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問題・トラブル

取り付け騒ぎとは?国内・海外の事例20選

取り付け騒ぎとは?国内・海外の事例20選

「取り付け」という言葉は、文字通り部品などを取り付ける際にも使われますが、経済関連の言葉としても使われます。この場合は「取り付け騒ぎ」と呼ばれることが多く、ニュースなどでもたびたび耳にしますが、一体どのようなことを表しているのでしょうか。大まかなことは知っていても、詳しい意味などについては分からないという人も多いでしょう。

本記事では、「取り付け騒ぎ」の意味や国内外の事例について紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

取り付け騒ぎの意味とは?

「取り付け騒ぎ」とは、「金融恐慌などの発生により、不安にかられた預金者が払い戻しを求めて金融機関に殺到し、大混乱が起こること」という意味の言葉です。単に「取り付け」と言う場合もあります。
こうした現象が起きるのは、預金者の間に「銀行預金の引き出しが困難になる」との不信感が広まった結果ですが、その元となる情報は、根拠の薄い風評が少なくないとされます。

「取り付け騒ぎ」が起きると、場合によっては銀行は支払い停止の事態に陥ることもありますが、通常は中央銀行の援助によって阻止できます。ただ、銀行同士には手形の決済などを通じた貸借関係が相互に存在するため、1つの銀行が取り付けに見舞われた際には、他行にも容易に波及する恐れがあります。そのため、取り付けが起こりそうな状態の時は、法令によるモラトリアム(支払い停止)が実施され、銀行が一斉休業となることもあります。

事例

「取り付け騒ぎ」は、過去海外や日本国内で何度も発生してきました。有名なのはアメリカ大恐慌(1929~32年)の際のものですが、その他にも多数の例があります。以下の項目では、そうした国内外の「取り付け騒ぎ」の事例について紹介していきましょう。

日本の事例

東京渡辺銀行

1927年

1927年に起きた東京渡辺銀行の取り付け騒ぎは、日本での最初の事例になります。きっかけとなったのは、衆議院予算委員会で蔵相が発した「東京渡辺銀行が破綻しました」という失言で、これにより預金者が窓口に殺到し、結果として同行は後に経営破綻することとなりました。また、この事件が引き金となって昭和金融恐慌が発生、他の銀行にも取り付けが波及しています。

山一證券

1965年5月21日

1965年に起こった山一證券の取り付け騒ぎのきっかけは、5月21日の西日本新聞による「山一證券経営難乗り切りへ」というスクープ記事でした。この記事が出た翌日から、山一證券の窓口には連日口座解約を求める顧客が殺到し、1週間で177億円にも及ぶ取引口座が解約されています。顧客整理のために警官が出動したり、投石でガラスが割られるなどの騒ぎが起きる支店もありました。

豊川信用金庫

1973年12月

愛知県の豊川信用金庫でも、1973年の12月に取り付け騒ぎが発生していますが、この原因となったのは、電車内での女子高生らによる「信用金庫は危ない」という会話だと言われています。趣意は経営状況とは無関係でしたが、これを聞いた人間が内容を誤解し、家族に伝えたことで、瞬く間に取り付け騒ぎに発展します。結局短期間で20億円の預金が引き出されることとなりましたが、実際の経営状況は健全だったため、倒産などはせずに現在に至っています。

東洋信用金庫

1991年

東洋信用金庫は、大阪市淀川区に本店を置く信用金庫でしたが、1991年に取り付け騒ぎを起こしています。原因は、料亭の女将で「天才相場師」とも呼ばれた尾上縫が起こした、巨額の詐欺事件です。尾上と親交のあった東洋信用金庫支店長が架空の預金証書を作成し、それを用いて不正融資を行っていたのが発覚したことで、預金者が次々に預金を引き出す事態となりました。同信用金庫は翌年に三和銀行に吸収され、消滅しています。

コスモ信用組合

1995年

コスモ信用組合は、バブル崩壊後に「マンモス定期」という高利を謳った定期預金で人気を集めました。1995年6月には、預金高が4300億円ほどにまで急成長しています。しかし、バブル期に取得した株式・土地担保の価格が暴落するなどの要因から資金繰りに行き詰まった結果、1日で預金の6分の1が流失するという取り付け騒ぎに発展しました。結局、95年7月31日に経営破綻しています。

木津信用組合

1995年

木津信用組合は、かつて大阪市浪速区に存在していた信用協同組合です。預金高が最大時で1兆円を超えるなど、一時は一般地方銀行並みの規模を誇りますが、そのほとんどが不動産関係の融資によって運用されたため、バブル崩壊の影響を受けて経営が悪化します。さらに、コスモ信用組合の破綻処理策の発表がダメ押しとなって取り付け騒ぎが発生し、1995年8月に30日に経営破綻しました。

能代信用組合

1995年5月2日

秋田県の能代信用金庫は、1995年の5月2日、一部で「能代信金が清算へ」と報道されたのを発端に、預金者が殺到する事態となりました。この取り付け騒ぎを受けて、能代信金の理事長らが相次いで報道を否定する会見を行いますが、事態は収束できず、結局1日で流出した預金額は、約27億円にも達しました。同信用金庫は、その後救済合併などを経て、現在は「羽後信用金庫」と名称を改めています。

紀陽銀行

1997年

紀陽銀行は、和歌山県和歌山市に本店を置く地方銀行です。現在和歌山県に本拠を置く唯一の銀行で、県内の貸出金残高シェアは46%と圧倒的なシェアを誇りますが、1997年には取り付け騒ぎを起こしています。この年の11月25日、経営不安の風評が流布されたことで、預金者が殺到し、数日で約3000億円もの預金が流出する事態となりました。

山一證券

1997年

ふたたび山一證券ですが、こちらは1997年の事例です。山一證券は、かつて野村證券や大和證券などとともに日本四大証券会社の一角を担っていましたが、「飛ばし」と呼ばれる損失隠しの発覚を経て、1997年11月24日に自主廃業する結果となりました。その際、証券口座を解約しようと大勢の顧客が各支店へ押し寄せたことで、取り付け騒ぎへと発展しています。

足利銀行

1997年

足利銀行は、栃木県宇都宮市に本店がある地方銀行です。バブル期には融資拡大路線を展開し、一時は預金順位で地銀第5位にまで昇りますが、バブル崩壊後に不良債権が増加、1994年3月期決算では、破綻先債権額が632億円にも上る事態となります。こうした経営不安を受けて、97年秋に取り付け騒ぎに発展、結局完全に沈静化するまでに、1年間で約3000億円近くの預金が流出しています。

佐賀銀行

2003年

佐賀銀行は、佐賀県佐賀市に本店を置く地方銀行です。佐賀県と県内主要自治体の指定金融機関ですが、2003年の12月に取り付け騒ぎを起こしています。原因となったのは、25日未明に発生した「佐賀銀行がつぶれるそうです」というチェーンメールで、完全にデマであったにも関わらず、同日の営業時間から顧客が窓口に殺到する事態となりました。この騒ぎで引き出された預金は、約500億円にも上ります。

海外の事例

澳門匯業銀行(バンコ・デルタ・アジア):マカオ

2005年

こちらは、中華人民共和国マカオ特別行政区にある銀行です。匯業財経集団のマカオにおける拠点であり、1935年に設立されて、デルタ・アジア・フィナンシャルグループの源流となりました。2005年9月、アメリカ財務省によって北朝鮮のマネーロンダリングなどへの関与が指摘されたことで、取り付け騒ぎが発生、約18億円が引き出される事態となっています。

東亜銀行(バンク・オブ・イーストアジア):香港

2008年

東亜銀行は、香港に本社を置く銀行です。華人資本の銀行としては香港最大であり、香港内に70の支店を持つほか、中国大陸やマカオ、イギリスなどにも支社や支店を持っています。2008年の9月24日、「リーマンブラザーズの金融商品に投資していた影響で経営が危ない」とのメールが広まった(銀行側は噂を否定)ことで、取り付け騒ぎに発展しました。

中華商業銀行:台湾

2007年

中華商業銀行は、かつて台湾の複合企業Rebar groupの傘下にあった銀行です。同じグループ企業の多くが、融資を受けるために文書の偽造などを行っていた問題の影響で、2007年の1月に取り付け騒ぎを起こしました。発生後数日間での預金解約額は、500億台湾ドル(約1830億円)にものぼっています。結局同行は、2008年3月に香港上海銀行に吸収合併されています。

ノーザン・ロック:英国

2007年

ノーザン・ロックは、イングランド北部に本拠を置く銀行です。2007年の9月、アメリカサブプライムローン問題の影響を受けて資金繰りが悪化、イングランド銀行へ支援を要請したことがきっかけとなって信用不安が広がり、数日間で約4600億円が引き出される取り付け騒ぎに発展しました。2008年の国有化を経て、2011年11月にヴァージン・グループの金融部門へ買収されています。

インディマック:米国

2008年

インディマックは、かつて南カリフォルニアにあった銀行です。貯蓄貸付組合として同州最大を誇ると同時に、全米7位の住宅ローンの貸し手でもありました。しかし、やはりサブプライムローン問題の余波を受けて経営が悪化、2008年に米上院議員により破綻の可能性が言及されたのをきっかけとして、取り付け騒ぎに発展しています。6月からの顧客の預金引き出し額は約1380億円に上り、7月11日には業務停止という結果となりました。

DSB銀行:オランダ

2009年

DSB銀行は、かつてオランダに本拠を置いていた銀行です。2008年のリーマンショックを受けて金融危機に陥った結果、2009年に12日間で6億ユーロ(約810億円)の預金が流出する取り付け騒ぎが発生しました。この直接のきっかけとなったのは、批評家によるテレビ番組での「預金を引き出せ」という発言です。同行は、結局10月19日に裁判所によって破産を宣告されています。

カブール銀行:アフガニスタン

2010年9月

カブール銀行は、アフガニスタン最大の商業銀行ですが、2010年の9月1日に取り付け騒ぎを起こしています。この日、同行の会長夫妻による、ドバイの不動産投資に絡んだ多額の焦げ付きの存在を明らかにする報道がなされると、不安にかられた預金者が支店に殺到する事態となりました。3日までに、数億ドルの預金が引き出されています。

釜山貯蓄銀行:韓国

2011年2月17日

釜山貯蓄銀行は、韓国の貯蓄銀行の中で資産規模1位を誇っていました。しかし2011年2月17日、金融委員会が同行とその系列の大田貯蓄銀行を不良金融機関に指定、6ヵ月の営業停止処分としたのをきっかけとして、取り付け騒ぎが発生しています。結局釜山貯蓄銀行は、その後自己資本比率が大幅に悪化するなどした結果、2012年8月に破産宣告を受けています。

三和貯蓄銀行:韓国

2011年

三和(サムファ)貯蓄銀行は、ソウル市江南区に本店を置く貯蓄銀行です。不動産建設会社への大量の融資が不良債権化した結果、財務状況が悪化したのを受けて、2011年の1月14日、金融委員会によって破綻金融機関に指定されました。6ヵ月間の営業停止命令が下されると、これをきっかけとして預金者に動揺が広がり、取り付け騒ぎに発展しています。

取り付け騒ぎとは?国内・海外の事例20選

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