法務・法律
「無期懲役」「終身刑」の意味と違い
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「無期懲役」「終身刑」の意味と違いとは
「●●を犯した被告人に、無期懲役が言い渡されました」など、「無期懲役」という単語は日常の報道でも良く使われている単語です。その文字からも、なんとなく意味が分かる方が多いのではないでしょうか。
また、法律が関連するドラマや、海外の過去の事件の再現VTR等で、「終身刑」という単語が使われることもあります。
この「無期懲役」と「終身刑」ですが、実は異なる意味を有しています。
今回は、そこで今回は、「無期懲役」と「終身刑」の意味や違いについて、詳しく解説していきたいと思います。
「無期懲役」とは
まず、「無期懲役(むきちょうえき)」とは、日本の刑法における刑罰の1つで、「期限を定めず(無期限で)懲役刑を科す」ことを意味します。
そもそも、刑法では、刑の種類として、以下の7種類を定めています。
第9条(刑の種類)
死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
懲役、禁錮、拘留は、一定期間、身体を拘束する刑罰ですが、このうち、懲役、禁錮には、「無期刑」があります。なお、拘留は、1日以上30日未満の期間しかないため、「無期拘留」というものはありません。
「懲役」と「禁錮」は、どちらも受刑者の身体の自由を奪う刑罰ですが、懲役は、刑務所内での刑務作業が義務付けられているのに対し、禁錮では、刑務作業は義務付けられていないという点で違いがあります。
第12条(懲役)
1 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。
2 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。
第13条(禁錮)
1 禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、1月以上20年以下とする。
2 禁錮は、刑事施設に拘置する。
日本の刑法で、無期懲役が定められている罪はいくつかありますが、代表的なものとしては、現住建造物等放火罪(人が住んでいる建物に放火した場合)、強制わいせつ等致死傷(わいせつな行為をして人を死傷させた場合)、強盗致死傷罪、殺人罪等が挙げられます。
無期懲役と終身刑ですが、どちらも、「無期限で課される刑」という点では共通しますが、「無期懲役」が法律上で定義された刑罰であるのに対し、「終身刑」は、刑法等の法律では定義されていません。
次の項目で詳しく見てみましょう。
「終身刑」とは
「終身刑(しゅうしんけい)」とは、「生涯ずっと(=亡くなるまで)刑務所に収監される刑罰」を意味する用語です。
終身刑には、「相対的終身刑」と「絶対的終身刑」の2つがあると考えられています。両者の違いは、「仮釈放」の有無にあります。
日本の刑法では、無期懲役を科された受刑者でも、一定の場合、仮釈放が認められる可能性があります。つまり、「無期」懲役を科されても、途中で刑務所から釈放される可能性があります。これは、先の区分で見ると、「相対的終身刑」に当たります。
他方、このような仮釈放の制度がない場合を、「絶対的終身刑」と言います。
なお、日本では、無期懲役にも、無期禁錮にも、仮釈放の制度が存在するため、「絶対的終身刑」はありません。
「無期懲役」も「終身刑」も、仮釈放される場合を除いては、無期限で刑務所に収監されるという意味を持っており、この点では共通します。
ただし、狭義の終身刑、つまり、仮釈放すら予定していないという意味の「絶対的終身刑」と無期懲役とでは、意味が異なります。
また、無期懲役が刑法により定義された用語であるのに対し、終身刑は、刑法等の法律では定義されていないという点でも異なります。
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