一般常識
「弁済」「返済」の意味と違い
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「弁済」「返済」の意味と違いとは
「代金の一部を弁済する」「借りたお金の返済期限は●月●日だ」というように、「弁済」「返済」という単語は日常的に使われます。どちらも、お金を支払うときに使う単語ではありますが、両者の使い分けや区別は正確にできていない、という方も多いと思います。実は、この2つの単語は、似ているようで意味が違っています。
そこで今回は、「弁済」「返済」の意味や違いなどについて解説していきたいと思います。
「弁済」とは
「弁済(べんさい)」とは、「自己の債務の給付を履行すること」という意味で用いられる法律用語です。「債務の給付を履行」というと分かり辛いですが、例えば、ある商品を購入する際、その購入代金を支払うことは「弁済」に当たりますし、その商品を引き渡すことも「弁済」に当たります。また、借りたお金を返すことも「弁済」です。なお、代金全額ではなく、代金の一部を支払うような場合には、「一部弁済」などと呼ばれます。
民法第473条(弁済)
債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。
なお、少し特殊な「弁済」として、「第三者弁済」や「代物弁済」というものもあります。
「第三者弁済」とは、その文字の通り、債務者ではなく第三者が弁済を行うことを意味します。例えば、商品を購入したのはAさんですが、Aさんの代わりにBさんが代金を払うような場合には、「第三者弁済」となります(ただし、第三者弁済が認められるためのルールが民法で定められています。)。
民法第474条1項(第三者の弁済)
債務の弁済は、第三者もすることができる。
また、「代物弁済」とは、「本来の給付の代わりに他の給付を行うこと」を意味します。これも文字だと分かり辛いと思いますが、例えば、商品を購入して代金を支払おうとしたものの、お金を用意することができなかったため、代わりにダイヤで支払う、といったものが「代物弁済」となります。ただし、このような代物弁済を行うためには、債権者(相手方)の同意が当然必要です。この商品購入のケースで見ると、売主が、「お金の代わりにダイヤで払うこと」に同意しなければ、代物弁済をすることはできません。
民法第482条(代物弁済)
弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
「弁済」が法律用語であるのに対し、この後みる「返済」は法律用語ではないことや、「返済」は主に金銭の支払い、特に借金の場面でのみ使われるという点で異なります。
「返済」とは
「返済(へんさい)」とは、一般的に、「借りたお金や物を相手に返すこと」と定義されていますが、実際には、「物」を返す場面では「返却」という単語が使われるため、「借りたお金を相手に返す」という意味で用いられることがほとんどです。
例えば、「ローンの返済に追われている」「月々の返済額は3万円ほどだ」「借金の一部を返済する」といった文脈で用いられます。
先に見た通り、「弁済」は、民法で定められている法律用語ですが、この「返済」は、民法等の定めはなく、法律用語ではありません。
また、「弁済」は、必ずしも金銭の支払いだけを意味するものではなく、物を引き渡すことも弁済に当たります。金銭の支払いの場面であっても、借金の支払いだけでなく、代金を支払う場面でも「弁済」という単語を用います。
他方、返済は、「借りたお金を相手に返す」という限定的な文脈で用いられます。例えば、「借金を返済する」というフレーズはよく使われますが、「売買代金を返済する」というフレーズは通常使われません。
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