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ビジネス知識

上場とは?上場に関する基礎知識

上場とは?上場に関する基礎知識

監修者

よつば総合法律事務所千葉事務所 弁護士 辻佐和子

よつば総合法律事務所千葉事務所

弁護士 辻佐和子

よつば総合法律事務所の弁護士の辻佐和子と申します。日常生活の気になるあれこれを法律の観点からわかりやすく解説します。

上場とは?上場に関する基礎知識

起業するなら知っておきたい!上場に関する基礎知識

「一部上場企業」と言えば、ひと昔前までは大企業の代名詞のような言葉でした。しかし近年では、上場していても経営破綻で上場廃止に追い込まれたり、最悪のケースでは倒産したりといった事例が目立つようになってきました。
日々の経済関連ニュースなどで頻繁に登場するこの「上場」という言葉ですが、何となく知っている言葉でも、詳しい内容となると意外にもあやふやなものです。今回は、この「上場」に関する基本的な知識をまとめてご紹介したいと思います。

上場とは?

上場とは、会社が発行した株式を証券取引所で自由に売買できるようにすることです。

企業の資金調達の方法と証券取引所

企業が事業を行う際の資金の調達方法には、大きく分けて2つあります。
一つは、銀行などの金融機関から「借金」をすることです。この場合、当然ですが利息を含めて返済してくことが必要となります。
もう一つの方法が、「株式」を発行して買ってもらうこと。株式を発行して調達した資金には、借金のように返済はありません。この株式の売買する場所を「株式市場」と呼び、企業と投資家が株の取引をしたり、投資家同士が発行済の株式を売買したりします。
そして、株式市場において取引を仕切るのが「証券取引所」です。日本には札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5つの証券取引所があります。
上述のとおり、会社が発行した株式をこれらの証券取引所で自由に売買できるようにすることを「上場」と言い、企業の株式を新規に上場することをIPO(Initial Public Offering)と呼びます。

上場には基準がある

どのような企業でも無条件に上場できるわけではありません。上場するためには、株式単位数や時価総額、株主数、事業継続年数、利益の額といった項目について定められた基準をクリアしなければなりません。証券取引所の市場は、この審査基準の厳しさによって「一部」と「二部」に分けられています。また、新興企業やベンチャー企業のために審査基準がより緩く設定された「JASDAQ」や「マザーズ」といった市場も用意されています。

上場と株式公開ってどう違う?

ところで、「株式公開」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。株式公開とは、自社が発行している株式を自由に売買できるようにすることを言います。前述の通り、公開した株を証券取引所で売買できるようにすることが「上場」ですので、「上場」は株式公開の在り方の一つと言うことになります。ただし、これはかつての話です。
というのも、以前は証券取引所を介さずに、証券会社や金融機関の店頭で取引を行う「店頭公開」と言う株式の売買手法がありました。しかし、現在では店頭登録市場は証券取引所が運営するJASDAQとなったため、「株式公開」と「上場」は同義になったのです。

上場するメリットは?

2023年4月4日時点で、日本には3877社もの上場企業が存在します。いくら資金調達のためとはいえ、上場するための準備期間は長期にわたり、費用もかかります。また、上場後も維持費や情報公開の手間がかかります。株主がいるということになると、従来のようにオーナーの裁量で自由に経営することもできませんし、買収されるリスクも発生します。それではなぜ、敢えて企業は上場するのでしょうか。

社会的信用が高まる

上場のための審査をクリアしたことは、安定性や将来性においてお墨付きを得たということです。特に審査基準が厳しい一部に上場しているとなれば、世間的には「大企業」であると思われるのです。当然、知名度も格段に上がるでしょう。

資金調達がしやすい

社会的な信用が高まるということは、当然、銀行などの金融機関からの信用も高まるということになります。単に株式によって資金を調達できるというだけでなく、金融機関からの融資も引き出しやすくなります。

優秀な人材を集めやすい

同じように、社会的な信用や知名度が高まれば、能力のある人材も確保しやすくなります。

上場廃止とは?

上場廃止とは、その名の通り、証券取引所が投資家を保護するために、上場継続不適と判断した企業の取引を終了することです。株主数や売上高、時価総額といった審査項目について上場維持基準を下回った場合や、破産・再生更生手続を開始した場合、裏口上場や報告書類の提出遅延や虚偽といった契約違反があった場合などに上場廃止となります。
実際の事例を見てみると、有名なところでは、有価証券報告書への虚偽記載で上場廃止となった西武鉄道やライブドア、架空増資を行った駿河屋や丸石ホールディングスがあります。

一方、証券取引所による判断の他に、事業戦略を実行するために自主的に上場廃止した例もあります。ポッカコーポレーションやタリーズコーヒージャパン、婦人服メーカーのワールドなどが該当します(ワールドはその後に再上場しました。)。
また、反社会的勢力の関与が表沙汰になって上場廃止となった事例もあります。

日本の証券取引所

最後に、日本の証券取引所をご紹介しましょう。前述の通り日本には証券取引所が札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5が所あります。

東京証券取引所(東証)

日本で最も大きな証券取引所で、す。「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3区分があります。ニューヨーク証券取引所、ロンドン証券取引所とともに「世界三大証券取引所」に名を連ねています。

大阪証券取引所(大証)

以前は任天堂や日本電産など、大証をメインに取引されている大企業もありましたが、2013年に東京証券取引所と経営統合して、「日本取引所グループ」となりました。2014年には名称も「大阪取引所」に変更されました。また、株式の現物取引は全て東京証券取引所に移行し、一方で東証のデリバティブ(金融派生商品)は大阪取引所で行われることとなりました。

名古屋証券取引所(名証)

大証が株式取引を行わなくなったため、東証についで売買高国内2位の証券取引所となっています。単独上場は59社(2023年4月5日現在)と極少です。プレミア市場、メイン市場、ネクスト市場の3つの市場があります。

福岡証券取引所(福証)

九州の地元企業が中心となって上場している証券取引所。単独上場は24社です(2023年4月5日現在)。本則市場の他に、新興企業向けの株式市場であるQ-Boardがあります。

札幌証券取引所(札証)

北海道の地元企業が中心となって上場している証券取引所。単独上場は17社です(2023年4月5日現在)。新興企業向け株式市場であるアンビシャスもあります。

上場とは?上場に関する基礎知識

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