一般常識
「刑務所」「拘置所」「留置場」「鑑別所」の意味と違い
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「刑務所」「拘置所」「留置場」「鑑別所」の意味と違い
「刑務所」「拘置所」「留置場」「鑑別所」の意味と違いとは
新聞やニュース等で、「刑務所」という単語を目にすることは多いと思います。なんとなく、「犯罪者が入る場所」というイメージは持たれているのではないでしょうか。
では、「拘置所」「留置場」といった単語や、「鑑別所」はどうでしょうか。
これらはいずれも、「犯罪に関して、一定期間、身体の自由を奪う」というものですが、実は、全く異なる意味をそれぞれ有しています。
今回は、「刑務所」「拘置所」「留置場」、そして「鑑別所」の意味や違いなどについて解説していきたいと思います。
「刑務所」とは
「刑務所」とは、「刑事裁判において自由刑に処せられた者を収容する刑事施設」という意味の言葉です。
少しややこしいですが、犯罪を犯し、刑事裁判で懲役刑等を言い渡された被告人が収容される場所です。「●●被告人が懲役●年の実刑判決を受けた」などというニュースを耳にすることも多いと思いますが、この「懲役●年」の期間、被告人が収容される場所が刑務所です。
かつては「監獄」という語で呼ばれていましたが、大正期から「刑務所」の語が用いられるようになったそうです。
実は、「刑務所」という単語は、「刑法」や「刑事訴訟法」といった法律で定義されたものではなく、以下の通り、「法務省設置法」というあまり馴染みのない法律で定義されています。
法務省設置法第九条(刑務所、少年刑務所及び拘置所)
刑務所、少年刑務所及び拘置所は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 懲役、禁錮又は拘留の刑の執行のため拘置される者、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定により勾留される者及び死刑の言渡しを受けて拘置される者を収容し、これらの者に対し必要な処遇を行うこと。
二 前号に規定する者のほか、法令の規定により刑事施設その他これに附置する施設に収容すべきこととされる者及び収容することができることとされる者を収容すること。
この条文だけを見ると、「刑務所」と「拘置所」があたかも同じような意味を持つように見えますが、後述するように、拘置所は、「まだ裁判が確定していない被告人や、死刑判決が言い渡されて、死刑の執行を待つ受刑者」を収容する場所であり、刑務所とは持つ意味が違います。
なお、刑務所では、単に身体の自由が奪われるだけでなく、刑務所内で様々な「刑務作業」というものが行われています。例えば、法務省のページでは、「受刑者に規則正しい勤労生活を行わせることにより、その心身の健康を維持し、勤労意欲を養成し、規律ある生活態度及び共同生活における自己の役割・責任を自覚させるとともに、職業的知識及び技能を付与することにより、その社会復帰を促進することを目的」として、刑務作業が行われていることが記載されています。
刑務作業で作られた製品を販売している刑務所も一定数あるので、興味のある方は調べてみてください。
「拘置所」とは
「拘置所」も、先に見た「刑務所」と同様、「法務省設置法」という法律により定義されています。刑務所も拘置所も、いずれも「犯罪」に関連して、「身体を拘束するための施設」であるという点は共通しています。
もっとも、先に見た通り、「刑務所」は、「刑事裁判において自由刑に処せられた者を収容する刑事施設」であり、刑事裁判が確定していることが前提となっています。
他方、「拘置所」は、「まだ裁判が確定していない被告人や、死刑判決が言い渡されて、死刑の執行を待つ受刑者」を収容する場所としての意味を持ちます。
Aさんが犯罪を犯し、警察に逮捕されたとしましょう。この場合、基本的には、Aさんは、警察の留置場(後述します)に身柄を拘束されることとなります。
逮捕・勾留期間が満了となり、捜査の結果、Aさんを起訴(刑事裁判にかける)することとなりました。ただ、Aさんには、刑罰を受けるのを恐れて逃亡する可能性や、証拠隠滅を図る危険性がありました。そうすると、「刑事裁判が始まったら家から裁判所に来てね」と、Aさんの身柄を解放することはできません。このようなAさんが、起訴後に収容される施設(留置場から移される施設)が、「拘置所」です。
なお、その後の刑事裁判において有罪判決が確定し、自由刑(懲役刑等)の執行が決まると、Aさんは「刑務所」へ収容されることになります。
なお、現在国内には、全国に8カ所の拘置所があり、100を超える拘置支所がありますが、この後お話する「留置場」よりも圧倒的に数は少ない状況です。先に見たAさんの例ですと、本来的には、逮捕⇒勾留に切り替わる時点で、留置場から拘置所に移されることとなりますが、実際には、勾留期間中も留置所で身体拘束を受けるケースも多いのが実情です。
「留置場」とは
「留置場」とは、「刑事事件の被疑者の逃走や証拠隠滅がなされることを防ぐために、身体を拘束する施設」を意味します。留置場は、警察署の建物内に設置されており、逮捕された被疑者は、この「留置場」に収容されることとなります。
「留置所」と書かれることもありますが、実際には「留置場(りゅうちじょう)」が正しい言い方になります。警察の資料などでは、「留置施設」と書かれます。
逮捕されてから、刑務所に入るまで、時系列で考えると、①留置場⇒②拘置所⇒③刑務所という流れになります。ただし、罪を犯しても、必ず逮捕されるというわけではありませんし、逮捕・勾留がなされても、起訴される段階で身体拘束が解かれることもありますので、①②が必然的に伴うわけではありません。
なお、「留置場」を管轄するのは警察ですが、先にみた「刑務所」「拘置所」を管轄するのは法務省であるという点でも異なります。
「鑑別所」とは
これまで見た「刑務所」「拘置所」「留置場」とは異なり、「鑑別所(かんべつしょ)」は、少年事件でのみ利用される言葉です。
正式な名称は「少年鑑別所」であり、「事件を起こした疑いのある少年などが、家庭裁判所の観護措置の決定を受けて収容される施設」を意味します。
鑑別所では、その名の通り「鑑別」というものが行われます。これは、その後に行われる少年審判での処分を検討するに当たり、少年と接する中で、事件を起こしてしまった動機・背景や、少年の性格等を踏まえ、更生するためには何が必要か、といった点を調査すること等を意味します。法務省のページでは、「医学、心理学、教育学、社会学などの専門的知識や技術に基づき、鑑別対象者について、その非行等に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、その事情の改善に寄与するため、適切な指針を示すこと」を鑑別と定義しています。
先に見た「刑務所」、「拘置所」、「留置場」は、身体を拘束する点を主たる目的とする施設であり、「鑑別所」とは目的が異なります。また、「鑑別所」が少年事件でのみ使われる単語という点でも異なります。
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