業界のトレンドをつかむ「会計 ビズライン」

会計事務所博覧会

注目ワード

最終更新日:2021-03-31

「デジタル終活」は顧問関係の強化、相続業務にもメリット

  • 2021/03/26
  • 2021/03/31
「デジタル終活」は顧問関係の強化、相続業務にもメリット

ネット上の金融財産やSNSの個人情報など、「デジタル機器やインターネット上に残した重要情報を家族に残す準備はできていますか?」。「終活」がブームになるなか、こうした「デジタル遺品」とどう向き合うべきだろうか。

「デジタル遺品」の死後の取り扱いを考える協会

日本デジタル終活協会(東京・千代田区、代表理事=伊勢田篤史弁護士・公認会計士、写真)は、顧問先への情報提供および相続対策の一環として、税理士らにこの分野に関心を持って欲しいと呼び掛けている。同協会は、「相続で苦しめられる人をゼロに」という活動理念のもとに、終活弁護士の伊勢田氏によって2016年に設立された。「デジタル終活」とは、こうした「デジタル遺品」の死後の取り扱いについて考える活動であり、同協会は、セミナーやメディア取材を通じて、デジタル終活の必要性やエンディングノート等を利用した対策方法等を発信している。

そもそも、この「デジタル遺品」に関しては、業界ガイドラインや法整備の動きもなく、あくまで「個人」の問題と捉えられているのが現状だ。経営者が突然倒れた時のために、伝えるべき情報は家族・親族に残し、その一方で自分のプライバシーに関わる情報については処理方法を決めておく必要があるが、適切な対策が取られているケースは皆無といえる。一般的な相続と同様に、遺言書により遺言執行者を指名し、「デジタル遺品」の処分を依頼することもできるが、プライバシー等の問題もあり、デジタル遺品の処分を家族に頼みにくいといえる。「デジタル遺品の処分に関しては、第三者的な立場である税理士が最も適任」(伊勢田弁護士)というもの。なお、ビジネス等に利用しているインターネット・サービスについては、死後にアカウントを引き継げず、業務の承継が出来なくなる可能性もあり、注意が必要だ。

税理士から顧問先への提案で生まれるメリットとは

税理士が顧問先にこの「デジタル終活サービス」を提供する際のメリットとしては、経営者とのコミュニケーションが深まり、顧問先との関係維持・強化につながる点が挙げられる。パソコンやスマホのログインIDやパスワードを共有するだけで、とくに業務の負担増にもならず、通常の顧問契約の範囲内で付加できる。また、必然的に依頼者の「死」について触れることにもなるだけに、その流れで相続対策等の話題に振れば、「デジタル遺品」をテーマに将来の相続関連業の受注にも繋げられる可能性もあるという。このデジタル終活サービスと相続の関連については、「デジタル世代の引継ぎノート」というエンディングノートが活用でき、「〇〇先生に処理をお願いしたいなどと記載して自分の意思を残してもらうことで事後的なトラブルを避けることもできる」(同氏)という。

今後、デジタル世代の高齢化により「デジタル遺品」を取り巻く問題はクローズアップされていくと見られる。「普段から顧客と信頼関係を構築している税理士が最も身近な存在であり、先見の明をもってデジタル終活問題に取り組む税理士が一人でも増えて欲しい」としている。

「デジタル終活」は顧問関係の強化、相続業務にもメリット

「いいね!」をしよう