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独立・起業

株式会社と合同会社の違い19選

株式会社と合同会社の違い

株式会社と合同会社の違い

監修者

よつば総合法律事務所千葉事務所 弁護士 辻佐和子

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 辻佐和子

よつば総合法律事務所の弁護士の辻佐和子と申します。日常生活の気になるあれこれを法律の観点からわかりやすく解説します。

株式会社と合同会社の違い

これから会社を起こそうと考えている人にとって、考えるべきことはいろいろあるでしょう。その中でも「会社の形態をどうするか」ということは、重要なポイントとなります。
会社の形態と聞いて、まず思いつくのは「株式会社」ですが、これとは別に「合同会社」という形態も増えています。

 簡単に説明すると、「株式会社」とは、出資者(株主)と業務執行者(取締役)が分かれている会社形態で、「合同会社」は、出資者と業務執行者が同じ(社員)である会社形態のうち、社員全員が有限責任を負うものです。
こう言われても、今ひとつよくわからない方がほとんどだと思います。
この記事ではそうした方のために、株式会社と合同会社の細かな違いについて、様々な観点からご紹介していきたいと思います。

①商号の違い

株式会社と合同会社の違い、1つ目は「商号」です。「商号」とはいわゆる「社名」のことで、会社を設立する時には必ずつけなくてはなりません。その際、商号に会社の形態を入れるのがルールとなっています。例えば、株式会社であれば「○○株式会社」、合同会社であれば、「△△合同会社」といった具合です。
また、この商号中の会社形態は、省略して表記したり、アルファべットで表記したりすることはできません。

②登記費用の違い

株式会社と合同会社は、登記にかかる費用の点でも違いがあります。会社の設立時には、法務局での登記が欠かせませんが、この際「登録免許税」という費用が必要になります。「登録免許税」とは、登記手続きに際して国に治める税金のことで、株式会社の場合は資本金の額の1000分の7(15万円未満になる場合は申請件数1件につき15万円)、合同会社の場合は資本金の額の1000分の7(6万円未満になるときは、申請件数1件につき6万円)の費用がかかります(2023年2月3日時点)。
そのため、「資本金の額×7/1000」が15万円となる資本金の金額、つまり資本金がだいたい2100万円より小さいならば、合同会社のほうが株式会社に比べて登記費用が安くなることになります。

③資本金の違い(違いなし)

事業を行うにあたり必要となるお金を「資本金」と言いますが、資本金の面では、両者に特に違いはありません。
かつては、この資本金の額に関して最低限度額が定められていました。しかし、現在の会社法では最低資本金制度は廃止されているので、1円からでも会社設立が可能となっています。ただし、最低資本金額の定めがないといっても、資本金があまりに少額すぎると、銀行口座開設のハードルが上がるなどのデメリットはあります。

④資本金の出資者の違い

株式会社も合同会社も、会社設立にあたって資金(資本金)の出資者が存在しますが、この出資者の呼び方も、両者で違いがあります。
株式会社では、資本金の出資者を「株主」と呼ぶのに対し、合同会社では、「社員」と呼んでいます。もちろんここで言う「社員」は、いわゆる「従業員」の意味とは異なります。

⑤株式の公開ができるかどうかの違い

「株式の公開(IPO)」とは、証券取引所に自社の株式を新規上場させることを指します。
株式公開によって、市場から広く資金を集められるので、事業を拡大しやすいというメリットがあります。株式会社では、株式を公開するかどうかは任意であり、非公開にしておくことも可能です。  
一方、合同会社の場合は、株式会社とは違いそもそも株式がないため、株式公開をすることはできません。

⑥代表取締役・代表社員の違い

株式会社と合同会社は、それぞれの代表者の呼び方にも違いがあります。
株式会社の場合、代表者は「代表取締役」と呼ばれますが、合同会社では「代表社員」と呼ばれます。近年合同会社の設立件数は増加傾向にありますが、まだ「合同会社」と言った商号や「代表社員」と言った名前に耳馴染みがないと言った方もいるため信用に多少の差が出てしまうこともあるかもしれません。
なお、合同会社では原則として業務を執行する社員全員が会社を代表するので、原則としては業務を執行する社員全員が「代表社員」となります。ただ、定款で、別途会社を代表する社員などを定めた場合には、その他の業務を執行する社員は「代表社員」にはなりません。

⑦設立時の役員(社員)数の違い(違いなし)

株式会社は、取締役1名から設立できるようになっています。取締役とは、株式会社の業務執行に関する意思決定を行う者(会社の経営を行う者)のことで、株主総会の決議によって選任されます。株主が取締役を兼ねる場合もあります。また、合同会社も、社員(出資者)1名から設立することが可能です。

⑧役員(社員)の任期の違い

株式会社では、取締役と監査役の任期は、株式の譲渡制限の有無によって違いがあります。株式の譲渡制限がある会社(株式の譲渡に取締役会などの許可が必要な会社)の場合、取締役の任期は最大で10年で、譲渡制限がない会社の場合、任期は最大で2年(監査等委員会設置会社の取締役については最大で1年)になります。監査役は、譲渡制限がある会社では最大で10年で、譲渡制限がない場合は最大で4年の任期になります。
一方、合同会社の社員(出資者)については、特に任期は設けられていません。

株式会社の役員が変更となる場合には、登記の書き換えを行う必要があり、その都度、登録免許税が数万円かかります。

⑨節税面の違い(違いなし)

節税面で株式会社と合同会社を比較した場合、両者の違いは特にありません。どちらも個人事業主の場合と比べ、同じメリットがあります。給与や賞与などの費用も経費に計上できるなど、さまざまな節税効果が等しく見込めます。

⑩信用の違い

社会的な信用の大きさは、会社にとって重要なポイントですが、この点でも株式会社と合同会社には違いがあります。株式会社に比べると、合同会社の取引先からの信用度は、それほど高いとは言えないかもしれません。その理由としては、株式による資金調達ができない、外部に意思決定者がいないなどの閉鎖的な性質が挙げられます。また、一般的な認知度がまだ低い点も、合同会社の信用の低さに影響しています。

⑪社会保険の違い(違いなし)

社会保険への加入については、株式会社と合同会社のどちらも義務となっており、この点について両者の違いはありません。社会保険とは、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金、介護保険等の公的保険の総称です。このうち雇用保険については、一人でも労働者を雇用している場合には加入しなくてはなりません。健康保険と厚生年金については、常時雇用されている従業員は、(一部のアルバイトやパートの方を除き)全員加入対象に含まれます。

⑫決算の公告義務の違い

「決算公告」とは、会社による財務情報についての開示のことです。株式会社ではこの決算公告が義務付けられており、通常は毎年の決算後、定時株主総会が終わってから公告されるようになっています。
一方、合同会社については、株式会社とは違い、決算公告の義務はありません。

⑬意思決定機関の違い

株式会社の場合、会社の重要事項を決定するのは、「株主総会」と呼ばれる機関です。株主総会は株式会社の最高意思決定機関であり、取締役や監査役の選任・解任のほか、会社の合併といった経営に関する重要事項の決定を担います。
一方、合同会社の場合は、株式会社とは違い、株主総会のような特別の意思決定機関はありません。業務執行の決定については、定款に定めのある場合を除き、社員の過半数によって決められるようになっています。

⑭利益配分の違い

株式会社の場合、事業で得た利益は、出資者(株主)の出資比率に応じて配分されます。つまり、出資の割合が多い人ほど、大きな利益が得られるわけです。
一方、合同会社の場合は、こうした決まりはありません。定款によって自由に配分法を定められるため、社員は出資比率に関係なく利益の配分を受けることもできます。

⑮議決権の違い

株式会社では、株主の議決権は持株比率に比例して大きくなります。例えば1株につき1つの議決権を定めた会社で、持株比率25%の株主がいたとします。この時、全議決権の50%超の賛同が必要な決議を行うならば、その株主の全賛成票は、可決に必要な票数のほぼ半分を占めることになります。
一方、合同会社はこれとは違い、議決権は原則として出資額に関係なく、社員全員対等となっています。

⑯設立にかかる時間の違い

株式会社と合同会社は、設立にかかる時間においても違いがあります。合同会社は株式会社に比べ、一般的に設立に要する期間が短いのが特徴です。これには、株式会社の設立手続きでは定款の認証が求められるのに対し、合同会社ではその必要がないといったことが影響しています。

⑰出資者責任の違い(違いなし)

起業の際、注目すべきポイントの1つに、「出資者の責任範囲」があります。これは会社が倒産した場合、出資者が債権者に対して負うべき責任の範囲のことで、出資した金額を上限として責任を負う「有限責任」と、出資額を超えて無限に責任を負う「無限責任」の2種類に分けられます。 
株式会社と合同会社の出資者は、どちらも「有限責任」になる点で違いはありません。

⑱資金調達

株式会社も合同会社も、借入や社債の発行によって資金調達ができる点では共通しています。
異なるのは、株式を発行できるかどうかです。
合同会社は株式を発行しないため、株式会社に比べると第三者からの資金調達の手段・機会は限られます。このため、合同会社は、比較的小規模な事業に向いている会社形態であると言われています。

⑲組織運営の自由度

株式会社の場合、事業を運営していく上で、さまざまな法的規制を受けることになります。例えば株主総会の設置は、会社法で義務付けられていますし、取締役会の開催頻度や招集手続といったことについても、会社法による定めがあります。
それに対し、合同会社の場合は、こうしたルールは設けられていません。株式会社とは違い、定款に定めた内容に応じて、自由に組織を編成することが可能です。

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