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「出向」の意味とは?使い方や例文・「左遷」「転籍」との違い

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「出向」の意味とは?使い方や例文・「左遷」「転籍」との違い
「出向」という言葉は、ビジネスシーンでは比較的おなじみのものです。その一方で、ドラマなどでしか「出向」の語を聞いたことがないという人も多いでしょう。そうした人の場合、「出向」にはどちらかというと悪いイメージを抱きがちですが、実際にはどうなのでしょうか。
今回は、ビジネス用語としての「出向」の意味や使い方について、詳しく解説していきたいと思います。
「出向」の意味
「出向」とは
「出向(しゅっこう)」とは雇用形態の一種で、労働者が企業の命令を受け、籍を元へ残したまま別の企業で勤務することを言います。雇用契約を結んでいるのは出向元の企業であり、給与もそちらから支払われますが、実際の仕事については出向先の企業の指示に従うことになります。代表的な例としては、親会社から子会社への「出向」が挙げられます。籍は元の場所に置き、一時的に別のところへ「出向く」ことから、「出向」の名が付いています。「在籍出向」と呼ばれることもあります。
「出向」を命令された場合、社員は正当な理由なくこれを断ることはできません。ただし、命令が権利濫用と認められる場合に限っては、「出向」を拒否することもできます。
「出向」がよく見られる職種
「出向」が多く見られる職種の代表が、「銀行員」です。この業界では、籍を元の銀行に置いたまま、関連会社や融資先の企業に「出向」するケースがよく見られます。この場合は、銀行員の働き場所の確保や、融資先の経営再建などの狙いが主となっています。
一方、銀行員と並んで「出向」が多いのが、「公務員」です。公務員の世界においては、地方公務員、国家公務員、および民間企業の垣根を超えて「出向」が行われるようになっています。この場合、人事交流や人材育成などが主な目的になります。
「出向」の使い方・例文
上では「出向」の意味について見ましたが、実際の使い方についても知りたいところです。ここでは、ビジネス用語としての「出向」の用法について、例文を挙げて見ていきましょう。
- 例文:「システム開発のために、客先にエンジニアとして出向することになった」
- 例文:「ベンチャー企業への出向は、新たに経験値を増やすチャンスだ」
- 例文:「新しく買収した企業に、経理部門長として出向する」
- 例文:「最近は、出向を装った労働者供給事業が問題になっている」
「出向」の目的
ここまで「出向」の意味や使い方について見ましたが、そもそも「出向」は何のために行われるのでしょうか。ここでは、「出向」の目的についてケース別に見ていきましょう。
「出向」の目的は、主に以下の4つに分けられます。
人材育成
まず挙げられるのが、「人材育成」という目的です。言わば、勉強と経験を積むためのインターンシップになります。20~30代と比較的若い年齢での「出向」であれば、ほとんどはこちらのケースでしょう。特に大企業の場合、関連会社の数も多くなるため、それぞれの現場で仕事を経験しておくのは、キャリアを積む上で大きな意味があります。
業績拡大
トップやリーダーとして子会社へ「出向」する場合は、人事戦略の意味合いが強くなります。実績のある優秀な人材をリーダーとして送り込むことで、出向先の経営戦略などについて指導を行い、業績をアップさせようというのが目的です。グループ全体の発展や成長を考えた戦略上の人事であり、非常に重要な役割を持ちます。
企業間の人材交流
この場合は、新しくグループに加わった企業や、新規の取引先への「出向」でよく見られるものです。社員を1人送り込むことにより、相互のコミュニケーションを活発化させ、取引をより円滑に進めようという意図があります。言うならば、企業間の潤滑油となることが期待されるケースにあたります。
雇用調整
こちらは、親会社に身の置き場所が無くなった場合によく用いられるタイプの「出向」です。これ以上親会社での雇用継続が難しくなった時や、管理ポストが足りないといった時に、子会社へ「出向」させる形にして雇用を続けるのが目的になります。一見ネガティブではありますが、会社としては何とか解雇を避けたいという意思の表れと見ることもできます。このケースの場合、最終的には出向先へ「転籍」となることが多くなっています。
「出向」と「左遷」「転籍」との違い
「出向」とイメージの似た言葉に、「左遷」と「転籍」の2つがあります。これらは一体どのように違うのでしょうか。ここでは、「左遷」「転籍」の意味と、「出向」との違いについて見てみましょう。
「左遷」とは
ビジネスシーンで言う「左遷」とは、「それまでの役職より低い地位に落とされること」というの意味の言葉です。または、出世コースから外れた場所に移動させられることを指します。それに対し、「出向」には特に「身分が低くなる」といったような意味合いはありません。また、前述のようにポジティブな目的での「出向」も多くなっています。
「転籍」とは
ビジネス用語としての「転籍」は、「別の企業への移籍」を意味します。「出向」の場合、籍は元の企業に置いたままですが、「転籍」では籍を完全に移し、給与も移籍先で受け取ることになります。「移籍出向」と呼ばれることもあります。
最後に
以上、ビジネスシーンで使われる「出向」の意味や使い方などについて、例文を交えていろいろと紹介してきました。
「出向」というと何となく悪いイメージがあった人も、こうして見てくると、実際には決してそうではないことが分かると思います。「出向」の理由や目的はさまざまであり、ポジティブな「出向」も少なくありません。むしろキャリアアップに役立つケースも多いので、まずは会社の狙いを正しく理解することが大切になります。
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