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最終更新日:2021-03-26

新型コロナの影響で海外出向者を一時帰国させた場合の税金問題

  • 2021/02/18
  • 2021/03/26
新型コロナの影響で海外出向者を一時帰国させた場合の税金問題

新型コロナの影響で海外出向者が一時帰国した場合の源泉税

新型コロナウィルス感染症の影響で、多くの企業が海外出向社員を一時帰国させている。ただ、海外出向者としての立場が継続している場合、一時帰国中であっても海外現地法人から給与の支給を受けていることが多い。この場合、日本での申告は必要となるのか・・・。

社員に支払う留守宅手当は源泉徴収が必要?

新型コロナウィルスの世界的拡大に伴い、海外子会社に出向させていた社員を日本に一時帰国させ、リモートワークにより海外子会社の業務に従事させるケースが増えている。この場合、出向先である海外子会社から社員に給与を支払っていることが多く、日本の本社からは、留守宅手当を支払うことが少なからずある。

こうした給与支払いをしている場合、社員は日本で税務申告をする必要があるのか、また、社員に支払う留守宅手当は源泉徴収が必要となるのか。
 所得税法での居住者は、国内に住所を有し、または1年以上居所を有する個人としている。一方非居住者は、居住者以外の個人を指している。

そのため、国外に1年以上継続して居住すると、非居住者と推定。1年以上の出向契約等により海外へ出向した者は、出国の日の翌日から非居住者となり、一時帰国したとしても、出向契約が継続している限り一時帰国後も引き続き非居住者に該当すると考えられる。

 非居住者に該当したには、国内源泉所得が課税対象となる。

また、非居住者に対して国内において国内源泉所得の支払をする者は、原則としてその支払の際に20.42%の源泉徴収をすることが必要だ。

リモートワークでも所得税が課せられる

 一方で、海外子会社が一時帰国している社員に支払う給与については、リモートワークにより海外子会社に対して労務を提供していたとしても、勤務地が国内であるため、国内源泉所得として所得税の課税対象となる。

給与については、海外子会社が支払うため、源泉徴収が行われることはない。そのため、一時帰国した社員本人が、日本において確定申告する必要がある。この場合の確定申告は、税率は20.42%の申告分離課税となる。

ただし、海外の居住者が日本で短期間の勤務を行う場合には、原則として日本での所得税が免除される。これを「短期滞在者免税」と言う。

 短期滞在者免税の適用を受けるには、一般的には以下の3つの要件を満たす必要あり。

・滞在期間が課税年度又は継続する12か月を通じて合計183日を超えない

・報酬を支払う雇用者等は、勤務が行われた締約国の居住者でない。

・給与等の報酬が、役務提供地にある雇用者の支店その他の恒久的施設によって負担されないこと。

(これらの要件は、租税条約によって異なるため、個々の条約を確認する必要がある)

コロナ禍での課税。国内滞在日数がポイント

コロナ禍においては、一時帰国による国内での滞在日数が183日以内であれば、日本における所得税は免除される。もし、一時帰国が長期化し、日本での滞在日数が183日を超えた場合には、①の要件を満たさないことになるので短期滞在者免税が使えない。よって、所得税法通り日本で確定申告が必要になる。このとき日本での滞在日数が183日を超えているかどうかの確認が重要となる。

なお、一時帰国している期間の留守宅手当を、日本の親会社が支払っているのであれば、短期滞在者免税の要件を満たさないことになり、所得税法の規定通り、非居住者に対す給与の支払いとして、20.42%で源泉徴収しなければならない。
 なお、この一時帰国している期間の留守宅手当は、源泉徴収のみで課税関係が終了する源泉分離課税となる

新型コロナの影響で海外出向者を一時帰国させた場合の税金問題

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