法務・法律
成年年齢の引き下げで何が変わる?生活への影響は?
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成年年齢の引き下げで何が変わる?生活への影響は?
「成年」という言葉を聞いたとき、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。
「未成年」と対をなす言葉としてよく使われるので、馴染みのある単語かと思います。
何歳で「成年」になるかは、民法という法律で定められているのですが、民法の改正により、2022年4月から、この「成年」になる年齢が変わることとなりました。
そして、法律は、「未成年ではできないこと(=成年でなければできないこと)」を定めており、成年年齢の変更により、私たちの生活にも影響が出てきます。
今回は、成年年齢の引き下げについて、お話していきます。
民法改正前の成年年齢は「20歳」
民法が改正される前は、成年の年齢は「20歳」とされていました。
成人式が20歳となるタイミングで行われることからも、多くの方も、「20歳から成人(成年)」というイメージを持たれているかと思います。
実は、成年に達する前(=未成年)は、法律行為を行うことにつき、様々な制約があります。
民法では、未成年者が法律行為を行うためには、原則として法定代理人(両親等)の同意を得る必要があり、同意を得ないで行った法律行為は、取り消すことができると定められています。例えば、高校を卒業して、親元を離れていても、20歳に達するまでは、原則として両親の同意を得た上でなければ法律行為を行うことはできないということになります。
ここで言う「法律行為」には、様々な行為が含まれており、例えば、家を借りる際に「賃貸借契約」を締結することも法律行為の一つですし、コンビニで物を買うことも法律行為に含まれます。
ただし、例えば親が子供に「お小遣い」を渡し、そのお小遣いを利用して物を購入することは、両親の同意なく行うことができます。
また、20歳に達する前であっても、結婚をした場合には、成年に達したものと扱われます。
そのため、例えば18歳であっても、結婚していれば、成年と扱われるため、上記のような法律行為の制限も受けないこととなります。
少しややこしいですが、関連する民法(改正前)の条文を記載しますので、こちらもご参照ください。
<改正前の民法の定め>
(成年)
第4条年齢二十歳をもって、成年とする。
(未成年者の法律行為)
第5条未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
(婚姻による成年擬制)
第753条未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
民法改正により「18歳」で成年に!
このように、民法改正がなされるまでは、「20歳」が成年年齢とされていましたが、民法が改正され、2022年4月1日からは、「18歳」から成年となることとなりました。
これまでより「2年」、早く成年として扱われることとなります。
この改正は、若者の自立を促して社会参加を増やす目的や、多くの国で成人年齢が18歳となっていることを受けて実施されたようです。
なお、この「成年年齢の引き下げ」だけでなく、「何歳から結婚できるか」という年齢(婚姻適齢と言います)についても、実は法改正がされています。民法改正前は、男性は18歳、女性は16歳に達すれば結婚ができるとされていましたが、2022年4月1日からは、男女ともに18歳に達しなければ、結婚できないこととなりました。
この関係で、先にみた「婚姻による成年擬制」の制度も廃止されます。
成年年齢の引き下げで何が変わるのか?
詳しくは、法務省のサイトに掲載されている、「民法(成年年齢関係)改正Q&A」をご参照ください。
成年年齢の引き下げにより、「18歳」「19歳」の人も、成年と扱われることとなります。
これにより、18歳、19歳の人でも、例えば以下のような行為が、両親の同意なく単独で行えることとなります。
・クレジットカードを発行する
・アパートを借りる
・携帯電話を購入する
・ローンを組んで自動車を購入する
※ローンの審査が通るかどうかは別問題です。
なお、成年年齢が18歳に引き下げられても、お酒、たばこ、競馬などの年齢制限は、20歳のまま維持されます。これは、健康被害への懸念や、ギャンブル依存症対策等の観点から、従来の年齢を維持したとのことです。
成人式については、各自治体の判断に委ねられているようですが、2022年1月に、法務省が市区町村に確認したところ、「受験と重なる」「飲酒が可能となる」といった点を考慮して、20歳開催を継続する市区町村がほとんど、という報道がなされていました。
おわりに
このように、成年年齢の引き下げにより、18歳、19歳といった年齢であっても、一人で法律行為ができるようになります。
ただし、できることが増える半面、悪徳商法など、消費者被害が拡大するのでは?という問題提起もされています。
我々社会人としても、しっかりと見守っていきたいところですね。
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