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人口オーナスとは?人口ボーナスとの違いや該当国4選

人口オーナスとは?人口ボーナスとの違いや該当国4選

日本社会の今後を占う際、避けて通れない話題が「少子高齢化」ですが、それに付随して「人口オーナス」という言葉がよく取り沙汰されるようになっています。しかし、言葉自体は聞いたことはあっても、具体的に何を意味するのかはよく分からないという人も多いでしょう。また、よく似た「人口ボーナス」との違いも分かりづらいところです。

本記事では、「人口オーナス」の意味や「人口ボーナス」との違い、「人口オーナス」の具体例などについて解説していきますので、理解の参考にしてみてください。

人口オーナスの意味と人口ボーナスとの違い

人口オーナスとは

「人口オーナス」とは、国の総人口に占める高齢者や子供の人口割合が高く、経済成長の阻害要因となっている状態を指す言葉です。「オーナス(onus)」は、英語で「重荷・負担」を意味します。

人口オーナスは、高齢者や子供の人口割合に比べ、生産年齢人口(労働力人口)が相対的に少なくなることで起こります。働き手の減少は、消費の低迷や国民1人当たりの社会保障負担の増加を招き、経済や社会にとって不利益な状況が続くことになります。
一方「人口ボーナス」はこれとは違い、働き手の割合が相対的に高い状態を指します。

日本では、1990年代の半ばから人口オーナス期に入ったとされています。

対義語:人口ボーナスとの違い

「人口オーナス」と対で使われることも多い「人口ボーナス」という言葉ですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

「人口ボーナス」とは、「子供と高齢者の人口割合に比べて、労働力人口が相対的に多い状態」を意味する言葉です。「ボーナス(bonus:賞与、報償)」と付いているのは、経済成長の促進要因となることによります。

人口ボーナスは人口オーナスとは逆に、働き手の割合が多くなることで、消費の拡大や1人当たりの社会保障負担低下をもたらします。そのことにより、上記のように経済成長を促す要因になるとされています。日本では、第二次大戦後の高度経済成長期から1990年代初頭までが、人口ボーナス期にあたると言われています。

人口オーナスによる悪影響

「人口オーナス」と呼ばれる状況は、その国の社会や経済にとって好ましくない影響を与えます。その多くは日本でもすでになじみのある現象ですが、ここでは人口オーナスによってもたらされる悪影響の例を、いくつか紹介していきましょう。

経済成長を阻害する

人口オーナスの一番の悪影響としては、「経済成長の阻害」が挙げられます。

上記のように、人口オーナスは、労働力人口の割合が子供や高齢者に比べて少なくなる状態を表します。「労働力人口」とは、15歳~64歳の働く意志と能力を持つ人口層のことですが、実際に生産の主体となる層が減ることで、消費は落ち込み、国内総生産(GDP)の停滞や低減を招くことになります。また、相対的に増えた高齢者層の多くが貯金を切り崩して生活することにより、社会全体の富が減少しやすくなるというデメリットもあります。

社会保障制度を維持しにくくなる

人口オーナスの状態が続くと、社会保障制度の維持も次第に困難になっていきます。

労働力人口の減少と高齢者の増加は、必然的に年金などの社会保障にも影響を与えます。日本の年金制度は、高齢者が受け取る分の年金を現役の労働者が負担する仕組み(賦課方式)ですから、労働力人口が相対的に減れば、その分1人当たりの負担額は増加することになります。

実際に、1950年には12.1人の現役労働者で1人の高齢者を支えていたのに対し、2019年3月1日時点では2.1人で1人を支える状況となっており、今後もさらに負担は増し続けると予測されています。

労働環境の悪化

人口オーナスの状況は、労働環境に対しても悪い影響を与えます。

労働力人口が減少することによって、各業界では人手不足が慢性化することとなります。必要な業務がこなしづらい状態となり、結果として不足分を埋めるために、長時間労働を強いられるケースが増えてきます。これにより、過労死や精神障害などの問題も懸念されることになります。

また、労働時間が増えることで子育てに費やす時間が減り、少子化と労働力人口の減少がさらに加速するという悪循環に陥るおそれもあります。

人口オーナスが進む国

上記のように、日本はすでに1990年代から人口オーナス期に突入していますが、世界には他にもそうした国がいくつか見られます。以下の項目では、現在人口オーナスが進行中と見られる国について、4つ例を挙げて紹介していきましょう。

イギリス

まずはイギリスですが、イギリスの人口ボーナス期は2010年に終了し、その後は人口オーナスの状況に入っていると見られています。ただしその進行具合は、日本と比較するとわりあい緩やかです。2000年に1.69まで低下した出生率も、近年は1.9台で推移するなど、回復傾向にあります。

労働人口/従属人口(15歳以上と65歳以上の人口の合計)の比率で見ても、イギリスは日本より高い数値を維持しています。ちなみに人口ボーナスは、「労働人口/従属人口の数値が増加している期間」と定義される場合もあります。

ドイツ

続いてはドイツです。ドイツの人口ボーナス期は、日本と同様に、1990年代に終了しています。

その後は一貫して人口オーナスの状況となっていますが、やはり日本との比較で言うと、人口動態はそこまで悪くありません。労働人口/従属人口の数値も、日本より高くなっています。これには、移民を労働力として受け入れているという事情も関係しています。

ただ、今後はやはり厳しい状況が加速すると見られることから、高学歴の移民受け入れを増加させる姿勢を示しています。

フランス

フランスも他のヨーロッパ先進国と同様に、人口オーナスの状況にあります。

フランスの人口ボーナス期の終了は、日本やドイツと同じ1990年代です。ただ、フランスでも少子高齢化が進んでいることは事実ですが、出生率で見ると、1.88(2018年)と比較的高水準を維持しています。日本の場合1.34(2020年)なので、差は明らかです。

また労働人口/従属人口の数値においても、やはり移民を受け入れていることもあって、日本よりは高めとなっています。

中国

2020年現在で人口が14億人を超す中国ですが、最近人口オーナスに移行したという見方が出ています。

中国の人口ボーナスが終わったと見られる時期は、2010年です。出生数や労働力人口の低下はここ最近特に顕著となっており、2020年の出生率は1.3と、建国以来最低を記録しました。政府は最近「3人っ子政策」の実施を発表しましたが、今後もこの傾向は加速すると見られています。

労働人口/従属人口の数値も、2010年~2050年の40年間で半減する見込みです。

人口オーナスとは?人口ボーナスとの違いや該当国4選

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