雑学
東日本・西日本の境界線(境目)はどこ?9選
スポンサーリンク
東日本・西日本の境界線(境目)はどこ?9選
東西に細長く伸びた形状の日本列島は、複数の地域に区切って扱われることが多くなっています。その区分法は場合によってさまざまですが、最もポピュラーなのが、「東日本」「西日本」の2つに分けるやり方です。ただ、この場合問題となるのが、「両者の境界線(境目)はどこか」ということで、実際に明確な境界線の引き方は決まっておらず、いくつかの種類が存在します。
本記事では、「東日本」と「西日本」の境界線について、代表的なものやあまり知られていないものなどをいくつか選んで紹介していきましょう。
糸魚川静岡構造線(糸静線)
地質学的な観点から東日本と西日本を分けることができます。
この場合、両者の境界線となるのは、「糸魚川静岡構造線」と呼ばれるラインです。「糸魚川静岡構造線(糸静線)」とは、新潟県糸魚川市の親不知付近から諏訪湖を通り、静岡市駿河区の安部川付近に達する大断層線のことです。「フォッサマグナ(中央地溝帯)」と混同されることも多くなっていますが、「フォッサマグナ」は線ではなく面であり、「糸静線」はその西辺にあたります。
日本列島の地質や生態系は、この線を境目として東西で異なることから、東西の境界の代表例としてよく名前が挙がるようになっています。実際に、大規模な断層が地上に露呈する糸魚川市は、市の東西で地質がそれぞれ異なっています。
言葉
言葉のあり方によって日本を東西に分ける方法もあります。これは、言語学者の大野晋氏が著作の中で提唱している考え方です。
それによると、日本語のアクセントは「東京式」と「京都式」の2つに分けることができますが、この場合は新潟、長野、岐阜、愛知の4県より東が「東京式(東日本)」で、富山、石川、福井、滋賀、三重の5県より西が「京都式(西日本)」であるとされます。
また、母音と子音の使い方で分けることもできます。本州東部の方言は、子音が強くて長く、母音は短くて弱いとされる一方、本州西部の方言では、子音が短く弱く、母音が長いという特徴があります。この特徴で見ると、日本は長野県西端を境界として、東西に分けられるとしています(岐阜と愛知の所属は微妙とされます)。
電力周波数
地質学と言語のほかにも、よく知られる境界の置き方があります。「電気の周波数」がそれで、大抵の国が50Hzと60Hzのどちらかで統一されているのに対し、日本の周波数は東日本が50Hz、西日本が60Hzと東西で分かれるという、世界でも珍しいケースとなっています。
これは、発電機の輸入の経緯に原因があります。日本で電気が使用されるようになったのは、明治時代のことですが、このとき東京がドイツ製の発電機を輸入したのに対し、大阪ではアメリカの発電機が輸入されました。これらは前者が50Hz、後者が60Hzと異なる周波数だったことから、この2つの地域を中心に、それぞれ別の周波数の電気が作られるようになり、やがて東西に分かれる形となったというわけです。
現在では、糸魚川(新潟)と富士川(静岡)を結ぶ線を境目として、大きく東西に分割されています。
NTT
企業によっても、東日本と西日本の境界線の引き方は異なります。日本電信電話(NTT)は、日本全国で通信事業などを手がけるグループ企業ですが、「東日本電信電話(NTT東日本)」と「西日本電信電話(NTT西日本)」の2つの地域会社を持っており、それぞれの業務区域を定めています。それによると、NTT東日本の営業エリアに新潟、長野、山梨、神奈川が含まれまる一方で、静岡県はNTT西日本に組み込まれています。
静岡県については、NTT東日本の営業エリアに組み込む案もありましたが、東西地域会社間で利用者数や資産規模を均一にそろえたいなどの意図から、NTT西日本の営業エリアに含めたという経緯があります。ただ、熱海市と裾野市の一部区域のみは、例外としてNTT東日本の営業エリアとなっています。
天気予報
天気予報の分野では、日本を複数の区域に分けて、それぞれの予報を行っています。この場合、「東日本」「西日本」のほかに、「北日本」と「沖縄・奄美」の2区域が加わります。
このうち東日本に属するのは、関東甲信地方、北陸地方、東海地方で、西日本に属するのは、近畿地方、中国地方、四国地方、九州北部地方、九州南部です。具体的な東西の境目は、福井、岐阜、三重までが東日本で、それより西は西日本としています。これは、そのほかの区分法に比べて、大分西寄りの境界線になります。
ちなみに「北日本」は北海道と東北のことで、南は山形、宮城、福島までとなり、新潟、群馬、栃木、茨城から南西は東日本となります。一方、西日本の南端は、宮崎県、鹿児島県の本土と、種子島、屋久島になります。
どん兵衛
続いては少々変わった境界線のケースですが、カップ麺の分野でも、日本を東西に分けることがあります。
日清食品の「どん兵衛」は、カップうどん・そばの代表格として知られる商品ですが、その一部に「東日本バージョン」と「西日本バージョン」の2種類が存在することも有名です。これは、関東と関西では味の好みが違うことから来た配慮で、それぞれの粉末スープの味付けが異なります。
具体的には、「東日本バージョン」がかつおだしをベースとした濃いスープで、「西日本バージョン」が、昆布とかつおをベースとした薄いスープとなっています。
ここで東西の境目をなしているのが、「関ケ原」です。新潟、長野、岐阜、三重より東は東日本で、富山、石川、福井、滋賀、奈良、和歌山から西は西日本にあたります。
高校野球
スポーツでも日本を東西に分けることがありますが、競技によって分け方は異なります。全国高校野球選手権大会(夏の高校野球)の場合、かつて初戦の組み合わせに関して、東西の2地域に分けて抽選を行うという方法を取っていました。この方式で引かれた境界線では、富山、岐阜、三重から東が東日本で、石川、福井、滋賀、奈良、和歌山より西が西日本となっています(1988年以後)。
これは、近郷の都道府県のチームが初戦で当たることがないようにとの配慮から生まれた方式でしたが、実際には「福井対富山」など北陸同士の試合が組まれるケースがあり、不公平ということで2006年を最後に廃止となりました。ちなみに1978年から1987年にかけては、石川県は東日本に分類されていました。
剣道
続いてもスポーツの分野における区分ですが、全日本剣道連盟が主催する「全日本東西対抗剣道大会」では、文字通り日本を東西に2分して、強豪剣士同士が対抗試合を行うという形式を採っています。このケースでは、福井、岐阜、三重より東が「東軍(東日本)」で、京都、滋賀、奈良、和歌山の関西4府県以西が「西軍(西日本)」という具合に境界線が引かれます。ちなみに、2019年までの通算成績(男子の部)は、東軍26勝、西軍38勝、1引き分けとなっています。
この分け方はまた、ラグビーにおいても行われています。こちらの場合、「もう1つの花園」と言われる「U18合同チーム東西対抗戦」において、福井、岐阜、三重以東が東日本とされます。これらは、天気予報における東西の区分と重なります。
岐阜県関市
昨日行った「関鍛治伝承館」で撮影してきた。
関市は何気に色々凄いな(゚∀゚)
…で、関市は関西?関東? pic.twitter.com/vt2zYZN0gK
— Eyewear shop ami 岐阜県関市の眼鏡屋@スタッフ音久(□ω□) (@neku07) May 12, 2017
日本の東西の境界線、最後に紹介するのは、岐阜県関(せき)市のケースです。実は、関市は1992年(平成4年)4月15日に、「関より東を『関東』、関より西を『関西』という」と、関市が関東(東日本)・関西(西日本)の分岐点である旨の宣言を行っています。これは、関市が古くから東西の交通の要衝であったことや、日本列島のほぼ真ん中に位置することなどを踏まえて出されたものになります。
この宣言は、モニュメントとして「関鍛冶伝承館」の玄関前に設置されているのですが、さらにそのそばには、「W・Eセンターポールせき」という東西の分岐点を象徴するポールも立てられています。ちなみにこの宣言は、あくまで関市独自のものであり、一般的にはあまり浸透していません。「関東」や「関西」という呼び方も、「関」の地名を踏まえたものというわけではないので、その点は要注意です。
この記事が気に入ったら いいね!しよう