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就職・転職

「内定」と「内々定」の違い

内定と内々定の違い

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

特に就職活動のシーズンになると、「●●社から内定を貰った」「内定を貰ったけど辞退した」などと、内定という単語をよく耳にすると思います。また、採用の過程の中で、「内々定」という単語が用いられることもありますが、この「内定」と「内々定」の正確な意味の違いはご存じでしょうか。

今回は、「内定」と「内々定」の意味や違いについてお話していきます。

内定とは

内定とは

内定とは、ざっくり言うと、実際に就労するのはまだ先ですが、会社で働いてもらうことは決まっている状態を言います。一般的には、企業から内定通知が出され、これを従業員が承諾することにより、内定が成立します。

働く時期こそ到来していないものの、将来、予定された日が到来すれば、その日から働くこと自体は決まっています。そのため、法律上は、会社より内定通知が出され、これを従業員が承諾した時点で、「雇用契約」が成立するものと考えられています。

ただし、内定という性質上、会社側に一定の解約の余地が残されているため、「始期付(=労働を開始するまでタイムラグがある)解約権留保付(=一定の場合に解約できる)の労働契約」が成立しているものと考えられています。

例えば、一般的な新卒採用の場合、内定が出る時期はまちまちですが、通常は、学校を卒業した後の4月1日から働くこととなります。また、内定が成立したものの、必要な単位が取れず留年となった場合等には、内定が取り消されることもあります。このように、内定は、将来働く時期が決まっており(始期付き)、かつ一定の場合に解約され得る(解約権留保付き)ことが前提となっている雇用契約です。

いわゆる内定辞退や内定取消しの問題は、この後の「拘束力の違い」で見ていきます。

内々定とは

内々定とは

内々定とは、採用内定の更に前段階の状態を指し、「正式な採用は決まっていないものの、採用予定であること」を意味します。ただし、内々定は広い概念であり、「ほぼ採用が決まっている状態」を広く内々定と呼んだりします。

勿論会社にもよりますが、内々定に関して書面で通知がなされることはあまりなく、多くが口頭で「採用予定であること」を伝えられることとなります。例えば、最終面接などで、他社の選考状況を確認された上で、「うちに来てくれるなら内定を出す予定」と伝えられた場合などは、内々定の通知がなされたと考えて良いでしょう。

内定との大きな違いは、内定が「雇用契約が成立している状態」であるのに対し、内々定はこの前段階であり、雇用契約までは成立していないという点です。

ただし、先に述べた通り、内々定は広い概念であり、その態様によっては、ほぼ内定に近いものもあります。そのため、採用を確信させるような言動があり、他社への就職活動を制約するような言動を会社が取っている場合等は、内定通知書が交付されていなくても、内定が成立していた、すなわち雇用契約が成立していたと判断される可能性はあります。

この点は難しい話ですので、ひとまずここでは、内定は雇用契約が成立している段階であり、内々定はその前段階と理解すれば良いでしょう。

拘束力の違い

シンプルに、内定=雇用契約が成立している状態、内々定=雇用契約までは成立していない状態と区別して考えると、「内定」と「内々定」の持つ拘束力は大きく異なります。

ここで言う拘束力とは、「労働者側から辞退できるか」という内定・内々定辞退の問題と、「会社側から解消できるか」という内定・内々定取消しの問題の2つに関わります。

内定・内々定辞退の問題

内定の場合、既に雇用契約が成立しているため、労働者(内定者)は、予定された就労日になれば会社で就労する義務を負いますが、労働者は、民法上、2週間前の予告期間を置くことにより、いつでも労働契約を解約することができます。そのため、内定を承諾した後であっても、これを解消(内定辞退)することも可能です。
ただし、特に採用人数が少ない場合、内定辞退が会社に与える影響も非常に大きいため、内定辞退をするかは慎重に検討すべきでしょう。

内々定の場合、通常、この段階では雇用契約すら成立していないため、ビジネスマナーの問題はさておき、内々定を辞退することも問題ありません。

内定・内々定取消しの問題

では、会社側からの解消(取消し)はどうでしょうか。

内定の時点で雇用契約は成立しているため、これを解消することは、「解雇」に他なりません。そのため、労働者側とは異なり、会社が自由に内定を取り消すことはできません。

ただし、先に見た通り、内定の段階で成立している雇用契約は、一定の場合には解約を行うことができる、「解約権留保付」の雇用契約です。そのため、一定の場合には、内定を取り消すことも可能です。一般的には、予定された時期に卒業できなかった、内定後、健康状態が著しく悪化した、面接時に虚偽の事実を申告していたことが発覚した、就労日までの間に不祥事等を起こした、などの理由により、内定が取り消されることが多いです。

他方、内々定の場合、通常、この段階では雇用契約は成立していないため、会社がこれを解消(取消し)することも問題ありません。ただし、これも先に見た通り、内々定は広い概念であり、その態様によっては、ほぼ内定に近いものもあるため、内定通知書を交付していないものの、事実上、内定が成立していたと判断される可能性があります。この場合、上で見た内定取消しと同様の問題になります。

内定と内々定の違い

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