。
例えば、会社の設立や組織、運営等を定める「会社法」という法律があります。この法律は、全部で約1000条もある法律ですが、細かいルールについては、「会社法」ではなく、「会社法施行規則」に定められています。
「法律」と「規則」の違いは、「法律を受けて制定されるのが規則」であるため、規則よりも法律の方が効力(力関係)が上、という点にあります。
条例とは
「条例」とは、「地方公共団体が、その議会の議決によって制定する自治立法」を意味します。その地方公共団体の区域内でのみ適用されるルールです。有名な例ですと、つきまとい行為等を禁止する「迷惑防止条例」や、暴力団排除を目的とする「暴力団排除条例」、青少年の健全な育成を目的とする「青少年健全育成条例」などが挙げられます。全国各地の条例を見てみると、「朝ごはん条例」(青森県鶴田町)、「数の子条例」(北海道留萌市)などのユニークな条例もあるようです。
憲法は、第94条で、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」と定め、地方公共団体に条例の制定権があることを認めています。
また、地方公共団体の組織・運営等を定める「地方自治法」では、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。」「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」と定めています(第14条1項、2項)。
ここでは「条例」の意味を見てきましたが、同じ読み方で「条令」という単語もあります。両者の違いは次の項目で見ていきます。
条令とは
「条令」は、実は正式な法律用語ではありません。「条令」で調べると、「箇条書きの形式をとる法令のこと」などと検索でヒットしますが、「条例」の誤用で使われるケースが大半という印象です。
「条例」と「条令」の違いは、法律用語か否か、という点にあります。基本的には、「条例」の意味さえ押さえておけばよいでしょう。
条約とは
「条約」とは、「国家間で結ばれる文書上の合意」を意味します。これまで見た「法律」「法令」「規則」「条例」がすべて日本国内の規律を意味するのに対し、この「条約」は、国内を超えて、諸外国と締結する合意です。
この「条約」も正式な法律用語です。憲法では、条約を締結するのは内閣の事務と定められておりますが(73条3項)、事前又は事後に国会の承認を得る必要があります(61条)。また、条約を交付するのは天皇の国事行為とされています(7条1項)。
有名な条約としては、「サンフランシスコ平和条約」や、気候変動抑制に関する「パリ協定」などが挙げられます。
このように、「条約」は「国家間でなされる書面上の合意」を意味するものであり、国内の規律を意味する「法律」「規則」「条例」などとは、異なる意味を有しています。
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