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フードテック(FoodTech)とは?解決できる問題や事例17選

フードテック(FoodTech)とは?解決できる問題や事例17選

地球全体を取り巻く環境がますます厳しくなる中、食に関して解決すべき問題は、世界的に山積みとなっています。そうした状況に関連して、最近よく聞かれるようになった言葉に、「フードテック(FoodTech)」というものがあります。
メディアなどで取り上げられる機会も増えていますが、実のところ、詳しいことについては良く知らないという人も多いでしょう。

本記事では、「フードテック」の意味とそれによる解決が期待される問題、さらに具体的な事例の一覧についても紹介していますので、理解の参考にしてみてください。

フードテック(FoodTech)の意味とは?

「フードテック(FoodTech)とは、「Food」と「Technology」の2語の組み合わせから成る造語です。「Food」は周知の通り「食料」ですが、この場合の「Technology」は、「ITなどの先端技術」を意味しています。簡単に言えば、「フードテック=先端技術を用いて食の可能性を広げていくこと」であり、フードテックの活用により、従来にはない食品の開発や、調理法の発見が可能になるとされています。
例えば、植物性たんぱく質の代替肉を製造したり、工場で野菜を作れるようにすることなどが、フードテックにあたります。

近年は、急激な気候変動や貧困といった要因による食糧不足などの問題が危惧されていますが、フードテックはこれら問題の解決につながるとして、世界中で大きな注目を集めています。日本においても、農業従事者の減少などの課題解決に取り組むフードテック企業が増えつつあります。

フードテックで解決できる問題

食糧不足

食糧不足

フードテックが解決に役立つと期待されている問題が、上で述べたような「食糧不足」です。食糧不足の原因は1つではなく、さまざまな要因が絡みあって起こっていますが、大きなものでは「自然災害」や「貧困」が挙げられます。特に気候変動による干ばつは、現在の世界の食糧生産に大きなダメージを与えています。また人口増加もこの問題に拍車をかけており、このままだと将来的に食糧不足がより深刻化すると見られていることから、早急な対策の必要性が叫ばれています。

生産者の減少

生産者の減少

日本における食の問題として最も大きなものの1つに、「人口減少による生産者不足」がありますが、フードテックはこの解決にも役立つと期待されています。実際に、現在の日本では農業や漁業などの第一次産業従事者が減っているほか、食品製造業や外食産業の分野でも、労働力の不足が深刻化しています。この問題の解決には、食料の生産効率向上などが必須になりますが、IoTやロボット技術などのフードテックはその実現に寄与できます。

飢餓

飢餓

フードテックによる解決が期待される分野に、「飢餓問題」があります。飢餓とは慢性的な栄養不足の状態に陥ることですが、現在(2019年)世界で飢餓状態にある人の数は、6億9,000万人にのぼっています。これはその5年前と比べると、6,000人近く増えた数字で、今後も増加が続くと見られています。フードテックでは、食材を長期保存する技術の開発なども行われており、これによって飢餓問題への解決を図ろうとする動きが活発化しています。

フードロス

フードロス

飢餓と同時に世界的な問題となっているのが、「フードロス(食品ロス)」です。これは「食べられるうちに廃棄される食料」のことで、過剰生産や外観品質基準などが原因で起こります。日本は世界でも有数のフードロス大国として知られており、年間で約2,500万トン発生する食料廃棄物のうち、600万トンほどがまだ食べられる食料にあたります(平成30年度)。フードテックは、食品の無駄な生産や廃棄を無くしてフードロス削減に役立つと期待されています。

菜食主義者に向けた代替品

菜食主義者に向けた代替品

世界には、肉や魚を好んで食べる人たちがいる一方で、菜食主義を貫く人たちも大勢います。こうした人々の動機は、宗教上の理由や動物愛護、体質の問題とさまざまですが、近年は環境保護や健康上の理由から、ベジタリアンやヴィーガン(完全菜食主義者)になる人も増えています。こうした人々は、肉や魚を口にしないとはいえ、体のためにはたんぱく質は欠かせません。そこで代替肉(植物性たんぱく質で作られたもの)を製造するフードテックが注目を集めています。

食の安全

食の安全

食の安全に対する社会的関心は、非常に高くなっています。現在は食品に関する衛生基準が定まっているとはいえ、食中毒などの問題は、あちこちで頻繁に発生しています。傷んだ食品や異物が混じった食材を食べるリスクを避け、食の安全性を確保することが重要な課題ですが、これについてもフードテックによる解決が期待できます。食材を長期保存できるパッケージや、異物の混入を防ぐ仕組みなどの開発が、最新テクノロジーを駆使することで可能になります。

フードテックの事例一覧

一口に「フードテック」と言っても、それがカバーする領域は多岐に渡ります。食材の栽培や養殖、製造といった分野だけでなく、流通や保存、調理や実際の食事などの各場面で、フードテックが活用されています。

ここでは、それらの各分野におけるフードテックの具体的な活用事例を、一覧にまとめて紹介していきましょう。

調理

ものを食べるには、食材を切ったり焼いたりする調理の過程が欠かせませんが、この分野においてもフードテックの導入が進んでいます。調理分野におけるフードテックでは、身近な家電の例だと、スマートフォンと連携させたオーブン(レシピ検索などが可能)などがあります。さらに、ロボット技術を用いて自動で調理を行う機器なども、続々と登場しています。また、分子レベルで調理自体を分析・研究する「分子ガストロノミー」なども、フードテックでは進められています。

ギフモ株式会社のデリソフター

ギフモ株式会社のデリソフター

「ギフモ株式会社」が手がけるフードテックを用いた「デリソフター」は、見た目は食材の形を保ったまま、料理全体をやわらかくできる調理器具です。噛む力や嚥下能力が弱った人でも、ミキサーを使わず料理を味わうことができるため、手間や費用の削減はもちろん、食事の楽しみも維持できるようになっています。

https://gifmo.co.jp/delisofter/

TechMagic株式会社の調理ロボット

TechMagic株式会社の調理ロボット

フードテック企業の「TechMagic」は、AIの機械学習とロボティクスを活用した調理ロボット・業務ロボットの開発を行っています。これらのロボットの導入により、飲食店は全コストのうち高い割合を占める人件費や材料費の削減が見込めます。

https://techmagic.co.jp/

農業、生産

フードテックの事例一覧、続いて紹介するのは、「農業や生産の分野」です。これらの分野でもフードテックの活用が進んでいますが、この場合は「スマート農業」や「アグリテック」といった呼び方がされます。ICT、IoTといった情報通信技術を現場で積極的に活用していくことで、より効率的な食料生産が可能となります。気候や天候の影響を極力少なくすることで、農業従事者の収入安定化が図れますし、生産過程の自動化により、就農者の減少といった課題も解決しやすくなります。

株式会社FRDジャパンの陸上養殖

株式会社FRDジャパンの陸上養殖

「FRDジャパン」は、「閉鎖循環式陸上養殖」という技術の研究・開発を行っているフードテック企業です。世界的に水産物消費が伸びる中、天然漁獲量の頭打ちや海面養殖の急拡大という問題に直面していますが、この技術で「海に依存しない養殖」の実現を目指しています。

https://frd-j.com/

株式会社ファームノートのクラウド牛群管理システム

「ファームノート」は、クラウド牛群管理システム「Farmnote Cloud」などの提供を行っているフードテック企業です。こちらのサービスは牛の個体情報を自動的に整理でき、スマートフォンやタブレットなどの端末を使って、発情予定日を過ぎた牛の検索などができるようになっています。

https://farmnote.jp/

テザミス株式会社の「U-motion」

テザミス株式会社の「U-motion」

「テザミス」は、農業の問題に対しIoTソリューションによる解決を目指すフードテック企業です。提供しているのは「U-motion」という牛の行動モニタリングシステムで、牛に装着したIoTデバイスによってデータを収集・分析することで、発情徴候などを的確に見きわめられるようになっています。

https://www.desamis.co.jp/

ベジタリア株式会社のスマート農業

ベジタリア株式会社のスマート農業

「ベジタリア」は、最新の植物科学やテクノロジーを駆使して、「経験と勘による農業」からの脱却を目指すフードテック企業です。農業環境センサを用いたデータ分析や、スマートフォンによる営農管理といったサービスを提供しています。

https://www.vegetalia.co.jp/

流通、配送

フードテックが活かされる分野は、生産現場や調理などに限りません。流通や配送の場面においても、最新のテクノロジーが活用されています。食材の種類によっては、鮮度の維持が難しいものもありますが、AIやICTといったフードテックを活用することで、この問題を解決できます。また、小売店などが求める食品を、必要な分量だけ的確かつ効率的に流通させる技術やシステムも、フードロスを削減させるフードテックとして注目されています。

デイブレイク株式会社の特殊冷凍技術

デイブレイク株式会社の特殊冷凍技術

「デイブレク」は、独自の特殊冷凍テクノロジーによって、生産者や食品加工業者の抱える問題の解決を目指しているフードテック企業です。冷凍機の販売業者として長年培ってきた特殊冷凍技術により、食品廃棄の削減や衛生管理の徹底といった価値の提供を行っています。

https://www.d-break.co.jp/

八面六臂株式会社のECモール

八面六臂株式会社のECモール

「八面六臂」は、さまざまな食材を取り扱うECモールを展開しているフードテック企業です。中央卸売市場経由の仕入のほか、全国各地の産地市場などの独自仕入も組み合わせることにより、既存の流通業者には見られない多彩な品ぞろえを実現しています。

https://hachimenroppi.com/

ワイド・アフタヌーン社の「Ovie」

ワイド・アフタヌーン社の「Ovie」

ワイド・アフタヌーン社はアメリカのフードテック企業で、スマートタグの「Ovie」を開発・販売しています。まずIoTタグと食材を関連付けてスマホアプリに登録し、それを専用の容器などに付けて冷蔵庫に入れておきます。すると、消費期限が近づいたらタグが光って知らせてくれるという仕組みです。

https://ovie.life/

外食・中食

続いてのフードテックの活用事例一覧は、「外食・中食分野」です。近年は長引く不況やコロナ禍などの影響もあり、外食の需要はどんどん減る傾向にあります。その反面需要を伸ばしつつあるのが、調理済みの料理を自宅に持ち帰って食べる「中食(なかしょく)」の形態です。このような状況下でもフードテックの活用が進んでおり、スマホアプリを使った「モバイルオーダー」や、食材キットの宅配といったサービスが注目を集めるようになっています。

株式会社Showcase Gigの「オーダーテーブル」

株式会社Showcase Gigの「オーダーテーブル」

「Showcase Gig(ショーケース・ギグ)」が提供しているモバイルオーダープラットフォーム「オーダーテーブル」は、注文から決済までをスマホアプリ上で完了できるサービスです。お店側には客単価アップなどのメリットが、ユーザー側には注文しやすいなどのメリットがあります。

https://business.oderapp.jp/

Uber Eatsによるフードデリバリー

Uber Eatsによるフードデリバリー

「Uber Eats(ウーバーイーツ)」は、フードテック企業の代表格とも言える存在で、Webサイトやアプリから料理を注文し、自宅まで届けてくれるサービスを展開しています。自宅での食事はもちろん、従業員への食事の提供などにも使えます。

https://www.ubereats.com/jp

株式会社RYM&Co.の「ポットラック」

株式会社RYM&Co.の「ポットラック」

「RYM&Co.」が運営する「POTLUOCK(ポットラック)」は、定額制のテイクアウトアプリです。1日2回までの注文が可能で、事前予約をすると、飲食店ですぐに料理を受け取ることができます。そのため、ランチタイムなどの忙しい時間帯には便利なサービスとなっています。

https://www.pot-luck.jp/

代替食品

フードテックの活用が進んでいる分野の1つに、「代替食品」があります。先にも挙げたような植物性の代替肉のほか、バッタやコオロギなどを食料として利用する昆虫食も、フードテックの研究領域に含まれます。こうした食品は、「次世代食品領域」とも呼ばれており、ベジタリアンやヴィーガンの代用食として用いられるだけでなく、将来的には生産が困難になると予測される、牛肉など本物の肉の代用品としても通用すると考えられています。

マルコメ株式会社の「ダイズラボ」

マルコメ株式会社の「ダイズラボ」

「マルコメ」は味噌などで知られる食品メーカーですが、フードテック企業として、代替肉「ダイズラボ」シリーズの展開も行っています。これは大豆を原料として作られた肉で、惣菜の素やレトルトタイプ、乾燥タイプなどの種類があり、味のバリエーションも豊富となっています。

https://www.marukome.co.jp/daizu_labo/

無印良品の「コオロギせんべい」

無印良品の「コオロギせんべい」

「良品計画」はブランド「無印良品」の展開で有名ですが、フードテック企業としての一面も持っています。無印良品が販売している「コオロギせんべい」は、たんぱく質を豊富に含むだけでなく、生産時の環境負荷が非常に少ないという特徴があります。

https://www.muji.com/jp/ja/feature/food/460936

健康、体質に合わせた食品

フードテックの活用事例一覧、最後に紹介するのは、「健康や体質に合わせた食品」の分野です。こちらも研究が活発な分野であり、フードテックを用いて身体が必要とする栄養素を多く含んだ健康食品の開発や、一回の食事で不足しがちな栄養も補える食品の開発などが行われています。こうした食品は、忙しい社会人などにとって役立つとともに、災害時の栄養補給の面でも役立つと期待されています。このほか、個人の体質や健康状態等に合わせたレシピの提案を行ってくれるサービスなども登場しています。

ベースフード株式会社の「ベースフード」

ベースフード株式会社の「ベースフード」

「ベースフード」は、栄養食品の「BASE FOOD(ベースフード)」を販売しているフードテック企業です。麺やパンの生地にたんぱく質やミネラルなど約30種類もの栄養素が配合されており、1食で1日に必要な栄養素の1/3が摂取可能となっています。

https://basefood.co.jp/

株式会社COMPの「COMP」

株式会社COMPの「COMP」

「COMP」は、「株式会社COMP」が販売しているバランス栄養食です。独自のフードテックを用いて、人の健康に不可欠な必須栄養素がバランスよく配合されており、忙しい時や食の細い時でも、素早く十分な栄養補給が可能となっています。

URL:https://www.comp.jp/index.html

ドリコス株式会社の「ヘルスサーバー」

ドリコス株式会社の「ヘルスサーバー」

世界初のオーダーメイドサプリメントサーバー「healthServer(ヘルスサーバー)」は、身体に足りない栄養素を、過不足なく作ってくれるという機器です。医学博士と管理栄養士の監修による独自のフードテックにより、ユーザーに必要な栄養素を自動で計算し、その場でサプリメントの抽出と提供を行ってくれるようになっています。

https://healthserver.jp/

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