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試用期間とは?給与や解雇、延長など試用期間中に関する基本12選

試用期間とは?給与や解雇、延長など試用期間中に関する基本

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

試用期間とは?給与や解雇、延長、残業、有給など試用期間中の基本

試用期間とは

会社に入社する際、雇用契約書をよく読むと、「3ヶ月間は試用期間とする」といった記載があることがあります。「試用期間」という漢字からも、なんとなく「お試しの期間」ということはわかりますが、その正確な意味やルールについては、あまり理解していない方が多いのではないでしょうか。

試用期間とは、労働者の仕事・会社への適性を見極めるために設定される期間です。法律上、明確な定義やルールが定められているわけではありませんが、日本でも、広く利用されています。

新たに人を採用する際、会社は、面接を行い、その労働者が自社にマッチするかを判断することとなります。ただ、複数回面接を行ったとしても、その労働者の実際の人柄、能力、仕事への適性等はわからないことが通常です。会社としては、「実際に働いているところを見て、正式に採用するかを決めたい…」というのが本音でしょう。

このような観点から、労働者を自社で働かせつつ、その適正を判断するための期間として、「試用期間」が必要なのです。

なお、この「試用期間」は、正社員にのみ設定されるものではなく、契約期間が定められた雇用契約(有期契約)や、パートの場合であっても、試用期間が設定されることもあります。

試用期間中でも簡単に解雇はできない

会社側のよくある誤解として、「試用期間なんだから、解雇は自由にできるはず」というものがあります。
実際には、試用期間中であっても、労働者を簡単に解雇することはできません。なお、試用期間が終了した際に、本採用しないと告げることも、「解雇」と扱われます。

試用期間は、労働者の適性等を見極めるために設定するものですが、これはあくまでも「雇用契約を締結している」ことが前提です。たとえ試用期間中であっても、一度締結した雇用契約を解消するためには、「正当な理由」が必要となりますし、この正当な理由は、かなり厳格に判断されます。

勿論、試用期間の性質上、通常の解雇の場面(試用期間中でない従業員を解雇する場面)よりは「やや」緩やかに有効性が判断されますが、それでもなお、簡単に解雇することはできません。

例えば、試用期間中に、①無断欠勤・遅刻が頻繁に見られた、②採用面接時に告げられていなかった病気が発覚し、仕事を十分に続けることが困難である、③社内・社外を問わず問題行動を頻発しており、会社が複数回注意・指導をしたものの、改善される見込みがない、④即戦力として採用しており、本人も即戦力であることを理解していたものの、通常要求される水準の能力を著しく下回っていた(試用期間中の成績等)、⑤試用期間中に経歴詐称など、面接時の回答・履歴書の記載と異なる事実が発覚した、といったような場合には、勿論ケースバイケースではありますが、試用期間中の解雇が認められる可能性があります。

他方、「雇ってみたけどなんか違う」「たまに欠勤がある(ただし事前に連絡があり、理由も相当)」「もっとできると思っていた」「協調性どうかなあ…」といった程度であれば、たとえ試用期間中とはいえ、解雇することは難しいでしょう。

解雇については、別の記事で詳しく書いているので、こちらも参照にしてみてください。
「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」「諭旨解雇」の違い

試用期間の長さは(基本的には)自由に設定できる

先に見た通り、「試用期間」の明確な定義やルールは、法律によっては定められていません。
そのため、「試用期間は●ヶ月以内にしなければならない」という法律もなく、基本的には、試用期間の長さは会社が自由に決めることができます。
なお、日本とは異なり、海外では、試用期間の長さの上限を法律で定めている国もあります。

ただし、法律のルールはないものの、裁判所においては、長すぎる試用期間は無効と判断される傾向にあります。どの程度の長さなら有効か、という相場観を示すことは難しいですが、半年~1年程度が上限という印象です。
実際には、1か月から3か月程度の試用期間を定めている会社が多いですが、次での項目で見るように、試用期間の延長の定めを置いている会社もあります。

試用期間の延長は契約上の根拠か労働者の同意が必要

会社としては、そろそろ試用期間が終了になるものの、勤務態度等にやや問題があり、もう少し適性を見極めたいといったケースもあります。できれば、試用期間をあと少し伸ばし、様子を見たいところです。

このような場合、①雇用契約書や就業規則に試用期間の延長の規定があるなど、契約上の根拠があるか、②労働者の同意がある場合には、試用期間を延長することが可能です。

他方、上記①②のいずれにも当たらない場合、つまり、契約上の根拠もなく、労働者が同意していない場合には、会社が一方的に試用期間を延長することはできません。

試用期間は明確に定める必要がある

契約書や就業規則には書いてないけど、入社から3か月はまあ試用期間だよね、ということは通用しません。
会社としては、試用期間を設定するのであれば、それを雇用契約書や就業規則に明確に定める必要があります。

労働基準法上、会社は、労働者を雇用する際に、労働条件を明示する義務があります。そして、この明示をしなければならない事項には「労働契約の期間」も含まれており、試用期間もこの「労働契約の期間」に当たると考えられています。そのため、例えば雇用契約書等において、試用期間の記載がない場合には、試用期間は「定められていない」ものとして通常扱われます。

解雇する場合でも決まりがある

解雇が有効か、という問題は先に見ましたが、それとは別に、試用期間中の労働者を解雇する場合(試用期間終了時に本採用しない場合を含む)であっても、通常の解雇のルールは適用されます。

例えば、試用期間中の解雇であっても、原則として、30日前に解雇を予告するか、30日間の賃金相当額(解雇予告手当と言います)を支払わなければなりません。
ここで「原則として」と記載しましたが、例外もあります。労働基準法21条は、「試の試用期間中の者」が働き始めてから14日以内に解雇する場合には、解雇の予告(又は解雇予告手当の支払い)は不要と定めています。そのため、試用期間として採用した労働者を、働き始めてから14日以内に解雇する場合には、解雇予告は不要です。
ただし、「解雇予告が必要か」という話と、「解雇が有効か」という話は、全く別物です。14日以内の解雇であっても、先に見た通り、解雇が有効であるためには、「正当な理由」が必要なので、少し注意が必要です。

労働者側の希望で退職する場合も決まりがある

試用期間中であっても、会社側が「簡単に」解雇を行えないのと同様に、労働者側としても、通常の雇用と同様に、退職の手続を行う必要があります。

そのため、試用期間中に会社の方針や業務の内容などに合わないと思った場合でも通常通りの退職を行う必要があり、試用期間中だからといっていつでも辞められる訳ではありません。

退職については「退職の手続きと流れ【完全版:9ステップ】」「会社を辞める決断をしたらなら知っておくべき14のポイント」などについて別途記載させていただきましたが、遅くとも2週間前までには、退職の意思を会社に伝える必要があります。
なお、実際には退職できるケースがほとんどですが、正社員(期間の定めのない雇用契約)ではなく、有期契約(契約期間が定められている雇用契約)の場合には、「やむを得ない」事情がなければ退職することはできないと法律で定められているため、少し注意が必要です。

試用期間中でも社会保険の加入は義務付けられている

社会保険は、健康保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険等の保険を総称したものです。怪我・病気をした際に治療費等を国が負担してくれるものや(健康保険・労災保険)、一定額を毎月収めることにより、将来年金を受け取ることができるもの(国民年金、厚生年金)等があります。健康保険、厚生年金保険の2つを指して、社会保険と呼ぶこともあります(狭義の社会保険)。

社会保険の加入条件は、法律で明確に定められております。例えば、正社員は基本的には社会保険に加入しなければなりませんし、有期契約・パートの場合でも、①週の労働時間が20時間以上であり、②1年以上の雇用継続が見込まれ、③月の賃金が88,000円以上であり、④一定規模の会社で雇用されている場合には、社会保険に加入しなければなりません。

この社会保険加入の条件に、「試用期間であるか」は考慮されないため、試用期間中であっても条件を満たせば、必ず社会保険に加入する必要があります。

福利厚生が受けられるかはケースバイケース

例えば、結婚休暇、慶弔休暇等、会社によっては特別の休暇を就業規則等で設けていることがあります。また、プライベートの怪我・病気等で会社を休まなければいけない場合、休職制度を利用できることもあります。
これらは福利厚生の一環ですが、試用期間中の場合、福利厚生を受けられるかはケースバイケースです。
就業規則等で、「ただし、試用期間中は除く」といった記載がある場合には、福利厚生を受けることができないため、一度、就業規則を確認してみると良いでしょう。

残業代を支払う義務がある

当然ですが、試用期間中であっても残業をした場合には、残業時間に応じた残業代を支払う必要があります。深夜労働(22時~翌朝5時)、休日労働をした場合にも、割増賃金を支払う必要があります。
「試用期間中は残業代を払わない」という対応を取る会社も中にはありますが、法律上は、このような取り扱いはできません。

給与を低く設定することは一応可能

求人サイトなどを見ると、多くの会社では、試用期間中の給与を、本採用後の給与より低く設定しています。
このような取り扱いは、実は違法ではありません。会社は、試用期間中の給与を、本採用後の給与より低く定めることもできます。そして、労働者がこれに同意した上で入社した場合には、約束通りの給与(試用期間中の給与)しか請求することはできません。

ただし、一定の場合を除いては、各都道府県において決められている最低賃金よりも低い賃金を設定することはできません。また、残業代や深夜・休日労働の割増賃金を支払わなければならないのは、先に見た通りです。

賞与(ボーナス)の支給

賞与(ボーナス)の支給は、法律上、会社に義務付けられたものではありません。
会社が賞与を支給することを労働条件に定めた場合にのみ、賞与を支給する義務が生じるため、そもそも賞与を支給しないと定めている会社の場合には、試用期間中か否かを問わず、賞与は支給されません。

他方、賞与を支給すると定めている会社でも、試用期間中は、賞与を支給しないこととしている会社や、支給額に差を設けている会社もあります。
賞与が支給されるか否かは、雇用契約書や就業規則・賃金規程に記載されているため、確認してみるのが良いでしょう。

有給休暇の取得

有給休暇は法律によって付与される条件が定められており、①「6ヶ月間の継続勤務」と②「全労働日の8割以上の出勤」を満たしてはじめて有給休暇が付与されます。
そのため、例えば試用期間が3ヶ月の場合には、①の「6ヶ月間の継続勤務」を果たしていないため、基本的には有給休暇は付与されません。

ただし、会社によっては、上記①②よりも緩やかな条件で、有給休暇の付与を認めています。多くはありませんが、入社当日から有給休暇を付与する会社もあれば、入社してから3ヶ月が経過した場合に有給休暇を付与する会社もあります。
これも、雇用契約書や就業規則を見てみると良いでしょう。

有休休暇については、「有給休暇の16の基本(消滅・期限・買取・拒否・退職・理由・計算など)」で詳しく解説しているので、こちらも参照にしてみてください。

試用期間とは?給与や解雇、延長など試用期間中に関する基本

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