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一般常識

「民法」「刑法」の意味と違い

「民法」「刑法」の意味と違い

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

「民法」「刑法」の意味と違いとは

法律は、私たちが生活する上で基本のルールとなるものですが、日本において、どのくらい法律があるかご存じでしょうか。なんと、この記事を作成している現在において、約2000もの法律があります。名前も聞いたこともない法律も多いのではないでしょうか。
さて、この2000もの法律のうち、私たちの生活に特に身近なものとしては、「民法」「刑法」の2つが挙げられます。しかし、これらの法律を耳にすることはあっても、それぞれの持つ意味や、違いが良くわからないという方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、「民法」と「刑法」の意味や違いについて、詳しく解説していきたいと思います。

「民法」とは

民法

「民法(みんぽう)」とは、私たち一般私人の、「民事上」の権利・法律関係を規律する法律です。「私人」という単語を使いましたが、「公的な立場にはない」という意味であり、個人ではなく法人であっても、民法の適用を受けます。

例えば、コンビニで物を買う場合、お店とお客さんとの間には、その商品について、「売買契約」というものが成立しています。そして、民法では、売買契約に関する様々なルールを取り決めているので、わざわざ「契約書」を交わさなかったとしても、何かトラブル等が発生した場合には、民法のルールに則って権利・法律関係が決まることとなります。
また、例えば親族が亡くなった場合には、「相続」が発生することとなりますが、民法は、「誰が相続人になるか」といった点や、「相続人が複数いる場合に、それぞれの持ち分(取り分)がどうなるか」といった点を定めています。

そのほか、身近な例でいうと、家を借りる際の契約(賃貸借契約といいます)、交通事故の被害に遭った場合の補償(不法行為といいます/契約ではありません)。離婚する場合の種々の取り決め(親権、財産分与等)についても、民法により規律されます。ただし、賃貸借契約の場合には、「借地借家法」という法律が、民法より優先して適用されます(民法の「特別法」として扱われ、そちらが優先します。)。
「刑法」との大きな違いは、「私法」か「公法」か、という点です。
上で見たとおり、民法は、あくまでも一般私人の間の権利・法律関係を規律する法律であり、「私人対私人」の関係のルールです。他方、刑法は、「私人対私人」の関係を規律するものではなく、犯罪行為をした場合に、「国」がどのような処罰を科すか、という点を定めたものです。このように、国家権力の行使に関するルールを定めたものであるため、「私法」ではなく、「公法」と呼ばれます。

「刑法」とは

刑法

上の説明と少し重複しますが、「刑法(けいほう)」は、「どのような行為をした場合に処罰される(犯罪となる行為)か、その処罰はどの程度のものか(刑の種類・量刑)」を定めた法律です。
仮に刑法がなければ、どのような行為をした場合に処罰されるかの「線引き」が分からず、日々行っている様々な行為も、怖くて何もできなくなります。また、このような「線引き」があるからこそ、「処罰を受けたくないから犯罪行為を行わない」、という意識が私たちに生まれます。
このように、刑法は、私たちの行為の「規範」となるだけでなく、私たちが日常生活を無事に暮らすための「秩序」にもなっています。

例えば、人の物を盗んだ場合、刑法上、「窃盗罪」に当たることとなります。具体的には、刑法235条において、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定められており、具体的にどのような処罰を受けるのかという点も、きちんと定められています。

「民法」との最大の違いは、上述の通り、「私法」か「公法」か、という点にあります。
例えば、暴行の被害に遭った場合を考えましょう。被害を受けた被害者は、加害者に対し、損害賠償請求をすることができます。これは、被害者対加害者、つまり「私人対私人」の権利・法律関係に関するお話なので、民法により規律されることとなります。また、加害者は、自らの行った暴行行為について、処罰(懲役刑・罰金刑等)を受ける可能性がありますが、これは、国家権力より受ける処罰であるため、刑法により規律されることとなります。

「民法」「刑法」の意味と違い

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