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働き方改革とは?背景や目的、施行内容8選

働き方改革とは?背景や目的、施行内容8選

ここ数年ですっかり広まった言葉に、「働き方改革」があります。巷でも日常的に聞かれるようになりましたが、名前の知名度の割にその詳しい中身については、未だにぼんやりとしたことしか分からないという人も少なくないでしょう。そもそも「働き方改革」とはどういう改革で、なぜ行われたのでしょうか。また、具体的な内容についても知っておきたいところです。

本記事では、「働き方改革」の定義や実施の背景・目的、施行内容などについて解説していきますので、理解の参考にしてみてください。

働き方改革とは?

「働き方改革」とは、政府が「一億総活躍社会実現」の一環として推し進める、働く人々の労働環境改善を目指す諸取り組みの通称になります。厚生労働省発表の「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて」に記載された定義によると、


「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。
引用:厚生労働省

とされています。

「働き方改革関連法」と呼ばれるいくつかの法律から成り、2018年6月に可決、翌2019年4月1日から順次施行されています。「長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現」や「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」などを基本方針としており、これに基づいて時間外労働の上限規制導入などの改正が行われています。

背景

「働き方改革」の内容などについてはよく取り上げられていますが、そもそもどういった理由から導入されるに至ったのでしょうか。ここでは、「働き方改革」導入の背景に存在する要因について、重要なポイントをいくつか挙げて紹介していきましょう。

少子高齢化に伴う労働力人口の減少

「働き方改革」導入の背景に大きく関わっているのが、「少子高齢化」の問題です。とりわけそれに伴う労働力人口の減少は、今後の日本経済に深刻な悪影響を与えると見られており、早急な対策が求められています。

労働力人口は15歳以上の働く意志と能力を持った人口層で、生産の中心を担います。この層が減ることは、消費の縮小やGDPの低減といった問題を引き起こし、国力の衰退につながります。「働き方改革」はこの問題に対し、労働環境を改善して効率的な働き方を実現させることで解決しようという狙いがあります。

働き方のニーズの多様化

社会における働き方のニーズが多様化していることも、「働き方改革」導入の背景として指摘できます。

かつての日本社会では、家庭の中で働き手は1人というのが一般的でしたが、現在は結婚している家庭でも、夫婦共に仕事を持つケースの方が多くなっています。また、未婚率の増加等の要因から、単身者世帯も増加する傾向にあります。

こうした事情に伴い、子育てや介護などと仕事の両立といった問題が浮上することとなりました。従来の雇用環境ではこうした問題に対応できない部分が多く、より柔軟な働き方へのニーズが高まっています。「働き方改革」では働き方の選択肢を増やすことで、これに対処していこうとする意図があります。

長時間労働と過労死の問題

「働く姿勢」を重視する文化を持つ日本では、長らくプライベートを犠牲にしてでも献身的に働くことが美徳とされてきました。そのせいもあって、高度成長期以降、多数の企業では長時間労働が常態化していきます。
しかしこうした働き方は、多くの労働者の心身に悪影響を与えることとなり、メンタルを病んで休職したり、過労死するといったケースが続発することとなりました。

このような問題が社会的に大きく取り上げられ、改善の必要性が叫ばれるようになったことも、「働き方改革」導入の背景に存在しています。

労働生産性の低さ

労働者1人あたり(または労働1時間あたり)でどれだけの成果を生み出せたかについての指標を、「労働生産性」と呼びます。言い換えれば、「働き方の効率性」を表す数値ですが、その良し悪しが経済の成長度に大きく影響するとされています。

この労働生産性を国際比較した場合、日本の数値は、他の先進国に比べて低さが顕著となっています。少子化が進む中で国際競争力を維持・強化する上でも、労働生産性向上が必須なのは明らかです。こうした背景も、「働き方改革」導入の陰に存在しています。

働き方改革の主要目的

「働き方改革」が生まれた背景については上記の通りですが、それではこの取り組みは、一体どういったことを目指しているのでしょうか。以下の項目では、「働き方改革」が主な目的とする3つのポイントについて紹介していきましょう。

長時間労働の見直し

上で述べたように、日本の労働環境における大きな問題の1つとなっているのが、「長時間労働の常態化」です。現在は一時期ほどではないとは言え、未だに残業や休日出勤を良しとする風潮は残っています。しかし、これを放置しておけば、育児や介護の時間が奪われるだけでなく、労働者自身の体にも悪影響を及ぼすのは明らかです。

近年は「ワークライフバランス」の考えが浸透しつつありますが、この実現を図る上でも、「働き方改革」による長時間労働の見直しは不可欠と言えます。

正規・非正規間の格差解消

雇用形態の違いによる格差の解消も、「働き方改革」の目的に含まれます。

2020年時点では、雇用者のうち約4割が非正規雇用の立場で働いていると言われています。しかし、実質正規雇用者と同じ仕事をしている人も多いのにも関わらず、非正規の賃金は平均で正規の66%ほどしかありません。こうした非正規と正規の間にある明らかな待遇格差は、労働者の意欲をそぎ、人材難を加速させる要因になります。

「働き方改革」では「同一労働同一賃金」の考えを基本として、こうした正規・非正規間の格差是正を目指しています。

多様かつ柔軟な働き方の実現

これも上記のように、現在は家族の在り方や社会の価値観も多様化し、さまざまな働き方の選択肢が求められるようになっています。こうしたニーズを無視した体制を維持すれば、社会の活力を殺いで、成長を阻害することになりかねません。

そのために「働き方改革」では、多様で柔軟な働き方の実現を主要な目的として掲げています。具体的には、時短やテレワークなどのライフステージ(出産・育児や介護)に応じた働き方や、副業・兼業の容認、シニア層活用といった観点による取り組みを実施しています。

働き方改革関連法とは

すでに述べた通り、「働き方改革」は一連の法案から成り、2019年4月1日から順次施行されています。これは俗に「働き方改革関連法」と呼ばれますが、正式な名称は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」となっています。

「働き方改革関連法」は、正確に言えば、既存の労働関連の法律に改正を加えたものになります。具体的には、「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働契約法」「じん肺法」「労働時間等設定改善法」「パートタイム・有期雇用労働法」「労働者派遣法」「雇用対策法」の8本です。

あくまでも既存の法律の改正であり、新法を定めたわけではない点は要注意です。

施行内容と時期

5日以上の年次有給休暇取得義務

「働き方改革」の具体的内容、まずは「5日以上の年次有給休暇消化義務」です。施行された時期は、2019年4月1日になります。

こちらは使用者に対し、年次有給休暇の日数が10労働日以上ある従業員には、1年間で5日を消化させなくてはならない旨義務付けています。有給休暇の取得率が低迷している上、ほとんど取得の実績がない従業員では長時間労働の傾向が強いことから、こうした法改正が行われました。
義務を怠った場合は、刑事罰の対象となります。

労働時間の客観的把握

続いて紹介する施行内容は、「労働時間の客観的把握」です。法令適用の時期は、2019年4月1日になります。こちらは労働安全衛生法を改正したもので、従業員の労働時間を客観的に把握することを、使用者に対し義務付ける内容となっています。

それまでの法律では、出勤簿の必要性や、どういった基準で勤怠管理を行うべきかが明記されていないという問題がありました。「働き方改革」の改正はこれを踏まえて行われたもので、使用者は従業員の労働時間を適切に把握しなくてはならない旨明記されています。

時間外労働の上限規制(罰則付き)

こちらは大企業と中小企業とで施行時期が分かれ、前者は2019年4月1日から、後者は2020年4月1日からの適用となっています。

この「働き方改革」の法令により、時間外労働の上限は月に45時間、年に360時間が原則として定められました。繁忙期の労働時間延長については、1ヵ月のうち休日労働を含み、100時間未満でなくてはなりません。また、1年のうち原則(月45時間)を上回れるのは6回までで、かつ720時間を超えない範囲とされます。

違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が企業や労務担当者に科されます。

同一労働同一賃金の推進

上でも触れたように、「働き方改革」の内容には、「同一労働同一賃金の推進」も含まれます。

こちらはパートタイム労働者の待遇改善を目的とした改正で、仕事内容などの範囲が正社員と変わらない場合、企業は賃金や休暇、福利厚生などを同じレベルにしなくてはならない旨義務付けています。仕事内容が異なる場合でも、不合理な格差を設けることは禁じられます。また、企業は格差について、労働者に内容や理由を説明しなくてはならない義務もあります。

法令施行の時期は、大企業と派遣会社は2020年4月1日から、派遣会社を除く中小企業は、2021年4月1日からとなっています。

高度プロフェッショナル制度の創設

こちらは、高度な職業能力を持つ労働者の労働時間規制などの撤廃を定める法令です。2019年4月1日が施行の時期となっています。

年収1075万円以上で本人が同意していることが条件で、なおかつ各企業の労使委員会の決議が必要となります。指定対象となる業種の例としては、金融商品の開発業務やアナリスト業務、弁護士等の士業などが挙げられます。

この「働き方改革」により、上記のような職業の労働者は、時間外労働の上限規制や割増賃金の支払い義務の適用除外となります。ただし、条件を満たした場合でも、年に104日の休日確保などの健康確保措置は必須となります。

フレックスタイム制の拡大

「フレックスタイム制の見直し」もまた、「働き方改革」に含まれます。こちらの法令が施行された時期は、企業の規模を問わず2019年4月1日になります。

それまでもフレックスタイム制は存在しましたが、最大1ヵ月単位での適用と限られていました。それに対しこの法改正では、最大3ヵ月まで可能と拡充されています。

これにより、労働者はより長いスパンで柔軟な働き方ができるようになりました。たとえば、夏休み期間は労働時間を減らし、それ以外の月で労働時間を増やすといった働き方も可能です。

産業医・産業保健機能の強化

こちらの「働き方改革関連法」が適用された時期は、従業員数50名以上の企業が2019年4月1日からで、2021年4月1日以降は、すべての中小企業を対象に適用されています。

施行内容は、従業員の健康管理の観点から、産業保健機能を強化していこうというものになります。産業保健とは、事業所の産業医や保健師といったスタッフが、職場外の専門家の支援も受けつつ行う従業員の健康管理のための活動を言います。

具体的には、事業者から産業医への情報提供の充実・強化や、残業時間が長時間に及ぶ従業員に対する面接指導の強化といった点が、改正のポイントとなります。

法定割増賃金率引き上げ

最後に紹介する「働き方改革関連法」は、「法定割増賃金率の引き上げ」です。こちらは大企業では2010年にすでに施行されていましたが、中小企業は猶予措置が取られていました。それが「働き方改革」で撤廃され、2023年4月1日の時期から例外なく適用されることになっています。

企業には、従業員の行った時間外労働に対して割増賃金を支払う義務がありますが、この割増率はどれくらいの時間働いたかや、休日・深夜等の条件によって変動します。これが「法定割増賃金率」で、改正前は月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は、25%以上とされていました。一方改正後は、50%以上に引き上げられています。

働き方改革とは?背景や目的、施行内容8選

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