X-Tech
Sports Tech(スポーツテック)とは?国内・海外事例10選
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「X-Tech」という用語が巷に広がりつつある中で、「Sports Tech(スポーツテック)」という言葉を聞く機会も増えています。見てわかるようにスポーツに関する言葉ですが、近年は世界的にこの分野に乗り出す企業が増えており、日本でも大きな注目が集まっています。
しかし、言葉自体は知っていても、実際にはまだまだまとまった知識がないという人も多いでしょう。
そこで本記事では、スポーツテックの意味とその国内外の具体的事例について、詳しく解説していきたいと思います。
スポーツテックとは
「スポーツテック(Sports Tech)」とは、文字通り「スポーツ」と「テック(テクノロジー)」の2語の組み合わせから成る造語です。この場合の「テクノロジー」とは、ITやAIなどの先端情報技術を指しており、これらの活用でスポーツ業界に新たな商品やサービスをもたらすソリューションを、「スポーツテック」と呼んでいます。
導入されるのは、用品・グッズの開発やアスリート・選手のサポートに限らず、競技における判定や観戦・観覧の環境改善など、さまざまな分野に及びます。またe-スポーツの分野についても、「スポーツテック」に含まれます。
現在は海外のスポーツ産業で導入が活発化していますが、近年はスポンサー市場の伸び率低迷が目立つ日本においても、市場拡大の起爆剤になり得るとして注目されています。
スポーツテックの主な要素
コンサルティング会社のNTTデータ経営研究所は、スポーツテック業界の俯瞰図である「Sports-Tech Landscape」を毎年発表していますが、その基本要素には「観る」「支える」「する」「創る」の4つがあるとしています。ここでは、それぞれの要素について説明していきましょう。
観る
スポーツテックの主要な要素として挙げられるのが、「観る」という行為です。ほとんどのスポーツにおいては、観客による観戦や、応援が付き物となっています。サッカーや野球などの試合は、こうした観覧行為なしに成り立たないと言っても過言ではありません。スポーツテックにおいては、最新テクノロジーの活用で、スポーツ観戦をより快適化する取り組みが行われます。ちなみにこの場合の「観る」には、観戦する人だけでなく、スタジアムなどの場所についても含まれます。
支える
続いてのスポーツテックの要素は、「支える」です。スポーツ活動を行うにあたっては、プロ・アマ問わず、さまざまなものが入用になります。試合用の用具やトレーニング器具も必要ですし、活動の環境も整えなくてはなりません。こうしたものの支援を行うのも、スポーツテックの領域となっています。競技用のグッズ、トレーニング器具の開発や、より高いパフォーマンスを実現させるためのサービスなど、スポーツ活動を成り立たせるあらゆる分野のサポートを行います。
する
「する」というのもまた、スポーツテックの基本的な要素の1つです。当然ですが、スポーツは観るだけでなく、参加するものでもあります。もちろんこれには、プロなどのように本格的に取り組んでいる者から、趣味や健康などのために行うアマチュアまで含まれます。スポーツテックでは、これら全てのスポーツをする人のために、最新テクノロジーを活用したグッズやトレーニング法などの開発によって、その体験をより良いものにすることを目指しています。
創る
スポーツテックの4要素、最後に紹介するのは、「創る」です。これは「する」と似た要素ですが、微妙に違うものとして区別されています。従来の定義に収まらないようなスポーツや種目の創出を可能とするソリューションに着目している点が特徴です。例えば、最新のテクノロジーを駆使した身体拡張によるスポーツといったものが、この要素に含まれます。また、e-スポーツにおける対戦映像の配信やデバイスの開発といった環境づくりも、「創る」の一環であると言えます。
国内・国外のスポーツテック事例一覧
ここまでスポーツテックの意味や基本要素について見てきましたが、具体的な事例についても知りたいところです。前述のように、スポーツテックは現在世界的に注目度が急上昇しており、日本でも活用例が増えています。以下の項目では、国内における事例と海外における事例のそれぞれについて、いくつか具体的なケースを挙げて見ました。
日本国内の事例
アシックスの「EVORIDE ORPHE」
日本国内のスポーツテック事例、最初に挙げるのは、アシックスのスマートシューズ「EVORIDE ORPHE(エボライド オルフェ)」です。このシューズを履いて走ると、ランニング中の足の動きがデータ化され、個々の走り方の特徴を可視化できるようになっています。内部にはセンサーが埋め込まれており、専用アプリと連携することで、一歩ごとに走りのデータが取得されます。それによって得られたデータを分析し、項目ごとに評価するほか、改善点についてのアドバイスや、おすすめトレーニングメニューの提示もしてくれるようになっています。
https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/running/evorideorphe
富士通のAIコーチングシステム
国内スポーツテック事例、2例目は、富士通のバスケチームが行っているAIを使ったコーチングです。富士通の女子バスケチーム「レッドウェーブ」の練習体育館の天井には、8台のカメラが設置されており、AIとの連動で各選手の動きを認識・記録します。それらをコンピュータで解析することで、シュートの成功・失敗を分布図で表示したり、選手ごとの得意なシュート位置、苦手なシュート位置の分析などを行うことができます。現在システムの精度を高めている段階で、将来的には外部販売も検討されています。
KDDIとアクロディアの「アスリーテックラボ」
KDDIとKDDI総合研究所は、IoT製品の開発を手がけるアクロディアとともに、「アスリーテックラボ」の提供を行っています。こちらは専用のボールを使った、ピッチャーの投球パフォーマンスについての解析サービスになります。センサーが内臓されたボールを投げ、それをスマートフォンで撮影することで、映像から全身65ヵ所の骨格点の抽出を行い、投球フォームを解析する仕組みとなっています。それにより、スマホの画面上でフォーム改善のアドバイスが見られるほか、同世代と比較した投球偏差値の診断も受けられます。
KDDIと横浜DeNAベイスターズの「バーチャルハマスタ」
スポーツテックの国内事例、続いて紹介するのは、横浜DeNAベイスターズとKDDIによるVRイベント「バーチャルハマスタ」です。こちらは、VR空間上に構築された仮想の「横浜スタジアム」の中で、実際の試合観戦の雰囲気が味わえるサービスとなっています。ユーザーは専用アプリを使い、スマートフォンやVRデバイスからイベントに参加します。試合を見ることはもちろん、オリジナルのアバターで「バーチャルハマスタ」内を歩き回ったり、他のファンとコミュニケーションを楽しむことなども可能です。
ventusの「whooop!」
国内のスポーツテック事例、最後に紹介するのは、株式会社ventusの電子トレカ売買サービス「whooop!」です。こちらは、オンライン上でアスリートやスポーツチームがトレーディングカードを発行し、それをファンが購入してコレクションするというサービスになります。アスリートやチームは、それによって資金を得ることができ、一方ファンは、カードの購入を通じて好きな選手やチームを支援することができます。また、コレクション状況に応じたチームごとの「ファンランキング」も発表されるので、自らの「ファン度」を示せるという楽しみもあります。
海外の事例
FORMの「Form Swim Goggles」
ここからは海外のスポーツテック事例ですが、最初に紹介するのは、カナダのスタートアップFORM社による「Form Swim Goggles」です。こちらは、ARディスプレイを内臓したハイテク水泳ゴーグルになります。ゴーグルの視野に、泳いだ距離やタイムなどの情報が映し出される仕組みとなっており、選手は泳ぎながらリアルタイムで正確な情報を知ることができます。また、専用アプリを使用すれば、ゴーグルに記録された情報の分析も行えるので、パフォーマンスの向上に役立てることができます。
Briziの「BriziCam」
Briziもまた、カナダのスポーツテック企業で、「BriziCam」のサービスを提供しています。こちらは「みる」の要素にあたるスポーツテックで、スタジアム内に設置したカメラを使って、好きな写真が撮れるサービスとなっています。ユーザーはスマートフォンからの操作でスタジアム内カメラを動かし、自分を撮影することができるので、わざわざ自撮りしたり撮影を他人に頼む必要がありません。そのほかにも、定点カメラによる他視点からのリアルタイム試合映像の提供といった機能もあります。
Advanced Sport Instrumentsの「FieldWiz」
続いての海外スポーツテック事例は、スイスのスタートアップAdvanced Sport Instruments社が開発した、「FieldWiz」です。こちらはGPSの技術によって、選手の心拍数や走行距離、スピードといったパフォーマンスデータの測定ができるスポーツテックになります。サッカーや野球、ラグビーといった競技でのコーチングに活用されています。GPSによる選手分析は、従来資金力の豊富なチーム・選手の独壇場でしたが、こちらは比較的ローコストでの導入が可能なことから、幅広い層に利用が広がっています。
https://sport-science.jp/products/detail/16650/
Beijing Calories Technologyの「keep」
海外スポーツテック事例、4つ目に紹介するのは、中国のBeijing Calories Technology社が開発したワークアウトアプリ「keep」です。こちらは、フィットネスを日常的に楽しんでもらうことを目的に開発されたアプリで、フィットネスに関連するコンテンツや商品販売、健康情報の配信などを行っています。プロのトレーナーによるビデオチュートリアルが多数収録されており、自分に合ったトレーニングを選べる上に、運動記録の共有も可能なので、仲間と励まし合いながらトレーニングを行えるようになっています。
Miroの「Miro Ai」
海外におけるスポーツテック事例、最後に紹介するのは、香港のスタートアップ企業Miroの開発による、「Miro Ai」です。こちらはAIを活用して、マラソンなどの陸上スポーツに関するデータの取得・分析を行うスポーツテックになります。ゴールエリアに設置されたカメラから、ゼッケンによって参加者を識別、身につけているウェアや靴のデータを取得して、画像認識AIでブランド分析を行います。分析されたデータは小売店やメーカーに提供され、マーチャンダイジングや製品開発に活用されるようになっています。またそのほかに、個々のランナーの足取りについてのデータ分析なども提供しています。
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