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みなし残業(みなし労働時間制)の正しい理解

みなし残業(みなし労働時間制)の正しい理解

監修者

弁護士:村岡つばさ(よつば総合法律事務所千葉事務所)

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 村岡つばさ

よつば総合法律事務所の弁護士の村岡と申します。日常生活や会社を運営する中で気になる法律の問題を分かりやすく解説します。

みなし残業(みなし労働時間制)の正しい理解

求人情報や面接、入社時の説明で「みなし残業」という言葉を見聞きしたことがある人も多いかと思います。ただ、この言葉の正確な意味を理解している人は、あまり多くありません。
実際は、「みなし残業ってなんだろう?」と思いつつも、「毎月決まった金額が貰えるならまあいいか」と考え、よく確認しないまま入社する方も多くいます。また、求人情報や面接では、みなし残業の話が全く出ていなかったのに、給与明細を見て初めて「みなし残業」として処理されていることに気づいた、という話も耳にします。

頑張って残業したのに、全然給料が変わらない・・・そう思って上司に聞いてみたら、「みなし残業だから残業代はつかない」と言われて戸惑ったことはありませんか?

今回は、「みなし残業」について詳しく確かめてみましょう。

みなし残業とは?

みなし残業とは、「毎月決まった時間、残業をしたものとみなし、決まった金額を残業代として支払う」仕組みを言います。「定額残業代」や「固定残業代」などと呼ばれることもあります。また、会社によっては、「営業手当」「外勤手当」など、手当として支払われていることも多くあります。

「みなし」という単語は少しややこしいですが、ここでは、「みなし残業」として設定した残業時間よりも、実際に働いた時間の方が少なかった場合も、設定された残業時間分は残業したものと扱われる、という風に理解していただければ大丈夫です。

みなし残業制度を導入する(会社側の)メリットとしては、毎月の給与計算が楽ということや、総支給額が多く見えるため、求人に興味を持ってもらいやすい、といった点がよく挙げられます。
例えば、毎月20時間分の割増賃金(残業代)として、2万5000円をみなし残業として支払う場合、実際の残業時間が20時間を超えないのであれば、個別に残業時間を集計して、給与計算する必要はありません。また、単に「基本給17万円」と記載するより、「基本給17万円、みなし残業2万5000円」と記載した方が、貰える金額が多いという印象を与えることができます。

実際の残業代を計算してみよう

労働基準法では、1日8時間、1週間で40時間までの法定労働時間を超える場合には、超えた分の労働時間に対して割増率を加算して、残業代を支払うことが定められています。また、深夜(午後10時~午前5時)に働かせた場合にも、割増率を加算して残業代を支払う必要があります。割増率は下記のとおりです。

時間外労働・・・時給単価が25%割増

深夜労働・・・時給単価が25%割増

時間外労働かつ深夜労働の場合・・・時給単価が50%割増

例えば、時給単価が1000円、所定の労働時間が10時から19時(うち1時間が休憩時間)の労働者が、10時から23時まで働いた場合、残業代は以下のように計算されます。

①19時~22時:時給単価1000円×3時間×1.25(1日8時間超)=3750円

②22時~23時:時給単価1000円×1時間×1.5(1日8時間超+深夜労働)=1500円

⇒①+②=5250円が、この労働日にもらえるはずの残業代になります。

週40時間の計算はここでは割愛するとして、この日と同じように、23時まで残業する日が月に10日あった場合には、単純計算で5万2500円が1か月の残業代として貰えることとなります。

ただし、毎月「みなし残業」や「定額残業」として固定の金額が支払われている場合には、基本的には、その支払われている金額は、残業代の支払いとして扱われます。例えば、毎月5万円が「みなし残業」として支払われている場合には、差額である2500円が、追加で支払われるはずの残業代となります。なお、毎月6万円が「みなし残業」として支払われている場合、会社が残業代を7500円多く支払っている、ということになりますが、この差額を会社に返還することにはなりません。

みなし残業の有効性

実は、「みなし残業」が無効とされ、残業代の支払いが別途認められることも珍しくありません。

「みなし残業」が残業代の支払いとして有効とされるためには、一定のルールを満たしている必要があります。ここでは簡単な説明に留めますが、①残業代としての支払いであることが明らかであり、②基本給の部分と残業代とが明確に分かれていること、③公序良俗に反しないこと(非常に長い労働時間を前提として、みなし残業を支払っていないか等)、といった要件をクリアする必要があります。

「残業代コミコミで●円」という説明を良く耳にします。要は、月に支払われる給与の総支給額の中には、残業代もすべて含まれている、という説明です。しっかりと内訳(基本給が●円、みなし残業代が●円(●時間分の割増賃金に相当))が記載されていればよいのですが、内訳を示していないような場合には、多くのケースでみなし残業代の有効性が否定されています。

みなし残業でよくある誤解

よくある誤解としては、「みなし残業=何時間残業しても残業代は支払われない」というものです。冒頭でお話した、「うちはみなし残業だから」という上司の言葉も、このような誤解から来ているものと思われます。

みなし残業は、あくまでも、「毎月決まった時間、残業をしたものとみなし、決まった金額を残業代として支払う」というものです。この「決まった時間」を超える残業をしている場合には、その差分を残業代として支払わなければならないのは当然です。しかし、実際には、みなし残業で予定している残業時間を超えて残業しても、一切残業代が支払われない、というケースも多くあります。

みなし残業は労働者にとって得か?

既にお話した通り、みなし残業は、毎月の給与計算が楽ということや、総支給額が多く見えるため、求人に興味を持ってもらいやすい、といった点で、会社にメリットがあると言われます。
労働者にとっても、毎月決まった金額が給与として支払われることとなるため、生活の安定等の点でメリットはあります(残業が少ない月でも減額されません)。もっとも、「よくある誤解」のところで述べたように、みなし残業で予定された残業時間を超えて残業しても、一切残業代を支払わない会社もあるため、会社の運用によっては、労働者が不利益を被ることもあります。

おわりに

以上、みなし残業に関する諸問題についてお話させていただきました。

みなし残業が労働者にとって得か、損かという話は一概には言えませんが、「実際に残業した時間を集計し、その残業時間に応じて残業代を支払う」というのが原則であることは間違いありません。
みなし残業は、その運用の仕方によっては、労働者が実際に働いた時間に焦点が当たらず、本来貰えるはずの残業代が支払われない危険性があります。また、「みなし残業だから残業時間を一切管理・把握していない」という会社もあり、このような場合、長時間労働により体調を崩してしまう危険性もあります。

みなし残業の問題に限られませんが、入社する前に、自分の労働条件・給与の内訳がどうなっているのかをよく確認し、面接時に不明な点はすべて質問することが重要です。