社会人のためのビジネス情報マガジン

  • フェイスブック
  • ツイッター
  • RSS

ビジネス知識

EU(欧州連合)の意味とは?加盟の8つのメリットと6つのデメリット

EU(欧州連合)の意味とは?加盟のメリット・デメリット

現在の世界において、アメリカや中国などと共に大きな存在感を発揮しているのが、EU(欧州連合)です。EUは単体の国ではないものの、巨大な地域統合体として大きな影響力を持ち、世界の政治・経済などの分野で重要な役割を果たしています。

そんなEUも、近年ブレグジットと呼ばれるイギリスの離脱問題を契機として、さまざまな課題が表面化するようになりました。これから先EUがどうなっていくかは、日本を含めた世界中の関心事となっています。
その一方で、EUの詳しい実態については、それほど知られていない面が多いのも実情です。
一体、EUとはどんな組織で、どのような目的を持っているのでしょうか。

ここではEUの成り立ちや歴史、加盟のメリット・デメリットについて紹介していきたいと思います。
また、現在EUには27の国が加盟していますが、加盟国については「EU加盟国一覧(27ヶ国)」にて一覧でご紹介していますので、時間がある方はこちらも確認してみてください。

EU(欧州連合)の意味とは

EU(欧州連合)とはどんな組織で、どういった経緯を経て作られたのでしょうか。また、その意図するところなども知りたいところです。
そこでまずは、EUの意味合いや歴史などについて触れておきましょう。

EU(欧州連合)の意味とは

EU(欧州連合)の意味とは

そもそも「EU」とは、「European Union」を略した言葉です。日本語での意味は「ヨーロッパ(欧州)連合」で、簡単に言うならば、「ヨーロッパの各国が集まって形作られた地域共同体」になります。
1993年に12ヵ国からスタートした後、現在は27ヵ国が参加しています。

EUの目的は、ヨーロッパ諸国が経済や社会、政治などの各分野で1つにまとまることにあります。
各国はそれまで通り独立して存在しますが、加盟国で共通して使える通貨を設けたり、人の移動の制限を極力なくすなど、ヨーロッパを1つの国のように扱う措置が取られています。

設立の背景には、アメリカとソ連(ロシア)という2つの大国に挟まれたことで、ヨーロッパ諸国が強い危機感を感じたことが影響しています。

EUの歴史

EUの歴史

「ヨーロッパを1つにする」という構想を打ち出した人物には、カントなどの思想家がいますが、中でも大きな影響を与えたのが、クーデンホーフ・カレルギー伯です。彼は1923年、第一次大戦の傷跡が深かった当時に、平和的なヨーロッパ統合を打ち出して希望を与えました。

その後もう1つの大戦を経たヨーロッパは、さらに2つの超大国に挟まれる事態となり、再び欧州諸国での団結が叫ばれるようになります。1952年には、独仏間の関係安定のために「ECSC(欧州石炭共同体)」が作られ、さらに1958年には、「EURATOM(欧州原子力共同体)」「EEC(欧州経済共同体)」の2団体が作られます。
これらを母体として、1967年に「EC(欧州共同体)」が設立、そして1993年11月にマーストリヒト条約が発効され、正式にEUが発足することとなりました。

EUに加盟するメリット

EUは1993年に発足して以来、基本的に拡大を続けてきました。
ECが始まった当時は6ヵ国だったものが、2013年のクロアチア加盟により、最大で28ヵ国にまで増えています。
イギリス離脱により現在は27ヵ国となっていますが、離脱よりも加盟を望む国の方が多いのが実状です。それは、EU加盟により数々のメリットがあることによります。

では、EUの加盟国が得られるメリットとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。ここではその点について見ていきましょう。

平和の実現

平和の実現

EU設立の背景には、前述のように戦争が大きく関係しています。

2度の大戦を経たヨーロッパは、大きく傷つきました。隣り合う国同士の激しい戦争は、互いの国力を大きく削ぎ、代わってアメリカやロシアなどの台頭を許すこととなります。
それ以前からも戦争が絶えなかったヨーロッパにとって、安定した関係性を築くことは長年の悲願でしたが、第二次大戦後にこの機運が大きく高まります。
その後いくつかの段階を経てEUが発足したことにより、その理想の実現に一歩近づきました。

EU設立によってヨーロッパは一体感を増し、必ずしも完全ではないものの、一定の平和を享受できるようになっています。EU加盟の大きなメリットとしては、こうした平和や共存の実現という点が挙げられるでしょう。

パスポートなしで国を移動できる

パスポートなしで国を移動できる

EU加盟のメリットとして2つ目に挙げられるのが、「自由な移動」という点です。

通常、人が国境を超えて移動する場合には、多くのチェックが必要になります。
例えばパスポートやビザの確認で、これは安全などの観点から、世界中ほとんどの国で必要とされています。

しかし、EU加盟国の多くでは、こうしたパスポートの提示などが求められません。
これは、「シェンゲン協定」という協定に基づいた権利になります。シェンゲン協定は、EU間のより自由な移動を目指して作られたもので、入国手続きが簡素化されているのが特徴です。
ただし、EU加盟国でもシェンゲン協定に加盟していない国(ルーマニアやブルガリアなど)があり、そこでは入国の際にパスポートやビザの提示などが必要となります。

共通通貨であるユーロの使用

共通通貨であるユーロの使用

EU加盟のもう1つのメリットとして、共通通貨である「ユーロ」が使用できるという点があります。

ユーロを使用することにより、国境を超えた決済などの手続きが簡単になり、加盟国間の経済の活性化につながります。

欧州単一通貨の構想は1960年代からありましたが、その背景には、ヨーロッパ諸国内でのヒト・モノ・金の流通をより活発化させたいという機運の高まりがありました。そうした流れを受け、1992年に締結されたマーストリヒト条約により、欧州単一通貨としてのユーロ導入が決定されます。1999年に決済用仮想通貨としてスタートしたユーロは、2002年1月から現金通貨として使われるようになりました。
現在ユーロを導入している国は、EU加盟国のうち19ヵ国で、それらを指して「ユーロ圏」と呼んでいます。

加盟国による協力で大国と渡り合える

加盟国による協力で大国と渡り合える

EU加盟のメリットとしては、大国としての立場が獲得できるという点も挙げられるでしょう。

ヨーロッパは古い歴史と豊かな経済力を持つ地域ではあるものの、国単位で見れば、世界に対する影響力はかつてほどではなくなってるのが実情です。特に2つの世界大戦を経た後は、前述のようにその力の大部分が削がれてしまい、経済力でも外交力でも、アメリカとソ連(ロシア)の2大国に大きく水をあけられる結果となりました。
EU発足の背景に、この2国に対抗する意図があったのは、先に述べた通りです。

つまり、EUはアメリカなどの大国と並ぶような経済・外交における力を得ることを目的とした組織であり、個々の国では無理でも、諸国がまとまることで大国としての地位が得られるというメリットがあるわけです。

科学や技術の発展

科学や技術の発展

EU加盟のメリット、5点目に挙げるのは、「科学や技術の発展に貢献できる」という点です。

科学技術が現代社会で最も大きな重要性を持つ分野というのは、論をまたないところでしょう。科学の発展は、経済や軍事だけでなく、日常生活にまで大きな影響を及ぼします。
しかしながら、現在科学技術の研究で突出しているのはアメリカと中国であり、ヨーロッパの各国は、例えドイツやフランスであっても単独ではこれら大国に太刀打ちできないのが現状です。EUが設立されたのには、この面を強化しようという意図も含まれています。

実際に、EU設立以前から「欧州原子力共同体」や「CERN(欧州原子核研究機構)」のような共同プロジェクトがいくつも進められており、ヨーロッパ全体では多くの研究成果が生まれています。

軍事力強化

軍事力強化

EUのメリット、次に挙げるのは、軍事力についてです。

他国に対する防衛力をどれだけ高められるかは、ほとんどの国家において、古くからの最も大事な命題の1つでした。特にヨーロッパは、歴史的に戦争が絶え間なく続いていたこともあり、軍事力についての意識は非常に高いものがありました。
第二次大戦後はソ連が大きく台頭したことにより、その意識が東側諸国に向けられることになります。ヨーロッパはこれに対し、「NATO(北大西洋条約機構)」に加盟することで対抗してきましたが、これはアメリカの影響が非常に強いものでした。
しかし、アメリカとEUは必ずしも一枚岩ではないという現状もあり、EUで独自にヨーロッパを防衛しようという動きも生まれています。
つまりEUに加盟することは、このように軍事力強化という側面も強く含んでいます。

経済発展

経済発展

EU加盟のメリットで最も大きいものの1つに、「経済への好影響」があります。

もともとEU設立の目的には、ヨーロッパ域内の経済を活性化させることが大きく掲げられていました。ユーロの導入はその施策の1つですが、もう1つ「関税の撤廃」というものも関係しています。
これは、EU圏内における輸出入には関税を課さないという制度です。
関税とは物が国境などを超える時に割り当てられる税金で、一般的に外国から輸入される貨物に対しては、これが課されるようになっています。それに対し、EUではこれを無くすことにより、ヨーロッパ全体の貿易を活性化しようとしました。

実際に、EU発足後隣国への貿易は大幅に増加し、近年加盟した国は、加盟前に比べてGDPが112%に伸びたという研究結果も出ています。

インフラの整備

インフラの整備

EU加盟のメリットとしては、「インフラなどの整備ができる」という点も見逃せません。

ヨーロッパといえば、先進国が多くインフラ整備も進んでいるという印象がありますが、実際にはそうした国ばかりではありません。ドイツやフランスのようにしっかりした経済基盤がなく、いまだに交通や通信などのインフラがきちんと整備されていない国も多くあります。こうした国々は、単独でそれらの整備を進めることは難しいのが実情ですが、EUに加盟することにより、状況に応じて補助金などの支援を受けることが可能になります。

EUには「TEN」と呼ばれる全欧規模のインフラ整備計画があり、条件に適合すると認められた事業に対しては、EU予算から補助金を拠出したり、欧州投資銀行から低金利で融資を行うようになっています。

EUに加盟するデメリット

上ではEUに加盟するメリットについて見ましたが、もちろん良いことばかりではありません。EU加盟には、デメリットもあります。
特に最近は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)などの問題を契機としてそうしたデメリットの側面がクローズアップされるようになり、EUの抱える問題点が浮き彫りとなってきています。

では、EU加盟のデメリットには具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
ここではその点について、考えられるものをいくつかピックアップして紹介していきましょう。

金融政策が行いにくくなる

金融政策が行いにくくなる

EUに加盟するメリットとして、上では共通通貨ユーロの導入を挙げました。ユーロ圏に入ることで、前述のように為替の取引コストがなくなり、経済が活性化するという利点があります。しかしその一方で、経済の独立性が失われるというデメリットもあります。

ユーロは欧州全体の経済を考えて作られた通貨で、一国の事情だけを優先することはありません。事実、ユーロ圏諸国は参加と引き換えに、金融政策を「欧州中央銀行(ECB)」にゆだねることになります。
財政政策の裁量は各国にありますが、ユーロ導入国には、個別の過剰な財政出動を抑えるための財政目標が課せられています。そのため、どこかの国が自国の経済問題への対処のために独自の金融政策を取ろうとしても、対応策は限られてしまうという問題があります。

EU加盟国で決まったことに従う必要がある

EU加盟国で決まったことに従う必要がある

EU加盟のデメリットとして、「自国の意見が通りにくい」ということもあります。
上の項目では、ユーロ加盟国は基本的に欧州中央銀行に従わなくてはならないと述べましたが、そうした制限は金融政策に限りません。EUは、全体の政策の立案や法律の制定を行うための、いくつかの機関から成っています。

その中でも最も重要なものの1つが、「欧州議会」です。
「欧州議会」は加盟国すべてから直接選挙で選ばれた議員で構成され、EUのほとんどの政策分野の法案を、「欧州理事会」と共同で決定する役割を担います。ただ、その決定にはEU各国が参加するものの、実際には大国の思惑が強く働いているのが実情です。その他の弱小国の意見は通りにくくなっていますし、決まったことに対しては、それが意に沿わない決定でも従わなくてはならないという側面があります。

移民の受け入れ

移民の受け入れ

EU加盟のデメリット、3点目は「移民問題」です。

移民の発生は以前からある問題ですが、近年はその深刻さが一層増しており、ヨーロッパは特にその問題に大きく直面しています。
これは中東での戦闘が劇化したことで、戦火を逃れようとした難民が次々に欧州を目指して移動してくるようになったためです。
2015年以降はこの動きが激しくなり、「難民危機」とまで呼ばれる事態に発展、EU各国は対応に頭を悩ませています。一部の国は移民を積極的に受け入れていますが、急激な増加によってさまざまな社会問題が起きているのが実情です。また難民の玄関となるEU加盟国でも、大量に押し寄せる難民に対処しきれず、パニックとなっています。

EUは現在も対応を協議していますが、未だに有効な対策は見いだせていません。

透明性が低い

透明性が低い

EU加盟のデメリットとして挙げられることの1つに、「意思決定における透明性のなさ」があります。これは、「欧州議会」について言われることの多い批判です。

「欧州議会」については前にも述べましたが、加盟国の中から直接選挙で議員を選び、EUの政策についての法案を決定するという機関になります。EUの中では、唯一市民が直接選ぶことのできる機関ですが、近年は投票率の低下が目立つようになっています。
これは、先に述べたように、人々の「欧州議会」に対する不信が強まったことが影響しています。自分たちの一票が、EUの意思決定に直接関係しないのではないかという疑念が大きくなった結果、2014年の投票率は42%にまで低下しました。これに対し、EUも候補者の顔を見えやすくするなど、透明性を高めるための工夫を模索しています。

地域間の格差が大きい

地域間の格差が大きい

EUに加盟するデメリットとして、「ユーロ導入によって生じる域内の不均衡」というものも挙げられます。
ユーロの導入が、EU全体の経済を活性化したというメリットは、前述の通りです。しかし、通貨の統合によって、すべての国に利益がもたらされたわけではありません。

ユーロ相場の決定には、域内全体の経済状況が反映されます。一国の経済が好調でも、他の加盟国の経済が低迷すればユーロ安となり、結果として輸出依存度が高い国に追い風が吹くという構造があります。実際に輸出依存度の高いドイツのGDPは、ユーロ圏平均との差額(超過額)が、2017年には1999年の約1.5倍にまで拡大しています。
これに対し、フランスの超過額は99年から44%減少したほか、イタリアはマイナス額が15倍に膨らむなど、地域によって大きな格差が生じる結果となっています。

国ごとの文化の違い

国ごとの文化の違い

EU加盟のデメリット、最後に挙げるのは、「国によって言語や文化が異なる」という点です。

一口にヨーロッパと言っても、その範囲は非常に広く、域内にはさまざまな言語や文化がひしめいています。例えば隣り合うドイツやフランスでも、話される言葉や、培ってきた文化は大きく異なります。もともとEUは、こうした違いから生じる衝突を超えるために作られましたが、未だにそうした差異を完全に克服できていないのが現状です。
国や地域ごとに考え方が異なることから、全体としての統一した見解を持ちづらく、特に近年はそうした傾向が目立ってきています。
ブレグジットの問題は、EU内でのそうした不協和音の表れと見ることができるでしょう。

こうした文化などの違いと向き合う作業は、加盟国にとってかなりの労力となっています。

EU加盟国一覧(27ヶ国)

EU(欧州連合)の意味とは?加盟のメリット・デメリット

この記事が気に入ったら いいね!しよう

最新の情報をお届けします