法務・法律
「依願退職」の意味とは?使い方や例文、「諭旨退職」との違い
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「依願退職」の意味とは?使い方や例文、「辞職」「諭旨退職」との違い
退職に関連する単語の1つに、「依願退職」というものがあります。ニュースなどで耳にしたことはあるものの、その詳しい意味や使い方については、正直ピンと来ないという人も多いでしょう。
また、同じく退職に関連する単語として、「辞職」や「諭旨退職」というものがありますが、これらの違いはお分かりになりますでしょうか。
今回は、「依願退職」という言葉の意味や用法などについてお話していきます。
「依願退職」の意味、「辞職」との違い
「依願退職」とは
「依願退職(いがんたいしょく)」とは、ざっくり言うと、「従業員が会社に対して退職の意思を伝え、会社がこれを承諾することで成立する退職方法」というものです。
「依願」という漢字からも分かる通り、退職を依頼する、願う、つまり、労働者の希望に基づく退職を意味します。
様々な場面が想定されますが、キャリアアップのための転職や、結婚や介護を理由とする退職などが、この依願退職の場面と言えます。
「辞職」との違い
依願退職とよく似た退職方法として、「辞職」があります。
依願退職の場合、一方的に労働者から雇用を解消するというものではなく、退職の意思を伝え、会社がこれを承諾することにより、退職が成立します。つまり、会社が退職を承諾しなければ、退職という効果は発生しません。
他方、辞職とは、会社の意思・承諾に関わらず、労働者が一方的に雇用契約を解消するものです。会社が退職を承諾しなくとも、一定期間経過後(正社員の場合2週間)に、退職の効力が生じます。
このように、両者の違いは、「会社の承諾を要するか」という点にあります。一般的には、依願退職の場合には「退職願」(例:●月●日を以って退職させていただきたく存じます)が利用されますが、辞職では「退職届」(例:●月●日を以って退職いたします)が利用されます。
「依願退職」は「自己都合退職」の一種
退職の理由として、「自己都合退職」と「会社都合退職」の2種類があります。
このうち「自己都合退職」は、労働者側の理由による退職を意味します。
「依願退職」も「辞職」も、労働者の希望による退職であるため、基本的には自己都合退職にあたります。ただし、会社からの退職勧奨(退職を勧める行為)を受けて退職の意思を表明した場合には、原則として会社都合退職に当たります(諭旨退職の場合は後述しますが、自己都合退職となります。)。
労働者が自ら退職意思を表明した場合でも、すべて自己都合退職になるわけではないので、少し注意が必要です。
「会社都合退職」は、文字通り、「会社側の都合(理由)による退職」を意味しています。
典型的なのは、会社の倒産に伴う退職や、経営難を理由とするリストラ、解雇等です。また、上で述べた通り、会社が退職勧奨を行い、これにより退職に至った場合も、基本的には会社都合退職となります。
なお、自己都合退職か会社都合退職かにより、退職後に貰える失業保険の給付期間や、失業保険を貰えるまでの待機期間が異なります(会社都合退職の方が労働者にとって有利です)。
「依願退職」の使い方・例文
ビジネス用語としての依願退職の用法について、具体的な例文をいくつか挙げてみましたので、参考にしてみてください。
例文:「依願退職と言っても、別に会社に不満があって辞めるわけじゃない」
例文:「この会社にいても先の見込みはないから、依願退職して独立することにした」
例文:「会社からは慰留されているが、依願退職の意思は固い」
例文:「親の介護に専念するため、依願退職を選択した」
例文:「依願退職するのであれば、退職願を提出してください」
「依願退職」と「諭旨退職」の違い
最後に、依願退職と諭旨退職の違いについてお話させていただきます。
「諭旨退職」とは
「諭旨退職(ゆしたいしょく)」とは、本来なら懲戒解雇に当たるほどの問題行動を行った従業員に対し、反省が見られるなどの理由で、会社が温情措置(転職面への配慮等)として、懲戒解雇ではなく辞職を認める処分を言います。具体的には、会社が従業員に対し退職(退職届の提出)を促しますが、退職に応じない場合には懲戒解雇を行うこととなります。
「依願退職」との違い
諭旨退職に応じ辞職した場合も、依願退職の場合も、いずれも基本的には「自己都合退職」に当たるという点は共通します。
ただし、諭旨退職が「懲戒処分」の一種として行われるものであるのに対し、依願退職は、労働者の意思・希望による退職であり、両者の持つ意味は大きく異なりますので、混同しないように注意しましょう。
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