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D2Cの意味とは?メリット・デメリットと成功事例10選
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海外で誕生した「D2C」は、新しいビジネスモデルとして、最近日本でも急速に注目を集めるようになっています。Eコマースに詳しい人にとっては、すでに説明不要のD2Cですが、全くなじみがないという人もまだまだ多いでしょう。しかし、ブランドやメーカーにとって重要度を増すD2Cは、ビジネスマンにとっても必須の知識となりつつあるのは間違いありません。
そこで今回は、D2Cに詳しくなりたいという人のために、その意味やメリット・デメリット、そして具体的な成功事例などについて紹介していきたいと思います。
D2Cの意味とは?
近年注目を集めるようになった「D2C」ですが、一体どいったものなのでしょうか。具体的なことについてはよく知らないという人も多いでしょう。ここでは、「D2C」の意味や注目される背景などについて見ていきましょう。
D2Cとは
「D2C(DtoC)」とは、「Direct to Consumer」の略語になります。「Direct」は「直接」を意味し、「Consumer」は「消費者」を意味しています。つまり「D2C」は、「製造者が消費者に直接商品を販売する」ビジネスモデルを指していることになります。
企業は自社商品を販売する場合、一般的には他社の小売店を介することが多くなっています。しかし近年は、自社商品を他社を介さずに、ECサイトなどの自社チャネルで販売するケースが目立つようになりました。
例えばアパレルや美容関係の業界では、D2Cを展開する企業が増えています。こうした流れは、2000年代後半にアメリカのスタートアップ企業が始めたものですが、最近は大企業も取り入れるなど注目を集めています。
D2Cが注目される背景
近年ビジネスモデルとしてD2Cが注目されているのには、いくつかの背景があります。
まず1つは、「デジタルネイティブとの親和性の高さ」です。ミレニアル世代以降の「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代は、ECサイトで買い物をすることが当たり前となっているため、自社チャネルによるD2Cは、こうした世代に効果的に働きかけることができます。2つ目は、「ロボットなどの製造に関するツールの発展により、海外製造業者を中心としたサプライチェーンが進化した」という点です。小ロットからでも安価に発注できる仕組みが整ったことは、D2Cの展開がしやすくなったことを意味しています。3つ目の理由は、「SNSの普及」です。これによって企業は容易に消費者とつながれるようになり、顧客の獲得もしやすくなりました。D2CはSNSと非常に相性が良いことから、両者の活用でサービスを有利に展開することができます。
BtoB、BtoC、SPAとの違い
D2Cに関連した言葉として、「BtoB」「BtoC」の2つがあります。これらは果たしてどう違うのでしょうか。また、仕組みが似ていると言われる「SPA」との違いも気になります。以下の項目では、それらの点について見てみましょう。
BtoB、BtoCとの違い
「BtoB」や「BtoC」は、「取引関係」を明確にした用語です。BtoB(Business to Business)ならば、企業が企業に向けて提供するサービスを指し、BtoC(Business to Consumer)ならば、企業が消費者に向けて提供するサービスを指すといった具合に、「誰と誰の取引か」という関係を明らかにしている点が特徴となっています。
それに対しD2Cは、ある取引形態を表す点ではこれらと同様ですが、「取引の関係を示したものではない」という点に違いがあります。
D2Cは前述のように、「一般消費者に向けて直接商品を販売する」ビジネスモデルを指しており、「どのように取引するか(一般消費者にどのように商品を届けるのか)」に重点が置かれています。つまり、D2Cは「取引の方法」を指す点が、「BtoB」や「BtoC」との違いであると言えます。
全11種類!BtoB、BtoC、CtoC、DtoC、OtoO、MtoM、BtoBtoCなどの違い
SPAとの違い
D2Cと似たビジネス形態に、「SPA」があります。SPAは「specialty store retailer of private label apparel」の略語で、企画から製造、販売に至るまでの全ての工程を、自社で一貫して行う小売業態を指しています。「apparel」とあるようにアパレル業界のビジネスモデルで、有名なところでは、「ユニクロ」や「GAP」がSPAを行っています。
このように業態としては似ているD2CとSPAですが、主な違いは、最終的に消費者へ商品を販売する際の形にあります。D2Cが自社運営のECサイトを通じた商品販売を軸とするのに対し、SPAは、実店舗を通じた販売を軸としています。そのため、SPAに比べてD2Cの方がコストがかからず、事業として立ち上げやすいという特徴があります。
メリット
D2Cが近年大きな注目を浴びているのは、このビジネスモデルにさまざまなメリットがあるためです。では、そのメリットとは、具体的にどういったものなのでしょうか。その点について、以下の項目で詳しく紹介していきましょう。
コストが削減できる
D2Cの大きなメリットの1つが、「コストが削減できる」ということです。
他社の小売店やECサイトを利用して商品を販売する場合、どうしても中間マージンや手数料といったコストが発生します。例えばAmazonに出品する場合(大口出品プラン)、登録料として毎月4,900円が必要になりますし、さらに購入された商品の約8~15%は、手数料としてAmazon側に支払うルールとなっています。
それに対しD2Cは、自社マーケットによる取引のため、こうした出品手数料などを支払う必要がありません。かかるのは、決済システム導入に関する手数料のみというのが通常です。そのため、通販サイトを利用するよりコストが削減でき、その分料金を安く設定できるという強みがあります。
独自のマーケティングやキャンペーンが行える
D2Cのメリット、2点目は、「独自のマーケティングやキャンペーンを幅広く行える」ということです。他の通販サイトを利用する取引の場合、出品企業がマーケティングやキャンペーンを自由に行うことは、現実的に難しくなっています。これは、企業が商品を販売するにあたって、サイト側からさまざまなルールや制約が設けられていることによります。
それに対しD2Cでは、自社のECサイトを通じて商品を販売するので、こうした制約を気にする必要がありません。マーケティングやキャンペーンに関しても、自由に行うことができます。
例えばインフルエンサーやアンバサダーを起用したキャンペーンなどの施策も、D2Cであれば積極的に行うことが可能です。このように、D2Cは自由度が高い点も魅力となっています。
顧客データを収集しやすい
続いてのD2Cのメリットは、「顧客データを手に入れやすくなる」ということです。これまでのような、小売店や大手通販サイトを経由するビジネスモデルの場合、顧客に関する全体的なデータを得ようとすれば、各業者から間接的に入手するしかありませんでした。
こうした手間がある上、さらに業者間でデータの統一化・統合化がされていないこともあり、データ同士の整合性が取れずに分析が容易にできないという問題もありました。
これに対し、メーカーが消費者に商品を販売するD2Cであれば、他の業者を経ずに直接顧客データを手に入れることができます。購入履歴や属性、商品の好みなど、詳細で確度の高いデータが得られるので、それらを活用した精度の高い分析も可能です。こうした点は、D2Cならではのメリットと言えるでしょう。
コアなファンを獲得しやすい
D2Cは、「ブランドのコアファンを獲得しやすい」という点もメリットとなっています。
D2Cは、上でも触れたように、SNSとの親和性が高いビジネスモデルです。SNSを通じたブランドストーリーの発信や、消費者とのダイレクトなコミュニケーションにより、理念に共感して製品やサービスを積極的に購入してくれるファンを増やしやすくなっています。こうしたファンは、製品だけでなくブランド自体に愛着を感じるため、長期的な顧客になったり、自らブランドについてのポジティブな発信をすることも多くなっています。つまり、コアなファンを獲得することは、売上を増やすと同時にブランドの知名度や好感度を上げ、さらなるファンを増やすことにつながるわけです。D2Cは、こうした好循環を生む大きな可能性を秘めています。
デメリット
コストの削減や顧客データの収集に強みを見せるD2Cですが、そうしたメリットばかりではありません。同時に、いくつかのデメリットもあります。
以下の項目では、D2Cを始めるにあたって注意すべきデメリットについて見ていきましょう。
仕組み作りにコストやリソースが必要
D2Cのデメリットとしてまず挙げられるのが、「仕組み作りに関する投資が必要」という点です。
Amazonや楽天といった大手通販サイトの場合、前述のように、利用にあたっては一定の登録料や手数料が必要になります。しかし別の角度から見ると、構築・管理に手間やコストがかかるECサイトを、手数料等を支払うだけで使えると捉えることも可能です。
これに対しD2Cの場合は、自前のECサイトを準備するだけでなく、流通や販売の仕組み作りも自社で行わなくてはなりません。これらを全て行うとなると、決して少なくないコストやリソースを用意する必要が生まれます。実際に、D2C環境をそろえるコストなどが確保できないため、やむを得ず大手通販サイトを利用するしかないという企業も多くあります。
ブランドの認知が必要
D2Cのデメリット、2点目は、「ブランドの認知が前提になる」というものです。
Amazonや楽天といった大規模ECサイトを利用する場合、消費者へのブランドの認知度を高めることは、比較的容易となっています。なぜならば、こうした大規模サイトは利用者も多い上に、類似商品との関連付けや広告などもあるためです。
それに対し、D2Cでは、こういった大規模サイトによる恩恵が受けられません。そのため、メーカーは独自の宣伝活動やマーケティングによって、認知獲得を行う必要が出てきます。
しかし、D2C環境の構築後に行うのでは、実際には初期投資を回収することは困難なため、通常はブランドが一定以上の認知度を獲得した上で、D2Cを構築することが多くなっています。
実際の商品を確認しにくい
D2Cのビジネスモデルは、前述のように、自社ECサイトなどでの販売がメインとなります。そのため、「消費者が実際の商品を確認しづらい」という点がデメリットとして出てきます。
実店舗であれば、消費者は直に商品を手に取り、詳細をよく確かめた上で購入するかどうかを決めることができますが、基本的にオンライン上で全てが完結するD2Cでは、そうしたことができません。この点は、消費者にとって小さくないデメリットと言うことができます。
こうした問題を解決する手段として、D2Cを導入している企業では、返品保証制度を設けるところも多くなっています。また、消費者が商品を確認した後にオンラインで注文できるよう、あえて実店舗を構える企業も少なくありません。
ビジネス規模の拡大が大変
D2Cのデメリット、最後に挙げるのは、「ビジネスの規模を拡げるのが大変」ということです。
D2Cモデルでは、「スモールマス」と呼ばれる市場を対象としてビジネスを行うことになります。スモールマスとは、大多数ではないものの、一定の規模を持つ市場のことです。こうしたビジネスモデルの場合、細分化された消費者のニーズに向けた商品の企画・製造・販売が行われますが、マスに向けたビジネスに比べると、どうしても顧客の母数が限られてしまうという特徴があります。そのため、ビジネスを軌道に乗せ、かつ規模を拡大するためには、相応の工夫や戦略がないと厳しい側面があります。
ですから、D2Cで自社製品を展開するにあたっては、あらかじめ規模の拡大が見込める市場か調査したり、併せて長期的な事業計画を練ることも重要になってきます。
成功事例
ここまでは、D2Cの意味やメリット・デメリットなどについて見てきましたが、実際にこのビジネスモデルを導入し、結果を残した企業についても知りたいところです。
以下の項目では、D2Cの分野で成功を収めた具体的な事例について、いくつか紹介していきましょう。
CHOINA
D2Cの成功事例、最初に紹介するのは、XS~Sサイズに特化したブランド「CHOINA(コヒナ)」です。
身長150cm前後の小柄な女性をターゲットとした綺麗目カジュアルのブランドで、2017年の11月に創業し、2018年に正式オープンしました。「小柄でも奇麗で大人な女性に見られたい」という人達のニーズに応え、小柄女子がもっとも奇麗に見える商品づくりを行っています。
over E
続いてのD2Cの成功事例は、「over E(オーバーイー)」です。こちらは、胸の大きな女性をターゲットとしたアパレルブランドとなっています。「太って見える」「胸が強調されすぎる」などの胸の大きな女性の悩みに応えるため、2016年8月にブランドとして誕生しました。銀座に試着専門店を置いており、ひろびろとした試着室で商品を確かめることができます。
ALL YOURS
D2Cの成功事例、3例目は、「ALL YOURS(オール ユアーズ)」です。こちらは、服の着用時に感じるストレスの解消を目的とした商品開発・販売を行うブランドになります。
例えば急な雨で服が濡れるストレスに対し、水を弾くパーカーを開発するといった具合です。またALL YOURSでは、ユーザーに商品開発のプロセスへ参加してもらうなど、ユーザーと共同でブランディングを行うことを重視しています。
Oh My Glasses
3例目のD2C成功事例は、「Oh My Glasses(オーマイグラス)」です。こちらは、メガネを通販で販売する企業になります。
レンズの度数測定が必要なため、通常は店舗で買うものとされていたメガネを、ECサイトを通じた販売に踏み切った点に特徴があります。ネットショップだけでなく、実店舗も展開しているので、そちらで視力測定や相談を行うこともできます。
BULK HOMME
続いてご紹介するD2Cの成功事例は、「BULK HOMME(バルクオム)」です。BULK HOMMEは、男性スキンケア用品を専門に販売するブランドになります。
「THE BASIC」をコンセプトに、世界中の男性に「ベーシックスキンケア」の答えを示し続けることを目的としています。D2Cというビジネスモデルがまだ一般的ではなかった2013年にスタートした、日本での草分け的な企業となっています。
Glossier
6つ目に挙げる事例は、「Glossier(グロッシアー)」です。Glossierは、ニューヨーク発のコスメブランドになります。
日本での知名度はまだそれほどではありませんが、世界的にはD2Cの成功事例としてよく知られています。ブランドの発端となったのは、創業者エミリー・ワイズ氏によるファッションブログで、ワイズ氏はこのブログの成功を受けて、2014年にブランドを立ち上げました。インスタグラムなどのSNSを最大限に活用することで、若い世代を中心に人気を得ています。
Quip
7例目のD2C成功事例は、アメリカの電動歯ブラシ定期購入サービス「Quip(クイップ)」です。月額25ドル(約2,800円)で電動歯ブラシを販売しているサブスクリプションモデルですが、ユーザーは提携歯科医の元で定期的に歯のチェックなどが受けられるという、デンタルケアのエコシステムを構築している点が特徴となっています(米国限定で、日本では受けられません)。
Minimal
クラフトチョコレートメーカーの「Minimal(ミニマル)」もまた、D2Cの成功事例に挙げられる企業です。2014年にスタートしたMinimalは、代表自らが産地に赴いてカカオ豆の選定・仕入れを行うだけでなく、チョコレートの成形に至るまでを自社で全て管理するスタイルを導入しています。SNSでのブランディングなどオンライン上の施策はもちろんのこと、実店舗でもファンに向けた積極的なアピールを行っています。
BASE FOOD
D2Cの成功事例、8つ目に紹介する会社は、「BASE FOOD(ベースフード)」です。BASE FOODは2016年にスタートしたベンチャー企業で、体にいい主食「BASE FOOD」の開発・販売を主に行っています。現在展開しているのは、1食で1日に必要な分の栄養素の1/3が摂れるという、パスタとパンになります。自社ECサイトを通じたD2Cによる販売は、食における重要な要素である「作り手の顔が見える」という点で大きなメリットとなっています。
ネスレ
最後にご紹介するD2Cの成功事例は、「ネスレ」です。ネスレはスイスに本拠を置く、世界最大の食品会社ですが、D2Cの分野でも大成功を収めています。自社のECサイトを立ち上げた当初は、1年間で2万1千の無料サンプルを配布することを目標としていましたが、実際にはサイトの立ち上げ後数時間で、目標のほとんどを達成しました。ECサイトを通じたコンバージョン率は70%を記録しており、サンプル配布の戦略は、顧客獲得の上で大きな成果を残しています。
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