会社経営
ストックオプション制度のメリットとデメリット10選
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「ストックオプション」とは、会社の役員や従業員が、自社の株を一定の価格で購入できるという新株予約権の一種です。従業員などへの実質的なインセンティブに当たり、上場を目指すスタートアップ企業を始めとして、さまざまな場面で活用されています。
では、ストックオプション制度を導入することで、どのようなメリットやデメリットが見込めるのでしょうか。
本記事では、ストックオプション導入で生じるメリットとデメリットについて、付与対象者と会社側の双方から見ていきたいと思います。
ストックオプションの意味とは?仕組みや種類、活用例、新株予約権との違いについて
取締役や従業員のメリットとデメリット
ストックオプションは、上記のように会社側から役員や従業員に付与される、新株予約権の一種です。
では、権利を付与された側としては、どのようなメリットとデメリットが予想されるのでしょうか。ここでは、付与対象者のメリットとデメリットについて見ていきましょう。
会社への貢献が自分の利益に直結する
ストックオプションの付与が取締役や従業員に与えるメリット、まず1つには、「会社への貢献が直に自分の利益に結びつく」ということが挙げられます。
ストックオプション制度は期間内なら一定の価格で自社株を買えるので、会社の株価が上がるほど、売却した際の利益が大きくなる仕組みとなっています。つまり、付与対象者が頑張って会社の業績が上向くほど、自分の報酬も大きくなるわけです。
こうした点は、従業員らにとって大きなメリットと言えるでしょう。
自己資金による株式保有より低リスク
ストックオプション以外でも、自己資金で直接自社株を保有するという方法もあるでしょう。しかし、この場合は当然、株価が下落した際に損失をこうむるというリスクがつきまといます。
それに対しストックオプションは、権利行使価格より株価が上がった時点で購入し、売却することができます。確実に利益が出るタイミングを選んで権利を行使できるので、自己資金で自社株を直接保有するより、リスクが格段に少なくなるというメリットがあります。
権利を付与されない者もいる
ストックオプションにおける付与対象者のデメリットとしては、「権利を持たない人との関係が難しい」という点が挙げられます。
一般的なストックオプションでは、役員や従業員全てに権利が与えられることは、あまりありません。社内の限られた人に付与されるのが通常のため、権利を与えられなかった人との関係が複雑になりがちな側面があります。場合によっては、社員同士の不和が表面化することも考えられます。
このようにストックオプションは、基本的に能力重視のシビアな制度となっています。
会社側のメリットとデメリット
ストックオプション制度では、役員や従業員に対してだけでなく、権利を付与する会社側にもプラス・マイナス双方の影響が見込まれます。続いては、ストックオプションがもたらす会社側へのメリットとデメリットについて見ていきましょう。
取締役や従業員の経営参画意識が上がる
前述のように、ストックオプション制度は、自社の業績が直接付与対象者の利益に結びつく仕組みとなっています。これによって権利を付与された社員は、会社の業績を向上させて株価を上げることへの意識が、今までより強まります。それまでは会社側から言われる形で行っていた業務も、自ら率先して行うようになり、反対に会社にとってマイナスとなるような行動は避けるようになるでしょう。
このように、付与対象者が経営へ積極的に参加する意識を強められることは、会社にとって大きなメリットの一つと言えます。
成果報酬主義を導入できる
「成果報酬主義の導入」という点も、ストックオプションにおける会社側のメリットの1つに挙げられます。
ストックオプションはインセンティブの一種ですが、通常のようにあらかじめ決められた額ではなく、会社の株価に連動して変わる点が特徴となっています。つまり、従業員側が多く成果を挙げるほど自社の株価も上がり、その上昇分を報酬として還元できるわけです。
このように、ストックオプション制度は会社にとって、実質的な成果報酬主義の導入という側面を持っています。
優秀な人材の確保がしやすい
ストックオプションは、将来株価が上がった時点で利益を手にする報酬制度となっています。つまり現時点では、役員や従業員へ現金を支払う必要がありません。このため、会社としては財務に余裕がなくても、将来的なインセンティブを約束する形で優秀な人材を確保しやすくなります。
特に、大手企業並みの報酬を確約できないスタートアップなどにとっては、ストックオプションを活用することで、将来の幹部候補を採用しやすくなるというメリットがあります。
自己資本の充実につながる
会社がストックオプション制度を導入するメリットとして、「自己資本の充実」という点も挙げられます。
企業の資金調達の方法には、金融機関からの借り入れと社債の発行、そして株式の発行の3つがありますが、このうち前の2つは、負債の増加によって自己資本比率の悪化を招く恐れがあります。それに対し株式の発行による増資では、自己資本が増加するために、会社の財務状況の改善が見込めます。ストックオプションは実質的な株式発行に当たりますから、導入することで自己資本の充実につながるわけです。
業績が悪化すると社員のモチベーションが下がる
ストックオプション制度には、会社にとって「業績悪化により社員のモチベーションが下がりかねない」というデメリットもあります。
上で何回か述べたように、ストックオプションは、会社の業績が付与対象者の利益に直結する報酬制度となっています。業績が好調ならば問題ありませんが、逆に悪化した場合は、株価も下がって権利行使による利益が得られない場合もあります。
こうした場合には、従業員のモチベーションも下がってさらに業績が悪くなるという、悪循環に陥る可能性があります。
社員の不満が高まることも
ストックオプション導入によって、会社内に不協和音が発生する恐れもあります。
前述のように、一般的なストックオプションは限られた役員や従業員にしか与えられません。権利を与えられなかった者としては、付与対象者に対する複雑な思いが生じ、やがては会社にへの不満となって表れるおそれもあります。こうした点は、デメリットの1つに数えられるでしょう。
この問題を避けるには、業績への貢献度や勤続年数によるなど、あらかじめストックオプションの付与基準を明確にしておくことが重要になります。
権利を行使した社員が辞めるおそれも
ストックオプション制度には、「権利行使後に社員が辞める可能性がある」というデメリットもあります。
上の項目で述べたように、会社にとってストックオプション制度の導入は、優秀な人材の採用につなげやすいという利点があります。しかしそうして入社した社員は、報酬が最大の目当てであって、会社自体への興味は低いことが少なくありません。
そのため、ストックオプションの権利を行使して目的の利益を得たあとは、あっさりと会社を退職しまうことも考えられます。
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