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法務・法律

「依願退職」の意味とは?使い方や例文、「諭旨退職」との違い

「依願退職」の意味とは?使い方や例文、「諭旨退職」との違い

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

「依願退職」の意味とは?使い方や例文、「辞職」「諭旨退職」との違い

退職に関連する単語の1つに、「依願退職」というものがあります。ニュースなどで耳にしたことはあるものの、その詳しい意味や使い方については、正直ピンと来ないという人も多いでしょう。

また、同じく退職に関連する単語として、「辞職」や「諭旨退職」というものがありますが、これらの違いはお分かりになりますでしょうか。

今回は、「依願退職」という言葉の意味や用法などについてお話していきます。

「依願退職」の意味、「辞職」との違い

「依願退職」とは

「依願退職(いがんたいしょく)」とは、ざっくり言うと、「従業員が会社に対して退職の意思を伝え、会社がこれを承諾することで成立する退職方法」というものです。
「依願」という漢字からも分かる通り、退職を依頼する、願う、つまり、労働者の希望に基づく退職を意味します。
様々な場面が想定されますが、キャリアアップのための転職や、結婚や介護を理由とする退職などが、この依願退職の場面と言えます。

「辞職」との違い

依願退職とよく似た退職方法として、「辞職」があります。
依願退職の場合、一方的に労働者から雇用を解消するというものではなく、退職の意思を伝え、会社がこれを承諾することにより、退職が成立します。つまり、会社が退職を承諾しなければ、退職という効果は発生しません。
他方、辞職とは、会社の意思・承諾に関わらず、労働者が一方的に雇用契約を解消するものです。会社が退職を承諾しなくとも、一定期間経過後(正社員の場合2週間)に、退職の効力が生じます。
このように、両者の違いは、「会社の承諾を要するか」という点にあります。一般的には、依願退職の場合には「退職願」(例:●月●日を以って退職させていただきたく存じます)が利用されますが、辞職では「退職届」(例:●月●日を以って退職いたします)が利用されます。

「依願退職」は「自己都合退職」の一種

退職の理由として、「自己都合退職」と「会社都合退職」の2種類があります。

このうち「自己都合退職」は、労働者側の理由による退職を意味します。

「依願退職」も「辞職」も、労働者の希望による退職であるため、基本的には自己都合退職にあたります。ただし、会社からの退職勧奨(退職を勧める行為)を受けて退職の意思を表明した場合には、原則として会社都合退職に当たります(諭旨退職の場合は後述しますが、自己都合退職となります。)。
労働者が自ら退職意思を表明した場合でも、すべて自己都合退職になるわけではないので、少し注意が必要です。

「会社都合退職」は、文字通り、「会社側の都合(理由)による退職」を意味しています。
典型的なのは、会社の倒産に伴う退職や、経営難を理由とするリストラ、解雇等です。また、上で述べた通り、会社が退職勧奨を行い、これにより退職に至った場合も、基本的には会社都合退職となります。

なお、自己都合退職か会社都合退職かにより、退職後に貰える失業保険の給付期間や、失業保険を貰えるまでの待機期間が異なります(会社都合退職の方が労働者にとって有利です)。

「依願退職」の使い方・例文

ビジネス用語としての依願退職の用法について、具体的な例文をいくつか挙げてみましたので、参考にしてみてください。

例文:「依願退職と言っても、別に会社に不満があって辞めるわけじゃない」

例文:「この会社にいても先の見込みはないから、依願退職して独立することにした」

例文:「会社からは慰留されているが、依願退職の意思は固い」

例文:「親の介護に専念するため、依願退職を選択した」

例文:「依願退職するのであれば、退職願を提出してください」

「依願退職」と「諭旨退職」の違い

最後に、依願退職と諭旨退職の違いについてお話させていただきます。

「諭旨退職」とは

「諭旨退職(ゆしたいしょく)」とは、本来なら懲戒解雇に当たるほどの問題行動を行った従業員に対し、反省が見られるなどの理由で、会社が温情措置(転職面への配慮等)として、懲戒解雇ではなく辞職を認める処分を言います。具体的には、会社が従業員に対し退職(退職届の提出)を促しますが、退職に応じない場合には懲戒解雇を行うこととなります。

「依願退職」との違い

諭旨退職に応じ辞職した場合も、依願退職の場合も、いずれも基本的には「自己都合退職」に当たるという点は共通します。
ただし、諭旨退職が「懲戒処分」の一種として行われるものであるのに対し、依願退職は、労働者の意思・希望による退職であり、両者の持つ意味は大きく異なりますので、混同しないように注意しましょう。

「依願退職」の意味とは?使い方や例文、「諭旨退職」との違い

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