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取締役の意味とは?主な4つの機能と従業員との違い5選

取締役の意味とは?主な4つの機能と従業員との違い5選

監修者

よつば総合法律事務所千葉事務所 弁護士 辻佐和子

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 辻佐和子

よつば総合法律事務所の弁護士の辻佐和子と申します。日常生活の気になるあれこれを法律の観点からわかりやすく解説します。

会社に勤めている人であれ、まだ学生という人であれ、誰しも「取締役」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。ただ、取締役の詳しい意味となると、あまり知らない人が多いのではないでしょうか。実際、取締役の意味や役割には、少々分かりづらい点があります。
取締役は会社にとって重要な役職です。その役割について把握しておくことは社会を読み解く上で大事になってきます。

そこで本記事では、取締役の意味や主な機能、また従業員との違いなどについて解説していきたいと思います。

取締役の意味とは

普段耳にする機会も多い「取締役」ですが、その詳しい意味については、社会人にとっても分かりにくい点が多くなっています。そこでまずは「取締役」という役職の意味について見ていきましょう。

取締役は会社の経営者の1人

「取締役」とは、株式会社において業務を執行する役割を負います(会社法348条)。その取締役全員で構成されるのが「取締役会」です(会社法362条1項)。「取締役会」は、業務執行に関する会社の意志を決定します(取締役会の設置については基本的に任意となっていますが、一定の条件を満たす株式会社は取締役会を設置する義務があります。)。

取締役会設置会社における取締役は、株主総会による選任を受け、なおかつ3人以上でなくてはなりません(会社法331条5項)。任期は、2年が原則です(会社法332条1項)。ただし定款や株主総会の決議により、任期中に解任されることもあります。
取締役は、会社運営に関する重要事項を決定する役割などを担っています。「経営者」、「社長」、「副社長」、「専務」といった肩書で呼ばれることも多くなっています。いわゆる「役員」であり、会社と雇用契約等を締結している従業員とは異なる立場にあります。

取締役の主な5つの機能

上の項目では、取締役の意味について見ましたが、具体的にどういった役割を負う役職なのでしょうか。取締役が持つ主な機能について知りたいところです。以下の項目では、取締役の5つの機能を紹介していきましょう。

決定機能

取締役の重要な機能の1つが、会社運営に関する方向性などを決める「決定機能」です(会社法348条)。これは取締役が担う機能の中でも、もっとも大事なものです。

その会社の基本的な方向性については、定款の「(事業)目的」の中で定められていますが、具体的にどういった方向を目指すべきなのかは、経営のトップが決めるべき問題です。例えば家電メーカーであれば、「有機ELテレビの開発に注力する」などの方針を決めるのが、取締役の役割となります。

取締役会設置会社の場合は、重要事項については取締役ではなく取締役会が決定しなければならないことになっています(会社法362条4項)。

執行機能

取締役の持つ重要な機能としては、「執行機能」も挙げられます(会社法348条)。これは、上記の「決定機能」によって定められた方向性に従い、実際に業務を執行する機能のことです。

取締役会設置会社の場合は、業務の意思決定は会議体である取締役会によって行われます。しかし、実際にその業務を執行するのは、取締役会によって選ばれた代表取締役や、それ以外のいわゆる役付取締役(専務や常務などの肩書を持つ取締役)である業務担当取締役などとなっています(会社法363条1項)。

監督機能(取締役会の機能)

取締役から構成される取締役会の機能として「監督機能」があります。

取締役会は業務の執行者である代表取締役や業務担当取締役の選任を行いますが、単にそれだけでなく、実際の業務状況についての監督(監視)義務も負います(会社法362条2項2号)。
特に近年は、企業の業務内容に関する不祥事が相次いでいることから、こうした監督機能の強化が求められる傾向が強まっています。

代表取締役の選任(取締役会の機能)

取締役から構成される取締役会の機能として代表取締役の選定・解職を行うという機能があります。
代表取締役は会社を代表し、業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する取締役です。
代表取締役がいない会社ではふつうの取締役は会社を代表しますが、代表取締役がいる会社ではふつうの取締役は会社を代表しません(会社法349条1項)。

監査機能(委員会設置会社の場合)

委員会設置会社の場合は、取締役は「監査機能」も持つことがあります(会社法399条の2第3項)。これは、会社が不正な方向に向かっていないかをチェックする機能です。

実際は監査機能については、取締役会とは別に設置される、「監査役会」という機関が担うことが多いです。監査役会は3名以上の監査役から成り、取締役の活動が適正かつ適法に行われているかどうかを監査する役割を負います(会社法335条3項)。
その一方で、委員会設置会社においては、上記のように監査委員を務める取締役が監査機能を担います。

取締役と従業員の違い

取締役は上で述べたように、同じ会社の構成員でも従業員とは異なる立場にあります。では、具体的にどのような点が異なるのでしょうか。以下の項目では、取締役と従業員との違いについて、主なポイントを紹介していきましょう。

委任契約と雇用契約の違い

取締役と従業員は、そもそも会社との契約形態が違います。

従業員は会社との間に「雇用契約」を締結しています(民法623条)。雇用契約とは、従業員が会社の指揮命令に従って働く契約を指します。
それに対し、取締役が会社と結ぶのは、「委任契約」になります(民法643条)。たとえば、一般の人間では難しい事柄の処理を、それに長けたプロフェッショナルに依頼する契約などが委任契約にあたります。

取締役は、単に労働力を提供しているのではなく、経営の専門家として会社にかかわっている点が特徴といえます。

立場の保障の差

取締役と従業員とでは、立場の保障の面においても違いがあります。

従業員の場合、会社とは雇用関係にあります。そのため、会社側が従業員を普通解雇するにあたっては、合理的な理由や相当性がなくてはならず、かつ原則として事前の解雇予告等が必要です(労働契約法16条、労働基準法20条1項)。
それに対し取締役の場合は、基本的に株主総会の決議があればいつでも解任できるようになっています(会社法339条1項)。

対価に対する保護の有無

従業員は、その生活を会社から支給される給与に大きく依存していることが多いです。そのため会社の倒産時には、給与などの一部が財団債権になったり優先的破産債権になったりするといった形で、他の債権に優先して支払われる扱いになります(公租公課など、給与より優先される債権もあります。)(破産法98条1項、同149条1項等)。

それに対し取締役には、このような保護はありません。取締役の役員報酬請求権は一般の破産債権になります。取締役は経営の専門家として会社と対等の立場で委任契約を結んでいるため、従業員とは違い、業務の対価の優先的な保護は受けられないのです。

会社に対する責任の違い

取締役の肩書を持つ人は、上でも述べたように、経営のプロとして会社から仕事を委任される形となっています。責任も重く、もしも注意を怠って会社に損害を与えた場合は、これについて賠償しなくてはなりません(会社法423条1項)。

一方で従業員も、やはり雇用契約の内容に反したことで会社に対して損害を与えた場合は、損害賠償責任を負うことになります(民法415条1項)。ただし、取締役が「善管注意義務違反」による賠償になるのとは違い、従業員の場合は、「債務の不履行」による賠償となります。

第三者に対する責任の有無

取締役が会社への損害賠償責任を負うのは上記の通りですが、第三者に対して損害を与えた場合も損害賠償の義務を負うことになっています(会社法429条)。
これは「対第三者責任」と呼ばれ、取締役の職務に悪意や重過失があった結果、第三者に損害を与えた場合に認められます。
こうした責任は、取締役が持つ権限や影響力が、社会的にきわめて大きいことに由来しています。
一方で従業員は取締役とは違い、こうした責任は負いません。
ただし、従業員の行為が第三者に損害を与えてしまった場合は、その従業員が民法上の不法行為責任を負う可能性はあります(民法709条)。また、その行為が業務上のものであった場合は会社がその損害について使用者責任を負う可能性もあります(民法715条1項)。

取締役の意味とは?主な4つの機能と従業員との違い5選

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